若手育成を行う上で、部下を持つ上司やプロジェクトリーダー、人事担当者は「早く戦力になってほしい」と考えるのではないでしょうか?
若手育成を効果的に進めるには、若手の傾向や特徴について理解しながらポイントを押さえて取り組んでいく必要があります。
本記事ではデータに基づいた若手の傾向、育成時のポイント、具体的な取り組み方、成功事例なども紹介いたします。
なお今回は新卒〜入社4年目に該当する、1990年代後半〜2000年代前半生まれの「Z世代」「ミレニアム世代」に絞って解説していきます。
人件費を割き、上司が人材育成に注力しても、若手自身が退職してしまうこともあります。
実際に厚生労働省が行った調査によると、2020年時点で大学卒における3年以内の離職率は32.8%となっています。
画像出典元:厚生労働省公式HPより
3人に1人は3年以内に辞めている現状がある中で、離職されないようにしつつ、戦力になるまで育てる難易度は決して低くありません。
若手育成時「板挟み状態」の解消は難しく、育成業務を好まない社員も出てきてしまう可能性もあるでしょう。
最近の若者の傾向について確認していきましょう。
国立青少年教育振興機構が2018年に米中日韓の高校生を対象に行った調査の中で、日本の高校生が他国に比べて心の健康状態が悪いという結果が出ています。
「私は価値がある人間であると思う」問いに米中は約80%、日本は44%がYES
「落ち込む」問いに米韓は約30%、日本は54%がYES
このようなデータから、自信が持ちづらく、落ち込みやすい特徴を持っていることが分かります。
株式会社日本能率協会マネジメントセンターが2020年〜2021年に入社の新入社員へ実施した調査では、以下のような回答が得られています。
「失敗したくない」問いに79.0%がYES
「失敗したくないので責任ある大きな仕事は任されたくない」問いに56.7%がYES
失敗を恐れてしまうことで、任された仕事は完璧にできるものの、挑戦よりも「安定感」や「間違い」を避ける傾向があると読み取れます。
そのため、大きめのプロジェクトを担当しなくてはならなくなった場合、周りのサポートが非常に重要になってきます。
2017年に内閣府が調査した「子供・若者の意識に関する調査」では、数年前にも関わらず、既にワークライフバランスを重視する割合が増加しています。
画像出典元:内閣府公式HPより
最近もプライベートを重視する若者が増え、昇進を優先せずに、フリーランスという働き方も選択されるようになってきました。様々な働き方が多様化し、自分の価値観を優先する特徴が顕著に現れてきています。
そんなZ世代やミレニアム世代を育成する際、育成担当者が気をつけておきたいポイントを3つ紹介します。
2022年にNHK就活応援ニュースゼミで取り上げられた学生の就職観は最も多くの人が「楽しく働きたい」と回答しています。
画像出典元:NHK公式HPより
このように、育成時、若手自身の強みや弱み、どのような目標や価値観を持っているのかを理解しておく必要があります。
若手自身も、自分の強みを活かせているという自信につながり、やりがいを持って辞めずに継続する可能性が高いといえるでしょう。
若手社員への指示をしたとしても、上司の指示内容と若手が理解した指示内容を比べると、少なからず相違があるものです。
そのため、従来のやり方に固執せず、具体的な指示を出すようにしましょう。
指示に具体性を持たせるだけではなく、業務を進める上で役立つ知識などを共有するようにしておきましょう。
予め難易度が高く、専門知識が必要になると想定される箇所や注意点などを伝えておくのです。
若手自身も、難しい箇所へのアプローチを前もって考えながら行動ができます。
自分の仕事が、他の仕事へどのように影響していくのか理解してもらうことで、部下のモチベーションを上げることにつながります。
全体の流れを共有し、若手の業務によって助かっている人がいる、などプレッシャーをかけない程度でポジティブに伝えるようにしましょう。
特に新入社員の頃は、報連相などのタイミングが掴めず、誰に質問すればいいのか分からないまま、業務を進めてしまうことも考えられます。
声かけを上司からこまめに行いながら、気にかけていることを伝えていきましょう。
そうすることで、指導側としても早期ミスの発見や回避、若手側としても業務の進め方を学ぶことができ一石二鳥です。
また、一度ではなく何度も任せている仕事の意義や感謝を伝えていくことようにして、若手のモチベーションアップに働きかけましょう。
若手育成において、仕事を任せた後の対応も非常に重要となってきます。
今回は、「成長速度を早める」「離職率を下げる」という、それぞれの目的に合わせた具体的な方法を解説していきます。
戦力になってもらうためには、成長速度を早める必要があります。
そのために必ず、復習や改善の習慣を若手の内から身に付けておきましょう。
若手社員が自分流で振り返りを行っていても、本当に正しいのか、客観性に欠けてしまいます。
そこで、長く業務を担当している上司からの客観的意見と照らし合わせ、業務の本質を学ぶ体制を整えていくこともできるのです。
振り返る機会を意識的に設けることで、若手自身の成長速度を早め、仕事の進め方を確実に学ぶことにつながる、といえるでしょう。
業務に慣れ始めると、なんとなく作業のように業務を進めていきがちです。
そこで、やりがいを感じて若手の離職率を下げる目的で、新たな目標などを設定してもらうのも一つの手です。
どのようにキャリアアップしたいか、希望する業務や部署は何か、など若手が自社で成長する未来をイメージする方法は心理的な面でも有効といえるでしょう。
また、自分で考えたプランを上司と共有していくことは、人に伝えることで目標を達成しやすくなる「宣言効果」を発生させます。
若手社員も「上司に伝えたのだから、ここで辞めたくない」と諦めにくくなる心理効果が働き、若手の自社での活躍も期待できます。
若手育成に実際に成功した事例を、いくつかご紹介します。
画像出典元:公式HPより
検索サイトYahoo! JAPANなどの運営を行うヤフー株式会社では、社員が企業でのキャリアプランを形成していけるよう、様々な支援を行っています。
社員を「人財」と表現し、上司と部下が一対一で振り返りを行う「1on1ミーティング」の時間を設けているのです。
どうやったら部下の目標が達成できるのか、アプローチ法などを支援しながら進めていくことで、主体性を持った若手を育成することにつながっています。
画像出典元:公式HPより
東京都で製造業を営む株式会社井口一世は、中小企業庁が発表した「必要かつ効果的な人材マネジメント施策の選択」の事例集で取り上げられた企業です。
仕事をどう進めるか、という点に焦点を置きつつ、社員の主体性を促す人材育成を行っています。
その結果、業務上に必要な情報かどうかの取捨選択が行える人材を育成することに成功しました。
様々な業務をこなせる社員が育ち、長期休暇の取得によりプライベートも充実させられる環境を実現しています。
若手育成に焦りは禁物です。
また若手の成長を心から信じ、社員一人一人の個性を理解して育成していく必要があります。
最初が肝心ですので、具体的な指示と声かけなどを行いながら、若手が成長しやすくなる働きかけをしていきましょう。