営業の属人化に悩まされる営業担当者や、属人化の解消に務めるチームリーダーは少なくありません。
たとえば、特定の営業担当者に、売上や顧客情報が偏ってしまうと、その担当者が異動や転職で離脱した場合に大きなダメージを被ってしまいます。
けれども貴重な顧客情報や営業ノウハウを、チームや部署全体で共有できれば、個人の能力だけに頼らずにチーム全体として売上を上げていくことができます。属人化の解消のためには、まずは属人化が発生する原因を理解した上で、効果的な対策を講じましょう。
本記事では、営業の属人化の原因・弊害・対処法を解説します。
広辞苑では、属人とは「人に属すること」と表記されています。
つまり、企業における営業の属人化は、自分の担当する顧客の情報などを社内で共有せず、自分しか把握していない、いわゆる「専属状態」であることを意味します。一般的に属人化はネガティブな意味で使われますが、専門性の高い業務を担当する社員については属人化しやすいという特徴もあります。
営業の属人化は、顧客との信頼性を築けるメリットがある一方で、社内全体に営業のノウハウや知見が蓄積されないデメリットがあります。
営業の属人化の発生原因には、主に「共有を拒む心理」「多忙」「共有の仕組みがない」ことの3点が挙げられます。
営業成績の良い人が評価されるような競争環境にある場合など、優秀な成績の人は、共有化してしまうと成果やノウハウを他者に奪われてしまう感覚に陥りがちなため、営業プロセスを共有したくないという心理が働きます。反対に、共有過程でミスや怠慢が明らかになってしまうことから、共有に二の足を踏む営業担当者も少なくありません。
また、多忙により情報共有に手が回らないケースも多くあります。顧客の対応や管理、資料作成のほか多大な仕事を抱える営業担当者に、時間的余裕のないことが原因です。
そして、そもそも顧客情報や営業ノウハウを共有する習慣やシステムがないケースもあります。その場合、環境自体が属人化を発生させる原因となってしまうでしょう。
ここでは営業が属人化してしまった場合のデメリットや弊害について解説します。
営業の属人化の弊害は、特定の個人に顧客情報などが偏ることによって、全体として営業成績を上げていく、ということが難しくなる点です。営業ノウハウは、顧客に対するアプローチ方法や、失敗から得た改善策などを共有することによって、より高い成約率を目指せる知見となります。
また、営業上のさまざまな数字や知見が蓄積されると、有効なデータも算出できるようになるため、営業成績を上げられるようになります。しかし属人化している場合は、情報やノウハウなどの共有が難しい状態になっているため、結果として全体の営業成績には寄与しないこととなってしまうでしょう。
また、属人化の弊害には、情報共有に手間がかかることも挙げられます。属人化してしまうと、その担当者でなければ対応ができない状態となります。
そのため、特定の顧客情報について知りたい場合は、担当者に聞く手間が生じてしまいます。また、問い合わせがあった際に担当者が不在の場合は、確認をしてからでないと対応ができません。
あるいは、担当者が急病にかかったり退職してしまったりした際には、当人が業務マニュアルや引継書を整えていなかった場合、引き継ぎに多くの時間を要してしまうでしょう。このように、属人化によって営業知識を持つ人が限定されてしまうと、チーム全体の業務効率が下がってしまいます。
営業の属人化の解消法・対処法については以下の通りです。
4つのステップを順に紹介します。
まずは、属人化してしまっている情報を、社内で共有するための環境作りから着手する必要があります。
根本的な体制を見直し、情報共有のしやすい環境作りをすることによって、長期にわたって属人化を防ぐ社内体制へと変えることが可能です。
情報共有のためのオンラインツールやシステムを導入し、営業に携わる担当者は誰でも、どこにいてもアクセスできるようにして、情報を可視化しましょう。各担当者のスケジュールや、アポイントの予定などの営業プロセスをオンラインで共有すれば、各人の状況がわかるようになります。
チャット機能があるモバイル対応のツールであれば、外出先や移動中・テレワーク中で不在の社員にも問い合わせが瞬時に可能となります。オンラインなどで共有を行うことにより、「共有の時間がなかった」「共有されるまで時間がかかった」という問題を防ぎながら、情報共有の習慣化を促すことができます。
システムやツールだけでなく、情報共有についての意見交換の場を週1回程度設けることで、各個人の進捗状況を確認できます。
また導入した共有システムなどへの意見をヒアリングすることで、当事者意識を持ちながら属人化解消を目指していく環境を作り上げられるようになります。
共有する項目を決めておくことで、業務中に項目を意識しつつ、運用や営業活動の改善の機会を増やすことができます。
特に以下の内容は最低限の項目として共有されると良いでしょう。
まずは、顧客の名前・会社名・所属・メールアドレスや電話番号などの連絡先・接点を持ったきっかけなどの、顧客情報を共有しましょう。
営業の担当者の皆がアクセスできるようになれば、特定の担当者しか顧客と接点を持てないという属人化の状況が改善されます。
これらに加えて、顧客の抱えている課題やニーズ、予算などの現状もこまめに入力する習慣・仕組みを作ればさらに情報共有が進みます。
営業活動の内容を共有することも、案件の状況を知る上で重要です。
顧客ごとの訪問日や商談・提案の内容、メールの送受信内容など、日々の営業活動をシステム上で共有することで、引き継ぎや問い合わせ対応も全体でスムーズにできるようになります。営業活動の内容が蓄積されれば、成約した商談の事例も蓄積することができ、売上に結びついていくでしょう。
また、うまくいかなかった事例も蓄積されることにより、無駄な営業活動を見直して生産性の向上にもつなげられるメリットがあります。
各担当者の顧客訪問日や打ち合わせ日程などのスケジュールも確認できるようにしておきましょう。
予めスケジュールを共有し、第三者からも見られている状況を作り出せば、仕事に取り組む姿勢も真摯になります。また、各人の最新の進捗情報も可視化されるため、営業全体のスピード感も上がるでしょう。
システムやツールを導入し、共有すべき項目のリストアップが終わったら、マニュアルを作成して運用を標準化し、属人化の防止につなげましょう。どのタイミングで共有するかなど、属人化の発生防止を見据えて、社内で検討しながらマニュアルを作成していくことが大切です。
共有化のプロセスを検討する中で、属人化解消の意識も社内に浸透していくでしょう。
共有システムの構築とマニュアル化ができたら、情報共有の会議やミーティングを定期的に設けて、お互いの業務の補足や意見交換を行う場とします。
システムとマニュアルを形骸化させず、営業活動の向上・売上に結びつけるために、会で出された課題や決定事項も議事録に残して共有すると良いでしょう。
共有システムの運用をブラッシュアップする過程で、属人化解消につながるでしょう。
今回は営業の属人化の弊害と対処法について解説しました。
営業の属人化はデメリットが多く、解消するためには社内の体制から整えていくことが大切です。また、社員同士がコミュニケーションを取る機会を増やし、どこにいても瞬時に共有できるツールや仕組みを取り入れていくことが属人化防止には有効です。営業の業務効率や生産性の向上にもつながるため、情報のマニュアル化・可視化を行い、共有の仕組みを日々の営業活動に活かしていきましょう。