晩年人手不足と言われている製造業ですが、社内ブランディングを行うことによって、採用、そして従業員やスタッフの定着度をより強めることが可能になります。本記事では、社内ブランディングが必要な理由、具体的な社内ブランディングの実施方法について解説します。
新たな商品が次々と生み出され、世の中にはモノが満ち溢れています。そんな中、消費者は「どこで誰から買うか」をどのように決めているのでしょうか。
三菱UFJリサーチ&コンサルティング社の「消費者・事業者間の円滑なコミュニケーション等に関する調査」によると、10年〜20年刻みで時代の流れに沿って消費者の価値観が変わっています。
出典:三菱UFJリサーチ&コンサルティング『消費者・事業者間の円滑なコミュニケーション等に関する調査』より
数ある商品の中から自社商品を選んでもらうためには、自社の価値を正しく伝え、消費者の共感を得る…つまり「ブランディング」が重要です。特にものづくりを担う製造業には欠かせません。
ブランディングの1つである「社内ブランディング」とは、自社の価値を紐解きコアバリューを磨き上げ、社員1人ひとりが理念実現を自分事化することが目的です。では、なぜ製造業で社内ブランディングが重要なのでしょうか。大きく分けて以下の3つの理由があります。
企業として中長期で安定した成長するためには「従業員の一体感」が欠かせません。
そこで重要になるのが「企業理念」です。多くの企業は「私たちはこうあるべきだ」という企業理念が掲げられています。会社や組織は何のために存在するのか、どんな目的で経営するのか…それぞれの想いが理念に込められています。
従業員の目的がバラバラでは、重要な意思決定を行う場合に「何をもって判断するのか」が不明瞭になり、会社全体の方向性が見えなくなってしまいます。また、企業理念を浸透させ、ブランド理解を深めることで外部から人材を採用する際に「どういった人材を採用すべきか」が明確になり、持続的な成長が可能な強い組織を作り上げることができます。
企業理念が浸透しブランド理解が深まると、理念実現に向けてモチベーションが上がり、自ら行動する人材が増えることが期待できます。従業員は目標や理念実現に欠かせない人材であり、それを企業から従業員に対して発信することで日々の仕事にやりがいを感じてもらえます。
その結果、モチベーション高く仕事ができる環境に愛着を感じる人材が増え、長く働いて会社に貢献したいという想いが従業員に浸透。従業員の定着度を改善することができます。
理念や目的を体現する従業員が増えると、従業員を通じて取引先や顧客に「自社の想い・魅力」が伝わります。
そこから企業・サービスの評判が良くなり、従業員のモチベーションアップはもちろん、売上が上がったり、取引先からの信頼を得ることができます。
ここからは具体的な手順をご紹介します。製造業における社内ブランディングの進め方は以下のとおりです。
自社の現状を客観視するために、経営層だけで議論するのではなく実際に現場で働いている従業員にアンケートを実施しましょう。
【アンケート例】
自分たちの価値を棚卸しすることでブランドをより深く理解し、取り組むべきことを言語化するのが重要です。
実施したアンケートは必ず「数値化」するようにしましょう。
定性的な情報も重要ですが、社内ブランディングを成功させるためには、誰が見ても同じ判断ができる定量的な情報に落とし込むことが重要です。
アンケートで見つかった課題から具体的な施策を検討します。施策を検討する際も経営層だけで議論するのではなく、従業員が主体者となって取り組むことが重要です。あくまで従業員が主役となり、ブランド価値を高めるため「自社をどうすべきか」を考えることで自分事化され、自社を想う気持ちを醸成できます。
【施策例】
企業の核にもなる「企業理念」が曖昧では、顧客や取引先に対してどのような価値を提供していくか?が定まらず、ブランディングに着手することができません。
そこで社内ブランディングを始める前に知っておきたいのが以下3つです。
社内ブランディングにおいて最も重要なのが企業理念です。
理念とは「自社が何のために存在しているのか?」「何を目的に活動しているのか?」「自社の強みは何なのか?」を表しています。
過去、現在、未来にまたがり日々続けていくようなミッションがあり、その先の目指す未来を示すことで、会社全体の一体感が増します。
まずは理念を浸透させることが、社内ブランディングの第一歩と言えます。
理念が浸透したら、次は理念を「体現する」ための指標が必要です。
日々の業務や採用活動など、あらゆる場面で理念を体現するための指標となるのが「行動指針」です。
例えば、ディズニーランドの理念は「幸せを提供する」であり、これを体現するための行動指針が「安全性、礼儀正しさ、ショー、効率」です。
このように企業の理想である理念をメンバーが理解し、日々の行動で体現するための行動指針を掲げることで社内でのブランド理解が深まります。
最後に重要なのが「行動指針と自社製品を結びつける」ことです。
理念や行動指針が優れていても、それをサービスとして顧客や取引先に提供できなければ意味がありません。
一見、難しそうに思えますが、初めに着手しやすいのが「らしさ」をイメージできるパーソナルカラーを見つけてはいかがでしょうか。
パーソナルカラーによって視覚的に企業の「らしさ」を伝えることができ、ブランディングが上手く機能することで「その色を見ただけで自社を思い出す」という状況が作れます。
最後に社内ブランディングにおける注意点をご紹介します。
自社の持続的な成長には欠かせないからこそ、以下注意点を意識して取り組んでみてください。
社内ブランディングを成功させるためには数値化が重要です。
「本格的に取り組む前はどういった状態だったか、理念を深く理解し体現しようと努める従業員はどれくらいいるのか」などを感覚ではなく数字で把握しておきましょう。
例えば、事前アンケートで課題が見つかり、解決策を講じたとします。
この施策によって「何となく以前よりもブランド理解が深まっている気がする」ではなく、数字でどれくらいの変化があったのか把握するのが重要です。社内ブランディングには推進担当はもちろん、協力する従業員の時間や工数もかかっています。
経営層へ社内ブランディングの費用対効果を説明するためにも数値化は欠かせません。
社内ブランディングは数日で成果が出る取り組みではありません。少しずつ従業員の気持ちを醸成し、理念を体現できる組織へ変化させる必要があるため、どうしても効果が現れるまで時間が必要です。
全従業員が理念を理解し、ブランド価値を理解することが最終目標でもありますが、非常に難しいのが現実です。
社内ブランディングが進むにつれ、違う価値観をもつ従業員に「理解を強要」してしまうケースがありますが、多様性の時代(VUCAの時代)において逆行する行為です。
個人の価値観を尊重しつつ、時間をかけて企業理念・ブランド価値を理解してもらう意識で社内ブランディングに取り組みましょう。
社内ブランディングは採用はもちろん、従業員の定着度を図るためにも重要なことです。
本記事を参考に、より良い企業となるよう、データや数値に基づいたブランディングを行ってください。