近年、デジタルツールを利用して企業の改革を行うDXの推進が課題となっています。ですがDXには多大なコストや時間、ノウハウなどが必要とされるため、簡単には着手できないという組織も多いでしょう。そこでおすすめしたいのが、今回紹介する社内DXです。社内DXとは、日常の業務をデジタルツールで少しだけ便利にするような、本格的なDXと比較すると、小規模かつピンポイントに行うDXです。今回はそんな社内DXを行うメリットや具体的なアクションをご紹介します。
DXはデジタルトランスフォーメーションと読み、デジタル技術によって、組織の在り方や人びとの生活などを変革するための取り組みを指します。「IT化」「デジタル化」といった言葉と比べると、より大規模で抜本的な変革を表す言葉として多く使われています。現在、日本では企業のDXを推進しており、古くなった基幹システムの見直しや、IT人材の育成などを図ることによって、日本経済の底上げを目指しています。
小規模な問題を解決する社内DXはなぜ必要なのでしょうか。ここでは社内DXの果たす役割を解説します。
小さなところから着手できる社内DXは、本格的なDXを行うためのファーストステップになります。組織全体の在り方を変革するDXは、ゼロから始めるにはあまりにもハードルが高く、多くの費用や時間がかかります。そのため、まずは身近な業務改善の社内DXを始めることから、徐々に広い変革へと進めていきましょう。社内DXの推進自体が全社的なDXの進展につながり、社内にもDXへの理解が広がることでしょう。
社内DXは業務体制の改善にもつながります。ペーパーレス化やクラウドサービスの利用といった日常業務の利便性を上げることで、組織の生産性や業務効率が向上します。また、デジタルツールの利用を前提とした組織体制作りができるため、社員のデジタルツールへの理解と習熟を深めることができます。
社内DXを進めることは、テレワークをはじめとした働き方改革への対応ともなります。デジタルツールを利用した働き方は、コロナ禍によって強く推し出され、ビジネスの現場だけではなく人びとのライフスタイルをも変えつつあります。デジタルツールの利用が前提となっていく社会で、自社がそれを推進しないとなれば社員からの不満が生じかねません。また、コロナ禍のような未曽有の事態が発生した際に、柔軟に対応するための備えとしても、社内DXによる働き方の改善を行うべきといえるでしょう。
本格的なDXと比較すると、低コストで着手できる社内DXですが、それでも業務を一新することは簡単ではありません。社内DXを成功させるには、どのようなポイントに注意して進めていけばよいのでしょうか。
社内DXを成功させるためには、社内で大きな裁量権を持つ経営陣が、積極的にDXを推進する必要があります。小規模な社内DXといえども、貴重な費用や時間を使って取り組むことには変わりはありません。経営陣が中心となって社内DXの必要性や目標を共有しなければ、社員にもDXを推進する空気は生まれなくなってしまいます。デジタルツールを利用した業務改善や組織の発展に努める姿勢を提示することで、社員の理解を深め、部署横断的に社内DXを推進する機運を高めることができるでしょう。
社内DXを推進するには、デジタルツールに精通したDX人材の確保が重要です。変化の早いIT分野だからこそ、デジタルツールに関する知見に加えて、最新の情報を積極的に取り入れていく向上心を持った人材を確保したいところです。また、それらのツールを利用した経営戦略を立てられる人材も必要になります。デジタルツールの導入によって、自社の体制をどう変えていくべきか、社内DXを通じて会社にもたらされるメリットはどのようなものか、積極的にアピールして人材を育成しましょう。このようなDX人材を各部署に配置すれば、社内DXはより効率的に進展するでしょう。
社内DXを通じて社員が働きやすい環境をつくることも、さらなるDXの進展につながります。業務改善によって社内DXの恩恵を感じることができれば、より大規模なDX推進にも理解を示してもらいやすくなります。業務体制の変更もむやみに実行するのではなく、現場の声もくみ取ったうえで社員に恩恵のある業務改善を行いましょう。DXを行う際には、とにかく組織全体でビジョンを共有し、理解してもらうことが大切です。より多くの社員の理解を得て、より大規模なDXを推進する機運を高めていきましょう。
社内DXに着手する際には、具体的にどのような施策を行えばよいのでしょうか。ここでは、代表的な社内DXの内容をご紹介します。
DXの時代に求められるのは、なんといってもリモートワークができる環境です。具体的には、以下のような施策を行うとよいでしょう。
コロナ禍で急激に需要を伸ばしたビデオ会議は、今後もビジネスの現場に欠かせないツールとなるでしょう。場所にとらわれない柔軟なコミュニケーションや、情報伝達の速さも魅力です。離れた拠点との会議や遠隔での研修など、新しいワークスタイルに挑戦する際にも必要となります。リモートワークが推進されている今、社外の取引先とのやり取りにおいても、ビデオ会議を利用する機会は少なくありません。取引先に要求された際にすぐに対応するためにも、ビデオ会議ができる環境はぜひ整えておきましょう。
スムーズなコミュニケーションを行うためのチャットツールも、リモートワークに欠かせないツールといえるでしょう。従来のメールと比較して、形式的な文面を入力する必要がなく、社内でのやり取りにかかる時間も短縮できます。気軽なメッセージ感覚でやり取りができるため、社員間のコミュニケーションを促進してくれる役割も果たします。部署ごと、プロジェクトごとにチャンネルを作成できるツールを利用すれば、関係者全員でメッセージを共有できるため、よりスムーズなやり取りを行うことができるでしょう。
リモートワークをするうえで有効活用したいのが、各種のクラウドサービスです。どこからでも、デバイスに縛られず必要なデータにアクセスできるクラウドサービスは、近年ますますシェアを拡大しています。「書類の共有や捺印のためだけに出社する」といった余計な手間をかけない環境をつくるためには、クラウドサービスの利用は必須といえるでしょう。
社内DXで業務の効率化を行えば、生産性向上につながることはもちろん、社員のDXへの関心や理解にもつながります。ここでは、具体的な業務効率化の方法をご紹介します。
社内DXによる業務効率化でまず実行したいのが、ペーパーレス化です。リモートワークが進んで出社の機会が減る企業も多くなる中で、オフラインでのやり取りがメインとなる紙の書類を扱うことは、それだけで生産性の低下につながりかねません。書類の整理や検索、契約確認や捺印までをオンラインで完結することも可能なので、これまで行っていた余分な手間はデジタルツールを利用して積極的に削減していきましょう。
デジタルツールを用いた業務の自動化も、社内DXの生み出す大きな恩恵といえるでしょう。代表的なツールとしては、会社の経理業務を自動化してくれる会計ソフトや、ロボットを利用して単純作業を自動化するRPAツールなどが挙げられます。これらを導入することで、手作業で行っている単純作業の手間を減らしてコア業務に集中したり、不要な残業を減らして労働環境の改善を行ったりできるなどのメリットを享受できます。社員にとって、DXの恩恵を強く感じることのできる施策といえるでしょう。
今回は社内DXを行うメリットや具体的なアクションをご紹介しました。日常業務の改善をデジタルツールで行う社内DXは、自社の本格的なDXへの第一歩としてうってつけです。業務改善を通じて社員のDXへの理解と同調を促し、DXによる大規模な変革へとつなげていきましょう。