絶えず変化を続ける現代の社会情勢。そんな不確実性の高い社会を企業が生き残るために必要な指針がSXです。
SXにおいては企業の中長期的な成長が重視されるため、変化する情勢の中でも生き残れる企業づくりを助ける力となります。
今回はSXが重要視されるようになった背景やSXで求められる企業戦略を解説します。
SXの考え方を企業戦略に取り入れて、自社を先の見えない未来でも力強く生き残る企業に変革しましょう。
SXとは、企業が中長期の持続可能性に重きを置いた経営を行う指針を表す言葉です。
サステナビリティ・トランスフォーメーションと読み、日本では新型コロナウイルスの流行が始まった2020年ごろから認知されて、不確実で先の読めない時代に必要な考え方として知られるようになりました。
短期的な利益を求めるだけでなく、中長期的な成長を見据えた事業やイノベーションへの投資を推奨するのが特徴です。
企業の在り方だけでなく、企業のビジョンをいかに関係者に伝えるかという対話の在り方の改善もSXの指針に含まれています。
現代社会ではなぜSXが重要視されているのでしょうか。
その要因を3つに分けて詳しく解説していきます。
SXが重要視される要因としてまず挙げられるのが、変化が非常に速い現代社会の情勢です。
進化するテクノロジー、国際情勢、コロナ禍というように、現代は日々多くの変化にさらされています。
高速で変化する社会に対応するには企業の在り方やビジネスモデルの変革が必要になるため、SXを意識した企業戦略の確立が急務となっています。
これからの経営では、自社ビジネスをどのように長期的に維持していくかという視点が求められるでしょう。
投資家や消費者が企業に対して社会への貢献を求める風潮も、SXが重要視される要因となっています。
ESG投資やSDGsを筆頭に、世間が企業に要求するものは純粋な利益だけではなくなってきています。
日本において「2050年までに二酸化炭素の排出量をゼロにする」旨のカーボンニュートラル宣言がなされたように、環境維持の取り組みや持続可能な環境づくりの推進は世界的に広まっているのです。
SXを意識した経営を行う際には、必然的にこれらの要素も考慮して経営戦略を立てる必要があります。
社会貢献を意識した経営は社会に与える企業イメージの向上にもつながるため、投資家や消費者からの支持が集まり、中長期的な利益につながるでしょう。
投資家が企業の新規事業を評価する際の難しさも、SXが重要視される要因です。
投資家は実現可能性が高く、収益も見込める事業に投資したいと考えます。
しかし、不確実な時代である現代では、企業の新規事業が成功するかという判断は非常に困難なものとなっているのです。
そのため、今後の自社の事業展開をはじめとした中長期的な計画を明確に説明することが企業には求められています。
SXに重きを置いた経営戦略を立てる際には、どのような変革が求められるのでしょうか。
SXにおいてまず求められる変革は、中長期的な稼ぐ力を育てるということです。
自社が競合他社に勝てるのはどんな点なのか、どのようなポジションをとれば市場で有力なプレーヤーとなれるのか等を中長期的な視点で考えます。
そのビジョンに沿って事業や新規イノベーションに投資を行うことで長期的に稼ぐ力を育て、事業の持続可能性の向上につながるでしょう。
さらに、未来を見据えた事業投資を行っているという事実が外部関係者にも評価されるため、直接的な利益だけでなく社会的な信頼獲得にもつながります。
社会の変化に対応する力の向上も、SXにおいて求められている変革です。
先が見通せない情勢のなかで企業が生き残るには、不測の事態に備えたリスクヘッジや未来を見据えた企業戦略が不可欠です。
たとえば、新型コロナウイルスによる社会の変化も対応力が試された出来事だったといってよいでしょう。
社内のデジタル化の推進が遅れていた企業は、この未曾有の事態への対応に苦労しました。
今後起こりうる脅威を予測し、さまざまな状況に柔軟に対応するための準備を進めていくことを推奨するSXはこのような事態への対応力も高めます。
社会への貢献を重視する経営方針も、SXにおいては求められます。
先述したように、企業の長期的な成長のためには社会貢献を重視する姿勢が社会に認知されることが不可欠になってきています。
短期的な利益はあるものの社会貢献が評価されてない企業は、今後投資家や市場の支持を集めにくくなる可能性もあるのです。
また、その社会貢献を関係者に正しく伝えることも企業には求められるでしょう。
自社の社会貢献を投資家や世間に広めるための対話の在り方も、SXにおいて重視されている要素の一つなのです。
ダイナミック・ケイパビリティとは、SXを重視した戦略を進めるにおいて必要とされる企業の能力のことです。
感知力、捕捉力、変容力の3つの能力から構成されており、各能力の詳細は以下の通りです。
これらの能力は総じてテクノロジーとの関連が強いため、SXはDXと関連付けて説明されることもあります。
両者の関係については、別項で詳しく解説します。
ここでは、SXとDXおよびSDGsとの関係を解説します。
前述の通りDXはSXに必要なものである一方、相反する特性を持つものでもあります。
DXの目的はテクノロジーを利用して短期間で成長を果たし、競合他社に先んじて市場における優位をとることです。
対してSXは長期的な成長を期待する指針のため、双方の目的は一致しません。
しかし、DXで優位をとった際にそのビジネスが持続しなければ、市場で大きなアドバンテージをとるのは難しいでしょう。
そこでSXの中長期的な視点を取り入れれば、市場における優位性を長期間維持できる戦略を立てられます。
SXとDXはそれぞれの目的は異なるものの、うまく関連させることでシナジーを発揮する指針といえます。
SXとSDGsはともに長期的な成長を見据えたものであり、共通点も多いです。
SDGsは世界的に推進されている目標であり、社会が企業を評価する際の一つの指標にもなっています。
SXとSDGsの目標は短期的にみれば企業の利益には直結しづらいものといえるでしょう。
しかし、長期的に見れば自社の評価を向上させて投資が受けやすくなる、企業イメージが向上するといった利益を享受できます。
そのため、SXを意識した経営戦略を立てる際には、世界的に影響力の高いSDGsを意識した戦略を立てることも重要になります。
今回はSXが重要視されるようになった背景やSXで求められる企業戦略を解説しました。
企業の中長期的な持続に重きを置いたSXは、先の見通せない社会においてその重要性を増しています。
SXを意識した経営を行っているか否かは、今や企業を判断する指標にもなりつつあります。
事業成長を通じて投資家や消費者から評価される企業になるべく、SXを意識した経営戦略の見直しをぜひ行ってみてください。