政府や国際機関による法律やルール策定への働きかけを行うロビイング(ロビー活動)。
アメリカや欧州連合(EU)では活発に行われているものの日本においてはまだまだ認知度が低く、着手すべきことなのか、メリットはなんなのかといった疑問を抱く方も多いかと思われます。
そこで今回は、ロビイングの概要や注目される理由、ロビイングにおいて大切なことなどを解説します。
ロビイングについての理解を深め、自社の事業やサービスがより輝くルール策定を目指しましょう。
まずロビイングとは何か、日本においてロビイングがどのように認知されているかを解説していきます。
ロビイングとは企業・個人が政府・国際機関によるルール策定に働きかけて、自社の製品やサービスをより有利に展開するための活動を指します。
グローバルビジネスにおいてはさまざまなルールや取り決めが関与するため、それらが自社ビジネスの障壁となることも少なくありません。
ロビイングによって自社ビジネスに有利なルールを推進することは、グローバルビジネスの現場ではすでに一般的な事柄になっています。
利益の追求、政府への働きかけというとネガティブなイメージを持たれるかもしれませんが、ロビイングは決して悪いことではありません。
ロビイングは自社の利益を追求すると同時に、国や社会をよりよい方向に導くために行うものでもあるのです。
また、一般的に企業は政府や国際機関が定めたルールに則ってビジネスを行うものと考えられています。
しかし、憲法によって国民による政府への請願が保証されていることからも、正しいプロセスを踏んで働きかければ民間企業がルールの変更に関与することは何も悪いことではないのです。
日本においてはロビイングへの関心は低く、時にネガティブなイメージを持たれることもあります。
ロビイングが活発なアメリカ等と比較して、日本企業のロビイングへの意識の低さが問題視されることもしばしばです。
国際社会ではロビイングはビジネスにおける重要な要素として認識されているものの、日本ではいまだに民間と政府の癒着や蜜月としてネガティブに捉えられがちです。
日本が国際社会で戦うためには政府と民間の健全な協力は不可欠であるため、ロビイングのイメージ改善や関心の向上は急務といえるでしょう。
実際にロビイングによって成功を収めた、ヤクルトの事例をご紹介しましょう。
ヤクルトに含まれるシロタ菌は腸内環境を整える効果があるため健康飲料として扱い、他の清涼飲料とは異なると主張。
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国際委員会に働きかけて発酵乳の新カテゴリーとして「乳酸菌飲料」を定義することに成功し、世界で健康飲料としての評価を上げる。
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商品イメージの向上によるブランディング効果のほか、一部の国では税率が緩和にもつながり、商品の販促につながった。
このように、飲料の国際規格というルールの変更を実現したことによって、自社商品の価値を大きく向上させることに成功しました。
ここでは、ロビイングが重要視される理由をさらに詳しく解説します。
ルール次第で事業の成否が変わってくるグローバルビジネスの世界では、ロビイングが非常に重要な役割を果たします。
ビジネスの現場では各国のルールや国際的な取り決めが交錯するため、自社が利益を享受できるルールをいかに早く制定するか、というルール策定競争が発生しているのが現状です。
ロビイングに積極的な国家や企業は当然自らの利益につながるルールを設定し、消極的であればそのルールに従って不利な条件でビジネスを行わざるをえない状況に陥ってしまいます。
このように、ロビイングはグローバルビジネスにおける競争を勝ち抜くために欠かせないものになりつつあるのです。
ルールによる事業の影響を防ぐためにもロビイングは重要です。
海外における事業展開を考えている際には、特に念入りに各国の法律やルールを調査する必要があるでしょう。
ルールを軽視して新規ビジネスを展開すると思わぬところで足をすくわれ、最悪の場合には事業の失敗に繋がってしまいます。
事前にロビイングのための調査を行いつつ、ルールの改正を意識したうえで事業を展開することで新市場での事業を円滑に進めることができるでしょう。
事業開始後の事業内容の修正やロビイングは手間が大きくなってしまうため、ロビイングへの意識を持ちながら事業を展開することが大切です。
政府と企業が協力することで日本経済の発展につながる点も、ロビイングが注目される理由の一つです。
企業の成長は国の経済成長につながるため、政府と企業が協力してルールを作っていくことは日本全体の利益につながります。
また、ビジネスの現場に直接携わる民間企業の方が、政府よりも現場の実情を汲んだ意見を持っているということもあるでしょう。
このように、官民が協力してルールの策定を進めるロビイングは、日本がグローバルビジネスで戦うための重要な戦略として認知されてきています。
新市場における新規事業への挑戦を推進するためにもロビイングは重要です。
ルールは時代によって変わっていくものですが、現代に適していない旧時代のルールが残っていることもあります。
そのようなルールは新時代のビジネスの障壁になることがあるのです。
特に、これまで誰も挑戦してこなかったような新規事業を展開する際には、それに適したルール策定を積極的に推進する必要があるでしょう。
その事業が認められ、健全に育つための地盤となるルールをロビイングによって形成する必要があるのです。
ここでは、ロビイングを行う際に意識すべき大切なポイントをご紹介します。
ロビイングの際には、自社の事業やサービスをより際立たせるルールを考えることが大切です。
前述したヤクルトの事例はその好例で、自社商品を他の清涼飲料と区別して際立たせることで商品のブランディングや地位向上に成功しています。
強みを際立たせるにはまず自社サービスの強みを確立し、どのように公益につなげるかが重要です。
自社の強みを十分に理解したうえで、各所から納得の得られるルールを作れるよう働きかけを行いましょう。
自らの組織だけでなく、他者の利益につながる提案をすることもロビイングにおいては大切です。
ルールを策定する際にはそのルールを策定することによるメリットや意義を説明し、各所との調整および合意を経る必要があります。
公益に繋がらなければ、そのルールが受け入れられる可能性は低いでしょう。
まず公益につながることへの理解を得たうえで、自社の利益につながる内容を提案していきましょう。
進出予定の市場の状況把握も、ロビイングにおける大切なポイントです。
特に海外で事業を展開する場合には、その国の慣習やルールへの深い理解が必要となるでしょう。
その国にとってはどのようなルールが国益につながるのか、自社にとって有利なルールを策定できる可能性はあるのかといった調査が必要になります。
海外で新規事業を立ち上げたものの適したルールを整備できずに失敗、ということが起こらないよう、事前調査を怠らないようにしましょう。
今回はロビイングの概要や注目される理由、ロビイングにおいて大切なことなどを解説しました。
社会の在り方や需要が目まぐるしく変わる現代では、ルールの策定によって事業の成否が決まることは珍しくありません。
商品やサービスが優れていても、ルールが障壁となって事業が失敗する、という事例は実際に起こっています。
ロビイングを通じて、グローバルビジネスの現場における自社の立ち位置をより高めていきましょう。