全ての業務を自社で完結させる内製化の判断は、経営者にとって非常に悩ましい問題です。
内製化と外注は一長一短であり、双方の特徴をしっかり把握したうえで意思決定を行うことが必要になるでしょう。
そこで今回は、内製化の特徴や内製化する際のポイントを製造業の視点から解説します。
外注化の特徴にも触れているので、双方の特徴を押さえたうえで自社業務に適した方法を選択し、自社の成長につなげましょう。
内製化とは、外部に委託していた業務内容を社内で完結させることを指します。
ビジネスの現場では自社の力だけでは十分に遂行できない業務が頻繁に発生し、製造業の場合には商品を顧客に提供するまでに多くの業務フローを経る必要があるため、外注を利用すべき業務も多くなることでしょう。
しかし、外注化にもデメリットが存在するため、それらの解決に際しては内製化が有効な手段となります。
両者の特徴をしっかり押さえた上で、各業務に適切な手段を選択することが大切です。
まず、製造業の現場における内製化の利点をご紹介します。
業務を行うにあたって、ノウハウが獲得できることは内製化の魅力です。
外注では業務において発生した発見や問題点が自社に共有されないため、ノウハウや改善策が自社に蓄積しません。
一方、内製化すれば業務における発見や問題点を社内で記録・共有し、自社全体の業務改善や問題解決の手段として利用できるようになります。
このようなノウハウは自社の財産となるため、主力事業に関してはノウハウを獲得できる内製化の恩恵は特に大きいといえるでしょう。
社内の意思を反映しやすくなることも、内製化を行う利点です。
外注する場合は社外に向けて業務の変更や方針を共有する必要があるため、社内での情報共有よりも伝達速度が遅くなり、手間もかかりやすくなります。
さらに、委託先が増えるほど意思の伝達や業務指示は煩雑になり、内容によっては委託先では対応できないこともあるでしょう。
内製化を行って業務が社内で完結する体制を作ればこれらの問題を防げるため、社内の意思決定をよりスムーズに業務に反映できます。
商品や業務の品質管理を行いやすいことも、内製化の魅力です。
外注する場合には業務フローや担当者の教育、商品の品質チェックなどを委託先に任せることになるため、品質管理が難しくなります。
一方、内製化を行うにあたっては上記の事柄を全て自社の管理下で行う必要があります。
そのため、問題が発生した際にも業務改善や変更をしやすく、商品や業務の品質管理を行いやすくなります。
内製化を検討する際には、以下の欠点に特に注意しましょう。
費用が多くかかってしまうことは、内製化の代表的な欠点です。
内製化においては業務遂行のための準備を自社で全て行う必要があるため、人件費や施設の拡充に相応の費用がかかります。
外注に際しても費用は発生するものの、内製化のほうが費用が高くなる場合がほとんどです。
内製化するにあたっては、発生する費用の計算をしっかり行いましょう。
従業員の負担増加につながることも、内製化の欠点です。
これまで外部に委託していた業務を自社で行う必要が出てくるため、当然ながらその業務を遂行する人材が必要になります。
従業員への研修や教育に加え、業務内容の変更や配置転換によって従業員の環境は大きく変化します。
従業員の労働環境など、数字には表れない点も配慮したうえで内製化に踏み切りましょう。
適切に業務を進行するための環境整備に時間がかかることも、内製化の欠点といえます。
外部の専門家に委託していた業務を自社で完結させることは容易ではないため、内製化を開始した当初はコスト面や効率面で問題が発生することも少なくないでしょう。
内製化を開始した後も、円滑に業務が進行するよう長期的に改善を続けることが大切です。
内製化に踏み切る際には長期的な視点を持って最終決定を行いましょう。
次に、外注の利点をご紹介します。
内製化と外注の特徴を比較したうえで、適切な方法を選択しましょう。
コストの削減につながることは、外注を行う大きな利点です。
外注化に際しても費用が発生しますが、自社で業務を行う際に必要な人件費や施設の維持費を削減できるため、内製化する場合よりもコストを削減できることがほとんどです。
また、外注化した業務には自社の人員を割く必要がなくなるため、マンパワーの確保にもつながります。
外注を選択する際には、どれほどのコスト削減効果が見込めるかしっかり検討したうえで委託を行いましょう。
専門知識を手軽に利用できることも、外注を行う利点です。
外注化に際しては、専門知識やノウハウを有した企業や人材を自由に選択して業務を委託できます。
法務や製造技術といった専門性の高い分野は一朝一夕で人材を育成することはできません。
そのため、外注によって教育や研修の時間をかけずに専門家の知識を借りられることは、外注化の大きなメリットといえるでしょう。
業務の外注には以下のような欠点もあります。
これらを解消したい場合には、内製化を検討するとよいでしょう。
自社に業務ノウハウが蓄積しないことは外注の代表的な問題点です。
業務を委託先に一任する形になるため、業務関連のノウハウの蓄積は難しくなります。
ノウハウの拡充やそれを活かした業務改善は企業の成長に欠かせない要素なので、その恩恵を得られなくなる点を理解したうえで外注を利用しましょう。
外注に際しては、自社のノウハウを共有する必要がある点にも注意しましょう。
自社独自の製法や業務プロセスがある場合には、それを委託先に共有したうえで業務を担当してもらうケースがあります。
競合他社との差別化の要因となっている強みやノウハウも外部に流出してしまう可能性がある点を考慮しておきましょう。
ここからは、内製化を試みる際に意識すべきポイントをご紹介します。
内製化は、実行後の人材の確保を念頭に置いたうえで行いましょう。
内製化を行う際には、配置転換を通じて多くの従業員がこれまでとは異なる業務を担当することになります。
その際、研修やマニュアルなどがしっかり整備されていないと、従業員は心身ともに負担を感じることになるため、学びの場をしっかり設けることが大切です。
また、場合によっては周辺知識を持った人材の採用も検討する必要があるでしょう。
内製化すべき業務を見定めることも大切なポイントです。
ここまで解説したとおり内製化には相応の手間やコストが発生するため、利点が大きい業務に限定して内製化を進める必要があります。
そのため、自社事業の中核をなす業務については優先的に内製化をすることをおすすめします。
実行後の自社への影響をしっかりシミュレーションしたうえで、着手すべき業務を厳選して内製化を行いましょう。
今回は、内製化の特徴や内製化する際のポイントを製造業の視点から解説しました。
多彩な業務を求められる製造業では、外注すべき業務は多岐にわたります。
どの業務を内製化するかは経営に大きな影響を与えるため、必要性を見極めたうえで慎重に実行することが重要になります。
それぞれの長所・短所をしっかり把握して、自社の成長につながる内製化を実行しましょう。