自社商品の在庫管理や事業戦略に悩んでいる、そんなときに利用したいのがABC分析です。
ABC分析は自社で取り扱っている商品やサービスが自社にとってどれほど重要なものであるかを一目で確認できる分析方法で、分析結果は商品の在庫管理などに利用できます。
そこで今回は、ABC分析のやり方やメリット、注意点などを解説します。
具体的なデータを使ったABC分析を利用して、客観的な視点を持って自社の事業戦略の見直しを行いましょう。
ABC分析とは売上高や利益率といった指標を設定して商品の重要度を評価し、3つのグループに分類することで各商品の管理や経営判断に反映するための分析方法です。
「重点分析」とも呼ばれ、商品やサービスの重要度を数字やグラフを使って視覚的に確認できることが魅力です。
前述の要素以外にも、在庫数、商品価格、顧客層といったさまざまな要素を参照して分析を行えるため、広範なデータを参照できる汎用性の高い分析方法となっています。
商品管理システム等を使ったデータ収集とも相性が良いため、分析を行う際には積極的に利用するとよいでしょう。
ABC分析は「パレートの法則」に基づいた分析方法とされているため、「パレート分析」と呼ばれることもあります。
パレートの法則とは、「8:2の法則」とも呼ばれる法則で、物事の8割は限られた2割の要素によって構成されているとする概念です。
ABC分析にこの法則を当てはめると、売り上げの上位2割を占めるAグループの商品が、自社の売り上げの8割を担っているという考え方になります。
パレートの法則自体は世の中のさまざまな事柄を対象としたものですが、このようにビジネスの世界でも利用される概念となっています。
ABC分析は、以下のような手法で行います。
ここでは、分析する要素を売り上げ高に設定して解説していきます。
まずは分析を行いたい商品に関するデータを収集しましょう。
売り上げや利益率といった商品の重要度を特定しやすい要素を収集するとよいでしょう。
前述の通り、販売管理システムや在庫管理システムを利用している場合には、それらに付属しているデータ収集機能を利用するのが便利です。
これらのデータと総売り上げ金額などを照らし合わせて、商品のグループ分けを行っていきます。
データの収集を行ったら、次に総売り上げ金額に対して各商品がどれほどの売り上げを占めているかを表す商品の構成比を求めます。
求める際には、以下のような手順で行いましょう。
これらをまとめると、以下の図のようになります。
こちらでは、累計構成比70%までをAグループ、71%~90%をBグループ、91%~100%をCグループとしています。
売り上げ | 構成比 | 累計構成比 | グループ | |
商品A | 400,000円 | 40% | 40% | A |
商品B | 200,000円 | 20% | 60% | A |
商品C | 100,000円 | 10% | 70% | A |
商品D | 80,000円 | 8% | 78% | B |
商品E | 70,000円 | 7% | 85% | B |
商品F | 60,000円 | 6% | 91% | C |
商品G | 50,000円 | 5% | 96% | C |
商品H | 40,000円 | 4% | 100% | C |
総売り上げ金額 | 1,000,000円 | 100% |
各商品の構成比を算出して商品の重要度を確認したら、一定の基準を設けて3つのグループに分類します。
重要度の高い順にA>B>Cグループに分類し、下の例のように各グループごとに発注や商品管理の方針を決定しましょう。
ABC分析を使うメリットとしては、以下のようなものが挙げられます。
ABC分析のメリットとしてまず挙げられるのは、在庫管理を行う際の参考になるという点です。
重点的に発注を行うべき商品を特定することで、自社の売り上げの根幹をなす商品の欠品が発生することを防げます。
また、在庫管理の際には発注コストの削減に加えて商品の保管スペースも勘案する必要があるため、厳選して商品を発注する必要があります。
ABC分析によって重要度の高いと判断された商品の発注数を増やし、重要度の低い商品の発注を少なくすることで、余計なコストを抑えつつ効率的に在庫の管理ができるでしょう。
商品展開やプロモーションの際の参考になる点も、ABC分析のメリットです。
小売店などの実店舗ではAグループの商品の展開場所を最も目立つ場所にする、販売エリアを多く用意する、特設エリアを設置するといった施策を行うことが考えられます。
また、広告をはじめとしたプロモーションを行う際には、どの商品をどんな方法でどれくらいのコストを割くかといった判断にもABC分析の結果を利用できます。
事業方針や経営戦略決定の際の参考になる点も、ABC分析のメリットです。
売り上げに貢献している商品や現状あまり売れていない商品がわかるため、今後自社がどの事業に力を入れるべきかの判断基準になります。
売れ筋商品の特徴や共通点の発見にもつながるため、商品開発やマーケティング方法の参考にもなるでしょう。
また、時期ごとにデータを収集すれば、その期間に行った施策やキャンペーン効果の検証にも利用できます。
例えば、新しい販売戦略を行った月に特定の商品がBグループ相当からAグループ相当の数字まで売り上げが伸びた場合、その販売戦略が一定の効果を示したことが推測できます。
ABC分析を行う際には、以下のような点に注意しましょう。
ABC分析を行う際には、商品の売り上げが例外的に伸びる期間に注意が必要です。
季節の商品や流行の商品など一時的に売り上げが大きく向上する商品は、ABC分析を行う際に事情を考慮しておきましょう。
例えば、これからの季節に伸びが期待できる商品はCグループであっても発注を強化する、シーズンが終われば売り上げの低下が予想される商品はAグループであっても発注を控える、といった対応を行う必要があります。
これらの商品は定番商品と比較して短期間で売り上げが変動するため、売り上げが安定した定番商品等とは別の基準での判断が必要になります。
新商品やこれから販売を強化していく商品は、売り上げの伸びを随時チェックするようにしましょう。
ABC分析において収集するデータはこれまでに蓄積した過去のデータなので、サンプルが少なく評価が定まりきらない新商品のデータは信頼度に欠けます。
このような商品に関しても季節の商品などと同様に、売り上げの変動に応じた柔軟な対応が必要になるでしょう。
今回はABC分析のやり方やメリット、注意点などを解説しました。
ABC分析は商品管理に役立つことはもちろん、自社事業の強みや優先すべき事項の理解にもつながる優れた分析手法です。
実際のデータを利用した分析によって、より正確かつ効率的な事業戦略の実現につながることでしょう。ABC分析で自社事業を客観的に分析して、自社のさらなる成長戦略につなげましょう。