動画や音楽サービスでおなじみのサブスクリプションサービスですが、近年では他にもさまざまな業界で展開されていることをご存知でしょうか。
デジタル技術の進化によって商品機能やサービス体系が多様化している現代において、サブスクリプションはさらなる広がりを見せています。
そこで今回は、サブスクリプションサービスの概要や製造業におけるサブスクリプションの利用について解説します。
サブスクリプションだからこそ実現できる顧客体験をユーザーに提供し、自社の成長やファン獲得につなげましょう。
まず、サブスクリプションサービスの概要をご紹介します。
サブスクリプションサービスは商品を購入するのではなく、料金を支払って一定期間自由にモノやサービスを利用できる利用権を提供するビジネスモデルです。
近年では多くの業界でサブスクリプションサービスを展開するケースが増えており、製造業に関しても採用する企業が増加しています。
売り切り商品よりも安い、最新のサービスを利用しやすいといった利点は製造業との相性が特に良いポイントといえるでしょう。
サブスクリプションが拡大した背景には、どの企業の商品も性能が変わらず似たようなものになる、いわゆるコモディティ化の進行があります。
社会の情報化が進み、製造ノウハウなどの情報が簡単に共有されるようになった現代では、各社が提供する商品は品質やコストで競合と差別化することが難しくなっています。
そのため、商品の質ではなくサービス内容やユーザーの満足度で差別化を図るという視点が重要になりつつあります。
これらのことから、サブスクリプションサービスを提供する際には、利用開始後のユーザー満足度にこだわり続けることが重要になるといえるでしょう。
ユーザーのニーズに応え続けることが求められるサブスクリプションは、提供元とユーザーとの双方向的なサービスであるといえます。
売り切り型の商品は購入時点でユーザーとの関係は希薄になりますが、サブスクリプションにおいては利用開始後もユーザーの声をくみ上げてサービスを改善していきます。
商品を売ることを目的とするのではなく、ユーザーの満足を目的としてサービスを展開することを意識しましょう。
製造業でサブスクリプションサービスを展開するメリットとしては、以下のようなものが挙げられます。
ユーザーからの評価や反応を把握できることはサブスクリプションサービスのメリットです。
契約者数や契約期間といったデータを把握できるため、売り切りの商品以上にユーザーの動向が把握しやすくなります。
その評価をもとに改善を続ける中で、どんな要素がユーザーにとって大切なのか、どんな商品のニーズが高いのかなどを知ることができます。
ユーザーのニーズに応えられる要素を商品やサービスに取り入れることで、サブスクリプションの継続利用や自社のファンの獲得につながることでしょう。
新規ユーザーが利用しやすいという点もサブスクリプションサービスのメリットです。
売り切りの商品と比較して安価で利用できるので、ユーザーが気楽に自社サービスを体験できます。
製造業においては単価の高い商品も多いため、それらを購入することなくお試し感覚で利用できるのはユーザーにとっても大きなメリットといえるでしょう。
より試してもらいやすいように、初月無料などのサービスを展開するのもおすすめです。
サブスクリプションサービスには前述のようなメリットがある一方で、下記のようなデメリットも存在します。
常にサービスを改善する必要がある点はサブスクリプションサービスのデメリットないし難しさといえるでしょう。
サブスクリプションはユーザーが満足できなければ継続が打ち切られるサービスなので、ユーザーのニーズに応えて改善を続ける必要があります。
また、製造業においては高速で変化する社会のニーズも把握したうえでサービスを改善する必要があるでしょう。
最新のテクノロジーやデジタル技術を迅速にユーザーに提供できる体制も重要となります。
サブスクリプションサービスにおいては能動的にユーザーへのコンタクトを行う必要があります。
従来の売り切り商品では問題への対応を行う受動的なカスタマーサポートが主流でしたが、サブスクリプションではサービス提供者から能動的にユーザーの満足度を高めるためのサポートやアクションを行う必要があります。
利用開始後のユーザーとのかかわり方が競合他社と差をつける要素となることもあるのです。
製造業でサブスクリプションサービスを展開する際には、以下の点を意識してサービスを展開しましょう。
ユーザーの満足度を重視するという点は、製造業においては特に意識すべきポイントといえます。
製造業は形のあるモノが商品となるだけに、その商品の質や性能を高めることに注力する企業も多いでしょう。
しかし、先述したようにサブスクリプションサービスにおいてはユーザーの満足が第一です。
各社の商品の性能に差が生じづらくなっている現代では、商品はユーザーに満足を提供するための手段であるという視点を持つことも大切です。
ユーザー満足度の向上がサブスクリプション成功のカギだということを常に念頭に置いて、サービスを改善していきましょう。
製造業のサブスクリプションサービスにおいては、IoT技術を利用した商品のアップデートを有効活用することも大切です。
ネットワークに接続した商品は、商品提供後もソフトウェアアップデート等で最新のサービスを提供できます。
急速にニーズが変わっていく現代では、サービス内容を柔軟かつスピーディーに改善できるアップデートはユーザーの満足につながります。
ユーザー満足度が契約継続につながるサブスクリプションとIoT技術は特に相性がよいといえるでしょう。
ここからは、製造業におけるサブスクリプションサービス展開の事例をご紹介します。
出典元:https://www.ricoh.co.jp/solutions/intelligent-workcore
プリンターをはじめとした事務機器の製造を行っているリコーでは、「RICOH Intelligent WorkCore」というサブスクリプションサービスを展開しています。
プリント以外にも多数の機能を備えた複合機とクラウドストレージを併用したサービスで、紙とデジタルデータの互換性を強化するアプリケーションを提供しています。
ユーザーはソフトウェアアップデートにより複合機を随時最新のバージョンに更新可能で、従来のように機器の買い替えを行わなくても最新の機能が利用できます。
アップデートやクラウド技術をユーザー満足度の向上につなげる、サブスクリプションの強みを存分に活かしたサービス内容といえるでしょう。
出典元:https://kinto-jp.com/
自動車メーカーのトヨタでは、「KINTO」という自動車のサブスクリプションサービスを展開しています。
自動車を購入することなく利用でき、自動車税や車検、自動車保険にかかる費用も含まれたお得な価格設定が魅力のサービスといえるでしょう。
利用プランや契約期間は多数用意されており、ユーザーの生活環境やライフプランに柔軟に対応できる体制を整えています。
利用する車種はトヨタの新車なので最先端の機能や安全性を備えていることに加え、トヨタの正規販売店ではタイヤ交換などのメンテナンス対応も受けられます。
最新サービスの提供、ユーザーの満足度を重視したプランなどが魅力的なサービスです。
今回はサブスクリプションサービスの概要や製造業におけるサブスクリプションの利用について解説しました。
格安での商品利用、IoT技術を使った商品の利用など、製造業とサブスクリプションは相性が良い点が多く、その市場はますます拡大しています。
特に新規ユーザーの流入が見込みやすくなるのは企業にとって大きなメリットといえるでしょう。
サブスクリプションをうまく利用してユーザーの信頼を獲得し、自社の売り上げ向上を目指しましょう。