進んでミスをしたいという人はいないものの、ミスや過失は誰にでも起こりうるものです。
ミスや過失は組織での活動を行う上で必ずついてまわる問題といえますが、一つのミスが組織に重大な損害を与えてしまうことも珍しくありません。
そこで今回は、人が引き起こすヒューマンエラーの発生原因やその対策方法をご紹介します。ヒューマンエラーへの理解を深め、人為的なミスによる損害を未然に防げる組織体制をつくり上げましょう。
ヒューマンエラーとは、人の行動が原因となって発生するミスや過失のことを指します。
一つの過失が原因となって組織の信頼が失墜するという危険もはらんでいるため、ミスを事前に防止する組織づくりが重要になります。
ヒューマンエラーが起こりやすい環境では重大なミスが発生する可能性が上がるうえに、頻発するようだと外部からの信頼低下にもつながるでしょう。
また、ヒューマンエラーは以下の2つに分類され、タイプによって原因や対策方法も変わってきます。
こちらは、適切に行動をしようという意思があったにもかかわらず発生してしまうヒューマンエラーです。
不注意による業務上のミスなどがこれに分類され、典型的なミスや過失としてこちらのタイプを想像される方も多いでしょう。
不注意や確認不足のほかにも、知識やスキル不足といった業務熟練度が足りないことが原因で生じる場合もあります。
このタイプのミスが頻発する場合には職場環境や業務内容に何らかの問題がある可能性があるので、発生原因を追究して対策を講じましょう。
こちらは、適切に行動しようという意思が欠如したヒューマンエラーです。
業務において手抜きを行う、決められたルールを守らないという事例などがこちらに分類されます。
このようなケースが頻発する場合には、業務が単純化している、従業員がルールを守る必要性を理解できていないといった問題が考えられます。
改善するためには組織内での相互理解やコミュニケーションの拡充が重要になってきます。
ここでは、ヒューマンエラーの原因を前述の2つのタイプに分類したうえで解説します。
確認不足や見落としなどがこれにあたり、意図的でないミスの代表例といってもよいでしょう。
煩雑な業務内容や注意力が散漫になる職場環境など、不注意や判断ミスを誘発しやすい環境が原因となっている場合もあります。
また、業務フローの中で確認の工程が不足している、業務に慣れて確認を怠るといった状況も不注意によるヒューマンエラーを誘発する原因となります。
従業員の業務経験の不足もヒューマンエラーの原因となります。
慣れない業務では考えるべきことも多く、どうしてもヒューマンエラーは増えてしまいます。
担当者がマンツーマンで確認を行うなど育成・研修の環境を整えることが大切で、新人や異動直後の従業員の場合には特に注意してチームでミスの防止に努めましょう。
日々の業務による心身疲労もヒューマンエラーの原因となります。
多すぎる業務量や長時間労働をはじめとした劣悪な労働環境では、疲労によるヒューマンエラーが発生しやすくなってしまいます。
製造業をはじめとした現場作業が関わる業種の場合は特に、従業員の負担や身体的なパフォーマンスを考慮した労働環境の整備が必要です。
情報共有や連絡の不足もヒューマンエラーの原因になります。
報告や連絡を軽視する職場環境、関与する従業員が多い現場の場合には特に注意が必要です。
組織全体でコミュニケーションを重視するよう呼びかけることに加え、チャットツール等を利用して従業員がコミュニケーションをとりやすい環境を整えることも大切です。
担当業務への慣れは意図的な手抜きの原因となることがあります。
業務に慣れると妥協してよい個所がわかってくるため、「これくらいなら大丈夫だろう」といった油断の気持ちが生まれて手抜き業務につながってしまいます。
ずさんな業務によるリスクを正しく伝えることで、従業員の手抜きを防ぎましょう。
組織の環境や風土もミスや過失の発生に関係します。
例えば業務効率を重視する組織の場合には、確認作業が軽視された結果ヒューマンエラーにつながることがあります。
また、各従業員に多くの業務を任せる組織の場合には、業務に追われて時間的な余裕のない従業員が意図的に手抜きを行う場合もあるでしょう。
ここでは、組織におけるヒューマンエラーによる問題の一例をご紹介します。
取引先の情報や個人情報などを誤って送信してしまう情報漏洩は、組織にとって重大な問題になりえます。
一回のミスで関係者に大きな被害を与えるのはもちろん、組織の信頼は大きく下落してしまいます。
業務フローの中で複数回の確認を行う、セキュリティを見直すといった措置でミスを未然に防ぐ体制づくりが大切です。
製造業をはじめとした現場仕事では、機器の操作ミスが発生する場合があります。
これによって生産ラインの停止、商品の破損、最悪の場合には人身事故につながってしまう場合もあるでしょう。
操作や業務フローに関するマニュアル整備に加え、休憩時間の確保や長時間労働の撤廃をはじめとした措置が必要になります。
情報入力の際に誤った情報を入力してしまう、という事例もヒューマンエラーにあたります。
例えば商品価格を誤ったままWeb上で販売を開始してしまったら、予期していなかった価格で商品を販売することになってしまいます。
このように一つのミスが組織への大打撃につながりかねないことを忘れないようにしましょう。
ここではヒューマンエラーの対策を基本的な流れと具体的な対策に分けて解説していきます。
ヒューマンエラー対策の基本的な流れは以下の通りです。
ヒューマンエラー対策の具体例としては以下のようなものが挙げられます。
これまで手作業で行っていた業務を機械やAIを使って自動化することは、ヒューマンエラーの対策につながります。
数値の入力や情報整理、細かな手作業といったヒューマンエラーが発生しやすい業務を特定したうえで自動化を検討しましょう。
自動化に際しては相応のコストがかかるため、費用対効果を検討したうえで決定する必要があります。
わかりやすくシンプルなマニュアルを用意することも、ミスや過失の発生防止策として有効です。
業務フローが単純化されて業務上のミスや注意力の散漫を防ぐことができ、不注意によるミスを軽減できるでしょう。
また、研修や育成の際には新任担当者の理解がより簡単になるという効果も見込めるため、業務熟練度の向上にも有効な対策といえます。
ヒューマンエラーを防止する業務改善ツールの導入も有効な対策です。
タスク管理ツールを利用して従業員の不注意や物忘れを防ぐ、社内SNSを利用してコミュニケーションや意思伝達を促進するといった対策が考えられます。
これらのツールはミスの発生防止に加えて、組織の生産性の向上にも活躍することでしょう。
今回はヒューマンエラーの発生原因やその対策方法をご紹介しました。
重大な過失の場合には一回発生しただけで甚大な被害を出してしまう可能性があるため、組織全体で発生防止に努めることが大切です。
対策する際には従業員の意識だけでなく、仕組みの改革が重要になってきます。
何が原因でミスが発生しているのかを特定し、その原因を防ぐための仕組みづくりを行っていきましょう。