近年、顧客が求める商品の幅は広がり、製造業においても用途に適した独自製品の製造を求める声も増えてきています。
そんな顧客のニーズに応え、オリジナル商品を製造する際に活躍するのがオンデマンド製造です。
今回はオンデマンド製造の概要や、そのメリット・デメリットをご紹介します。
従来の生産方式との違いを明確にして、オンデマンド製造の導入を検討しましょう。
オンデマンド製造とは顧客のニーズに沿った仕様の商品を、必要な数だけ生産する製造方式です。
類似する言葉としては、必要な部数だけ印刷を行う「オンデマンド印刷」が広く知られているといえるでしょう。
また、オンデマンド製造とは逆に事前に大量製造を行って在庫を用意する製造形態は見込み生産と呼ばれます。
本記事では、オンデマンド製造・見込み生産のメリット・デメリットをそれぞれ解説していきます。
オンデマンド製造には、以下のようなメリットがあります。
顧客のニーズに合わせた商品を柔軟に提供できる点が、オンデマンド製造の最大の魅力です。
同一仕様の商品を大量製造する見込み生産では、それぞれの顧客のニーズに合わせた商品を製造することは難しいでしょう。
その点オンデマンド製造であればそれぞれの顧客の要望をヒアリングしたうえで、ニーズに沿った商品の提供が可能になります。
前述の通り、近年は人々のニーズが多様化する時代に差し掛かっているため、オンデマンド製造の柔軟性は顧客満足や競合他社との差別化につながります。
商品一つひとつの品質にこだわりやすいのも、オンデマンド製造の魅力です。
オンデマンド製造においては顧客からの受注を受けてから製造を開始するため、入念なすり合わせや余裕を持った納期の設定が可能です。
不特定多数の顧客を想定する見込み生産と比較して、顧客が満足できる高品質な商品を提供しやすくなります。
製造後の在庫管理がしやすいことも、オンデマンド製造のメリットです。
見込み生産の場合には商品が売れるか否か市場調査を行う必要がありますが、オンデマンド製造の場合には顧客から要望があって製造しているため、ニーズがあることが約束されています。
そのため、商品が大量に売れ残ってしまうというような、在庫を大量に抱えるようなリスクはほとんどありません。
商品が売れる時期や販売個数の見込みも立てやすいため、キャッシュフローが滞るリスクも少なくなります。
ここまではメリットをご紹介しましたが、オンデマンド製造には以下のようなデメリットも存在します。
見込み生産と比較して費用がかかりやすいのはオンデマンド製造のデメリットです。
オンデマンド製造では独自仕様の商品を製造する必要があるため、従来の生産方式と異なる設備や環境を整えるべき場合があります。
また、デザインや素材なども独自仕様で仕上げる必要があるため、これらの対応のために費用がかさみやすくなってしまいます。
納品までの時間が長くなりやすい点も、オンデマンド製造のデメリットです。
オンデマンド製造を行う際には顧客の要望を抽出したうえで商品の仕様を決定する必要があるため、仕様が一定である見込み生産よりも製造に時間を要してしまいます。
納期があまりに長くなってしまうと顧客が競合他社へと流れてしまう原因にもなるので、商品の品質と相談しながら可能な限り早い納期を設定しましょう。
顧客に既製品を示せないことも、オンデマンド製造の難点といえるでしょう。
オンデマンド製造においては独自の商品が生産されるため、製品が完成するまで参考にできる商品がない場合も多いです。
そのため、完成品が想像と違った、という事態が発生する危険がある点には注意しましょう。
オンデマンド製造に対して、見込み生産には以下のようなメリットがあります。
同一の仕様の商品を大量生産できる点が見込み生産の最大のメリットといえます。
顧客のニーズに丁寧に応えるオンデマンド製造は大量生産が難しい場合も多いので、見込み生産はその弱点をカバーできる製造方法といえるでしょう。
また、製造過程が一貫している、在庫を多く用意しやすいといった理由から、受注してから納品するまでの期間を抑えやすいのも特徴です。
総じて、市場のニーズが高く、消費量も多い商品を製造する際に利用すべき生産方法といえるでしょう。
オンデマンド製造と比較して、買い手が気軽に商品を購入できる点も見込み生産のメリットです。
オンデマンド製造の場合には、自社の要望や必要個数をすり合わせる手間が発生しますが、見込み生産であればその手間が発生しません。
余剰在庫を確保しておけば受注してすぐに出荷することも可能です。
見込み生産には、以下のようなデメリットが存在します。
売れ残った商品が余剰在庫となってしまうリスクがあるのは見込み生産の大きなデメリットです。
特定の顧客を決めずに行う見込み生産においては、市場のニーズや販売個数を予測したうえで製造個数を決定する必要があります。
そのため、予測を誤ってしまうと余剰在庫が発生し、自社の売り上げに響いてしまう可能性があります。
大量生産に向いている見込み生産ですが、その分製造過多の危険があることを忘れないようにしましょう。
在庫管理にコストがかかることも、見込み生産のデメリットといえるでしょう。
大量生産を前提とした見込み生産では、製造した在庫を管理するための施設や体制を用意する必要があります。
また、劣化していく商品の場合には管理環境に細心の注意が必要になるうえに、保管期間にも限りがあります。
在庫関連の問題は見込み生産を行う際には常について回る問題といえるでしょう。
ここまでご紹介したメリット・デメリットを踏まえて、オンデマンド製造を選択すべきケースとしては以下のようなものが挙げられます。
顧客からの独自商品のニーズが高い場合には、オンデマンド製造を選択すべきといえます。
オンデマンド製造の魅力はなんといっても用途に応じた独自商品を購入できることです。
時間・コストを割いてでも要望に沿った独自商品がほしいという顧客が多い場合には、オンデマンド製造を選択しましょう。
ニーズに沿った高品質な商品を提供できれば、自社の信頼にもつながります。
製造コストが高い商品を扱う場合にも、オンデマンド製造は有用です。
原価の高い商品を見込み生産で製造し、商品が売れ残ってしまうと、その損失は非常に大きなものになります。
その点オンデマンド製造であれば受注を受けてから製造を行うため、製造した商品が売れる可能性が高く、高価な商品のロスの回避につながります。
在庫管理にかかるコストを抑えたい場合にも、オンデマンド製造を検討しましょう。
大量の在庫を抱えなくて済むのは、見込み生産にはないオンデマンド製造の強みです。
在庫管理体制や在庫に関する手間をかけたくない場合にはオンデマンド製造は優れた選択肢となるでしょう。
今回はオンデマンド製造の概要や、そのメリット・デメリットをご紹介しました。
オンデマンド製造は独自商品を製造できる以外にも、多くのメリットがある製造方法です。
コスト面でのデメリットがあるものの、現代では多くのコストを払ってでも自社に適した商品を欲する顧客が増えてきています。
メリット・デメリットをしっかり把握して、オンデマンド製造を自社の製造方法の一つとして検討してみましょう。