多能工は各従業員が多くの業務を担当できる状況を指し、組織の業務を円滑に進めるうえで非常に大切な役割を果たします。
今回は多能工のメリットやデメリット、業務改善の手順などを解説します。
多能工をうまく活用して自社業務の円滑化や安定化を図り、優れた組織づくりを行いましょう。
多能工は各従業員が複数の作業や業務を担当することを指すと同時に、業務を担当する従業員自身のことを指す言葉でもあります。
「マルチスキル」「マルチタスク」と言い換えられることもあり、多能工の従業員が活躍できる環境を整えれば各従業員が柔軟に業務を担当できるようになります。
対して一つの業務のみを遂行する従業員のことを「単能工」と呼び、担当業務に関するノウハウや知識が蓄積しやすいというメリットがあるものの、他業務への理解が浅くなるがゆえのデメリットも多く存在します。
そのため、業務が多様化する現代では多能工を活かして柔軟な業務体制を整える組織が増えています。
多能工は組織にどのようなメリットをもたらすのでしょうか。ここでは多能工の主なメリットをご紹介します。
多能工を育成することによって、業務担当者が不在で業務が遂行できないというリスクを軽減できます。
業務が一人の従業員に属人化してしまっている場合には、その担当者が欠勤・退職などをしたときに該当業務が完全に止まってしまうリスクがあります。
しかし、多能工の人材を増やして他の従業員でも業務を担当できるようにしておくことで、アクシデントの際にも他の従業員がカバーすることが可能になります。
多能工を促進することは、各従業員の業務負担の平準化にもつながります。業務担当者が一人しかいない場合、繁忙期などで業務量が増えても担当者が一人で全て対応するしかありません。
しかし、多能工の環境を整えておけば業務量の少ない従業員がカバーに入ることが可能となり、自社のマンパワーを効率的に分配できます。
業務量に差がある環境では従業員の不満も増大するため、業務を平準化できる環境を作ることは組織運営において大きなメリットとなるでしょう。
多能工の育成を行うことで、従業員の視野の拡大にもつながります。
多能工を実現するためには各従業員が幅広い業務知識を備える必要があるため、メインの業務以外の事情やノウハウの理解が深まります。
単能工の場合には「自分の担当業務だけ行えばよい」という考え方になりがちですが、多能工の場合にはメインではない業務経験を通じて他業務や他部署への関心も広がります。
結果的に組織全体の結束が強まり、チームワークに優れた組織へと近づく助けになるでしょう。
多能工の従業員はキャリアの幅も広がります。例えば、営業と事務の双方をこなせるような育成を行えば、のちに役職変更や配置転換を行う際の可能性が広がります。
組織運営の柔軟性向上が見込めることはもちろん、従業員が自身の適性を知るきっかけにもなり、モチベーションにつながることもあるでしょう。
多能工には多くのメリットがある一方、デメリットも存在します。ここでは、それらのデメリットを一つひとつ確認していきましょう。
多能工の環境を整える際の大きなデメリットとして挙げられるのが、従業員の育成に多大なコストがかかることです。
多岐にわたる業務知識を身につける必要のある多能工は、当然ながら育成にかかる時間や人材、費用コストも大きくなります。
専門的な知識を習得する場合には研修やOJTが必要になる場合もあるため、必要になるコストとリターンをよく検討したうえで多能工の育成を行いましょう。
また、短期間で一気に育成を進めようとすると従業員の負担も大きくなるため、従業員のモチベーションの低下につながらないよう時間をかけてゆっくりと進めることも大切です。
多能工を前提とした組織体制を整える場合には、それに応じた適切な評価制度を整備する必要があります。
複数業務をこなしているにも関わらず正当な評価がされなければ、当然ながら従業員の不満は高まります。
不満が高まれば業務に対するモチベーションの低下はもちろん、最悪の場合には過度な負担が原因で従業員が退職してしまうことも考えられます。
従業員の業務量・学ぶべき事柄は大幅に増えるため、現場の声を聞きつつ社員のモチベーション管理を徹底的に行いましょう。
多能工を有効に活用するためのオペレーションが難しいこともデメリットといえます。
多能工を活用する場合には多くの従業員が業務に携わるため、情報共有や連携が難しくなります。一人で業務を進める場合と比較して、連絡や業務の二度手間といった無駄な工程が生まれやすいのも確かです。
各従業員の担当業務の確立や円滑な情報共有ができる環境整備などを通じて、入念なオペレーションを行いましょう。
ここからは、組織に多能工による業務改善のステップを解説します。
まずは課題がある業務の洗い出しを行います。
現状で問題なく進行している業務とそうでない業務を区別し、以下のような業務には特に注意して多能工を検討しましょう。
判断を行う際には現場の声にも耳を傾けて現状を把握し、本当に多能工で対応すべき業務はどれなのか精査しましょう。
次に、解決したい業務の内容を明確にします。多能工の育成を行う際には業務フローを多くの従業員に伝える必要があります。その際、業務内容が明確でない、確立されていないという状況だと、大人数への業務フローの伝達は困難を極めることでしょう。
未経験者でも理解できるように業務フローを簡単に整理して、マニュアル等にまとめて可視化しておくと多能工の育成を円滑に進めることができます。
業務内容を明確にしたら、続いて育成の計画を立てましょう。
多能工の育成には多くの時間やマンパワーが必要になるため、誰にどれくらいの負担がかかるかといった内容も事前計画で把握しておく必要があります。育成中も本来のコア業務に支障が出ないよう、現場の従業員とのコミュニケーションを欠かさずに計画を進めていきましょう。いずれにせよ従業員の業務負担が増加することになるので、業務環境や評価などに関するすり合わせもしっかり行い、従業員が納得できる計画を立てましょう。
育成が進んだら、業務の実践と振り返りを通じて改善を行いましょう。
育成を行う際には、業務開始後も現場の状況や問題点をチェックしつつ改善を続けることが重要です。多数の従業員を巻き込んで行うことになるため、育成から業務開始後まで予想していなかった問題が多数発生するでしょう。現場の声を参考にしつつ、従業員にとって無理のない環境を作りましょう。
今回は多能工のメリットやデメリット、業務改善の手順などを解説しました。
多能工をうまく活用すれば特定の従業員だけに業務を任せる、といった状況を回避できるため、業務の円滑化やアクシデントの際のリスクを軽減できます。業務環境を整えるには地道な努力が必要にはなりますが、コストに見合ったメリットがあることは本記事で解説したとおりです。多能工によって課題を解決できそうな場合には、今回紹介した情報をもとに業務改善を検討してみてください。