自社の労働環境を改善したいものの、なかなか残業時間が削減できない。そんな悩みを抱いている管理職や経営層の方も多いのではないでしょうか。
残業を減らすには原因を特定し、自社で着手できる箇所から少しずつ改善してくことが重要です。
そこで今回は、製造業において残業が発生してしまう原因と、その具体的な施策をご紹介します。
近年は社会的にワークライフバランスが重視される傾向にあるため、業務改善を行うことは社外からの評価の向上にもつながります。
残業を減らすことで社内の生産性向上、社外からの信頼向上を実現しましょう。
製造業で残業を減らすことには、以下のようなメリットがあります。
製造業で残業を減らすメリットとしてまず挙げられるのは、従業員の離職率の低下です。
製造業においては、工場での現場仕事などでは特に長時間労働が課題となっています。
長時間の労働が原因となって心身疲労が蓄積し、転職や離職を考える従業員は少なくありません。
離職率が上昇すると採用活動の際に悪い印象を与えてしまうこともあるため、離職率の低下を図れることは残業を減らす大きなメリットといえます。
残業代として発生する人件費が削減できることも、製造業で残業を減らすメリットです。
残業が発生すれば、当然ながら従業員に支払う人件費も多くなり、自社のキャッシュフローに悪影響を与えてしまいます。
また、残業による労働時間の延長が常態化すると、いつまでも仕事を行える環境ができてしまい、かえって従業員の生産性が落ちてしまう危険もあります。
残業を減らして既定の労働時間を遵守することで、人件費の削減と社員の生産性向上、双方のメリットを享受できるでしょう。
製造業で残業を減らす取り組みは、自社の社会的な信用にもつながります。
従業員の労働環境の改善は、業界だけではなく、日本全体の社会問題としても注目されているトピックです。
残業を減らすための施策やデジタルツールの導入などを行えば、取引先からの評価も上がり、世間への認知が上昇する可能性も高まります。
従業員のことを大切に考える企業という認識が高まれば、ステークホルダーからの信用や求職者からの信用も高まり、自社の活動全般に良い影響を与えることでしょう。
従業員のモチベーションが向上することも、製造業で残業を減らすメリットです。
従業員にとって、就業時間を終えた後のプライベートの時間はとても大切な時間です。
残業によってその楽しみが奪われることがあっては、企業への信頼も低下し、仕事に対しての熱意も低下してしまうでしょう。
限られた時間で効率的に仕事を行い、既定の就業時間外ではプライベートの時間を過ごせるメリハリのある環境をつくることで、従業員のモチベーションも上昇して仕事の生産性も向上することでしょう。
製造業における残業の原因にはどんなものがあるのでしょうか。
ここでは、代表的な原因をご紹介します。
製造業における残業の代表的な原因として挙げられるのは、業務量に対して人手が不足しているという問題です。
製造業全体で人手不足は珍しくない昨今ですが、工場をはじめとした現場仕事の場合、人員の不足は従業員の心身疲労も増大させます。
一人当たりが担当できる仕事量に限界があることはもちろん、各従業員の生産性の低下にもつながってしまいます。
人手不足は製造業で残業が発生してしまう原因の中でも、特に大きな問題といえるでしょう。
業務の属人化も、製造業で残業が増加する原因となります。
属人化とは業務を担当できる人材が限られてしまう状況を指し、場合によっては該当の業務を担当できる人材が社内で一人だけ、という状態になってしまうこともあるでしょう。
業務が属人化してしまうとその担当者の負担が増大し、他の従業員に仕事を分担できない状況に陥ってしまいます。
結果として担当者の仕事量が既定の就業時間では収まらなくなってしまい、残業の発生原因となってしまうのです。
勤務時間による評価制度も、製造業における残業を増長する原因となってしまいます。
製造業では現場仕事も多いため、労働時間が長いほど企業への貢献度が高いという評価をされる場合も少なくありません。
しかし、このような評価制度をとっていると、従業員から進んで残業をしたいと申し出ることも増えてしまいます。
労働時間を延ばすことが目的になってしまうと生産性も低下し、業務効率も下がってしまうため、勤務時間による評価制度は早急に見なおす必要があります。
ここからは、製造業で残業を減らす具体的な方法をご紹介します。
従業員を雇って人員の補充を行うことは、製造業で残業を減らす際の有効な方法です。
担当者を増やして一人当たりの業務量を減らし、既定の労働時間で終了できる業務量にすることで、残業時間の削減が期待できます。
業務量の軽減や残業時間の減少によって従業員の仕事に対するモチベーションも増加するため、生産性の向上にもつながります。
また、人員の補充だけでなく、新しい機器を導入して人力で行っていた作業を自動化する、アウトソーシングによる外注で業務量の削減を図るといった施策も残業を減らすための有効な手段となるでしょう。
製造業で残業を減らすためには、従業員の多能工化を行うことも有効です。
多能工化とは各従業員が幅広い業務知識を身につけ、さまざまな業務を担当できるようにする状況のことを指します。
その時々の業務量によって担当者の数を柔軟に変更できるようになるため、属人化による残業の解消を見込めるでしょう。
ただし、多能工化を実現するためには従業員が学習できる環境を整えることが大切になります。
具体的には、実務を通じたOJTを従業員間で積極的に行うことで、既存の従業員が新しい仕事を教わったり教えたりすることを通じて、多能工化することが可能です。
同時に、お互いの業務の知見を深めあうことができ、業務の質や生産性の向上も期待できます。
新しい業務の学習に際しては、管理職にある人が、従業員間への仕事の割り振りを通じて積極的にOJTを回していく方法などが有効で、すぐにでも実践できるでしょう。
評価制度の見なおしを行うことも、製造業における残業の削減につながります。
先述したように、労働時間の長さが企業への貢献度と判断する評価基準では、従業員が進んで残業を行ってしまいます。
そこで、全社的に労働環境の改善の方針を打ち出し、既定の就業時間で業務を終わらせることを評価する評価制度を採用するとよいでしょう。
ただし、評価制度を変更しても、既定の就業時間ではとても終えられない業務量があっては本末転倒なので、従業員の声に耳を傾けて、労働環境の改善に取り組むことも忘れないようにしましょう。
フレックスタイム制を取り入れることも、製造業で残業を減らす方法として有効です。
製造業においては工場の点検や受発注の確認など、決まった時間に行わなければならないルーティン業務も多数存在します。
そのほかの業務を実行できる時間が既定の就業時間を過ぎてしまう場合には、必然的に残業が発生してしまうでしょう。
フレックスタイム制を取り入れて、各従業員の就業時間に幅を持たせることができれば、そのような残業を減らす有効な手段になります。
担当業務に合わせて出勤時間を遅らせる、といった施策をとれば、担当者の就業時間を延ばすことなく業務を遂行することも可能になるでしょう。
今回は、製造業において残業が発生してしまう原因とその具体的な施策をご紹介しました。
多くの業務内容を包括し、現場仕事も多い製造業は残業が発生しやすい環境にあるといえます。
人手不足が叫ばれる日本の労働環境の中でも、製造業は特に人材が不足している業界といわれています。
この状況をカバーするためには、従業員を採用してマンパワーを確保するだけでなく、社内制度や工場設備等も見なおす必要があるでしょう。
今回紹介した施策を中心に、自社で着手できるところから改善を行って残業時間を減らし、自社の生産性や社会的な信用を向上させましょう。