スマートフォンアプリやゲームにおいて利用されている印象が強いVR/AR技術。
ですが昨今では、現場業務を伴う業界を中心にビジネス利用が広がってきていることをご存じでしょうか。
そこで今回は、製造業でVR/AR技術を利用するメリットや具体的な利用方法をご紹介します。
現場業務の利便性向上に貢献してくれるVR/ARを有効活用して、自社の業務改善や組織改革を実現しましょう。
まず、VR/ARについての概要をご紹介したうえで、VR/ARの現場業務における有用性について解説します。
VRとは仮想空間を生みだしたうえで専用の端末を装着し、利用者自身がその空間に入り込んだかのような体験ができる技術です。
VRは「Virtual Reality」の略称で、日本語では仮想現実と訳されます。
利用者の体の動きに合わせて仮想空間の映像も連動して動くため、後述するARよりもリアルな体験ができる点が魅力です。
ARとは端末を通して映した現実の景色に、仮想の情報を重ねて投影する技術です。
ARは「Augmented Reality」の略称で、日本語では拡張現実と訳されます。
スマホゲームや画像加工アプリでも採用されるなど、VRと比較して一般的に浸透している技術といえるでしょう。
現場業務においては作業者が見ている景色を他者と共有することで、そのとき感じているリアルな感覚を伝えられる点が魅力です。
現実世界のモノを扱う現場業務とVR/AR技術は一見相性が悪いように聞こえますが、両者の相性は非常に良いといわれています。
具体的な作業を伴う現場業務は言葉だけでは説明しづらいことも多く、教育を行う際にはトレーナーが現場に立ち会ったうえで教育がなされてきました。
しかし、VR/AR技術の発達によって離れた場所からでも現場にいるかのような対応が可能になったのです。
現在、製造業や医療といった現場業務が必要となる業種においてVR/AR技術の利用はますます進んでいます。
製造業でVR/ARを利用するメリットとしては、以下のようなものが挙げられます。
VR/ARを利用するメリットとしてまず挙げられるのは、業務における場所や距離による制約がなくなる点です。
これまでは現場に赴く必要があった業務を、遠隔地からでもサポートできるようになるのは従業員の労働環境、人事面で大きなメリットといえます。
移動の手間を排除することによって出張費などの金銭コストの削減し、社員のワークライフバランスの確保にもつながります。
現実では再現が難しい状況を作り出せることも、VR/ARを利用するメリットです。
例えば、工場でのトラブルやアクシデントといった危険を伴う状況は、発生を想定した訓練しかできないこともあるでしょう。
しかし、VRを利用すればよりリアルな状況で、上記のような状況に陥った際の対処を訓練できます。
また、同じ状況を繰り返し再現できる点もポイントで、現実では準備しづらい複雑な工程を何度も再現しなおして繰り返し教育を行うことも可能です。
VR/ARの利用はさまざまな面で業務の効率化につながります。
研修環境を整備する手間の削減、従業員が現場に向かう際の移動時間の削減、ARを利用したマニュアルの電子化など、その業務効率化の方法は多岐にわたります。
製造業におけるVR/ARの利用は、現場業務の弱みをカバーする方法として高い効果を発揮する点がポイントといえるでしょう。
自社のコスト削減につながる点もVR/ARを利用するメリットです。
現場で研修を行う際の施設や専用設備の用意には、少なくない費用がかかることも多いでしょう。
一方でVR/ARを利用すればこれらの準備を仮想空間で行うことができるため、これらにかかる金銭コストの削減を期待できます。
ここからは、製造業におけるVRの具体的な利用方法を解説します。
VRによる仮想空間は研修やトレーニングを行う際に活躍します。
本来現場でしか行えない教育を、仮想空間で現場を再現することで場所を選ばず行えます。
製造現場や研修施設が遠方に位置する場合には特に恩恵が大きく、複雑な工程を繰り返し練習できる点は現場研修にはないメリットといえるでしょう。
また、熟練度の高い社員の体の動きや視線を記録したデータの活用も行えば、より具体的かつ実践的な研修を行うことができます。
VRを利用すれば、仮想空間における業務シミュレーションが行えます。
現実では難しい業務上の危険やリスクの検証を安全に行えることが最大の魅力といえるでしょう。
また、仮想空間で行ったシミュレーションやトレーニングを行った際のデータを使った検証や解析も可能です。
業務で起こりうる危険やリスクをデータをもとにまとめることができます。
VRを利用すれば、仮想空間において3D技術を利用した商品設計が可能です。
現実で仮設計する際と比較して、組み換えや規格変更も行いやすいため、時間や金銭コストがかかりづらい点が魅力です。
また、平面で商品設計を行う際よりも仕様や規格を具体的に確認できるため、課題の発見や商品の改良のしやすさにもつながります。
商品開発において試行錯誤が必要となる製造業とは、非常に相性の良い利用方法といえるでしょう。
VRは商談やプレゼンテーションの際の商品説明にも利用できます。
合同展示会などに出展する際には、自動車をはじめとした大型の商品を現場に持ち込めないこともあるでしょう。
しかし、VRで仮想空間に商品のモデルを用意しておけば、現場に持ち込まずとも顧客に商品の魅力を伝えることができます。
大型の商品も少なくない製造業においては、VRを利用した商品説明はぜひとも取り入れたい利用方法といえるでしょう。
ここからは、製造業におけるARの具体的な利用方法をご紹介します。
製造業におけるARの利用方法としてまず挙げられるのは、離れた場所からの業務サポートです。
ARを利用することで現場の社員と現場外の社員が景色を共有できるため、リアルタイムかつ両者ともに現場にいるような感覚で業務サポートを行えます。
トレーナーは作業者の端末に写真やポインタを使った情報を送信でき、わかりやすく具体的な業務サポートが可能です。
複数人の映像を同時に見ることも可能なので、チーム作業のサポートにも利用できます。
教育を行える人材が少ない場合にも各現場に向かうことなく業務サポートを行えるようになるため、各地に工場が存在する場合などには特に採用したい利用方法です。
AR技術は現場作業のアシストとしても利用できます。
例えば、現場作業や研修を行う際に紙のマニュアルを使っていると、手もふさがるうえに逐一マニュアルに目をやる手間が発生します。
そこでARを利用して空間にマニュアルを表示することで、両手をあけた状態で作業をすることが可能になります。
また、確認の手間が少なくなることで業務へ集中することができ、不注意による事故や作業ミスの防止にもつながることでしょう。
今回は、製造業でVR/AR技術を利用するメリットや具体的な利用方法をご紹介しました。
一見、現場が重視される製造業とは相性が悪いように思えるVR/ARですが、仮想空間の利便性をうまく利用することで現場業務の弱点の克服に活躍します。
加えて、場所に関する制約が少なくなることで、業務内容や組織の経営の幅も広がることでしょう。
各業界で注目されるVR/ARを有効活用して、自社業務や経営の変革を行っていきましょう。