IT・テクノロジーの発達・普及が目覚ましい現代において、企業が生産性を高めて成長を続けていくためには、デジタル技術を経営に活かす「DX」の推進が必要不可欠であると言われています。経営企画としてDX推進を任されたけれども、どのような取り組みを行えばよいか分からない方もいるのではないでしょうか。
当記事では、経営企画がDXを推進する際の役割や具体的な取り組み方についてご紹介していきます。経営企画が参考にしたいDXの成功事例や、DX推進のポイントについてもご紹介していますので、ぜひ参考にしてみて下さい。
経営企画としてDX推進に従事するのであれば、企業における経営企画の本来の役割についてまず理解しておく必要があります。DX推進における経営企画の役回りを見いだすためにも、まずは経営企画とはどのような部署であるのかをおさらいしておきましょう。
経営企画の最も重要な役割は、トップ(社長)の意向を受けて経営戦略の立案や意思決定のサポートを行うことです。トップに代わって市場・顧客・競合・自社の情報を幅広く集め、自社の成長に繋がる経営戦略を練り上げ、トップに提言を行います。
作成した経営戦略についてトップの承諾を得たら、KGI・KPIといったビジネス指標を用いて具体的な目標・計画の作成を行い、実行に移せるレベルまで落とし込みます。計画が予定通りに進んでいるか確認するために、中間目標(マイルストン)の設定も行います。
経営企画は、実際に実行する経営戦略の進行管理も行います。設定した目標に向かって計画が予定通りに進んでいるのか確認を行い、必要があれば計画の修正・調整や問題の解決も行います。
経営企画としてこれからDXに取り組む方は、まずはDXの概念について正しく理解しておく必要があります。
DX(Digital Transformation:デジタルトランスフォーメーション)とは、広義ではデジタル技術を活用することで、生活をより良いものへと変革していくことを言います。
企業においては、デジタル技術を活用して企業価値・競争力を高め、より良い価値提供ができるように組織体制・ビジネスモデル・企業文化にまで変革を及ぼす取り組みと捉えることができます。
ここで重要となるポイントは、単にデジタル化・IT化を推進するだけではDXとは言えないという点です。デジタル技術の活用はあくまで手段にすぎず、新たな価値提供のための企業・組織を目指すことが本質である点に留意しておきましょう。
現代社会では、世界中でデジタル技術の発達により新たな商品・サービス・ビジネスモデルが次々と登場していますが、日本国内のデジタル化は主要先進国と比べて遅れているのが実情です。今後企業が生産性を高めて国際社会で競争力を発揮していくためにも、DXの推進が重要であるとされています。
日本は少子高齢化による労働人口減少の影響もあり、マンパワーでビジネスを推進できる時代ではなくなったことも、DX推進が注目されている大きな理由です。
また、日本国内では旧来より使われているレガシーシステム(古いシステム)が、2025年を境目にさまざまな問題を引き起こす「2025年の崖」が問題視されています。この「2025年の崖」のリスクを回避する効果的な対策として、DX推進による既存システムの見直しが重要とされています。
DXはデジタル技術の活用を行うことから、主にIT部門が推進を行うイメージを持たれがちです。しかし、DXは既存組織の変更や再構築も必要となるため、以下のように複数の部署が連携して全社的にDXの推進を行います。
特定部署にフォーカスするだけでは効果的な取り組みはできない点に留意しておきましょう。
企業がDXを推進する際には、当然ながら戦略・目標・計画を設定することから始まります。トップに代わってその役割を担うのが経営企画です。
DX推進プロジェクトの成否は経営企画が策定する戦略に掛かっているため、同部署はDX推進を主導していく非常に重要なポジションとなっています。
DXは複数部署が連携して取り組む必要があり、経営企画は全体をリードするポジションであることがわかりました。
ここでは、DX推進における経営企画の具体的な役割についてご紹介します。
企業の経営戦略立案を担うという本来の役割通り、経営企画はDX推進が決まったら戦略の立案を行い、経営者・経営陣に提言を行います。
社内の状況を収集して、自社の変革に繋がる効果的な戦略を導き出すことが重要です。トップの承諾を得たら、詳細な実行計画の作成へと進みます。
DXの推進には、施策の対象となる部署・導入を担当するIT部門など複数部署が連携する必要があります。経営陣への提言に承諾を得たら、経営企画は関連部署の取りまとめ・DX人材の配置・スケジューリングなど、DXをスムーズに推進できるように社内体制の構築・調整を行います。
準備が整ったらDXを推進していきます。経営企画が主体となって、計画通りに着実にプロジェクトを推進していきます。
問題発生時の解決や計画の軌道修正といった、プロジェクトをスムーズに進行させるための役割も担います。
予定していた計画が完了したら、DX推進プロジェクト全体の効果測定を行い、「目標が達成できているか」「成果に繋がっているか」を確認します。
効果測定の結果から反省点・改善点などを見いだし、今後のDX推進へと繋げていくのも経営企画の重要な仕事です。
このようにDXにおいても、ビジネスの推進と同じくPDCAサイクルを回しながらベストを探っていきます。
経営企画がDXを推進する際には、上記のステップを踏襲すると同時に、次にご紹介するポイントを押さえておくことが重要です。
DXプロジェクトの成功確度を高めるためにも、ぜひご参考下さい。
DXは企業力・組織力の向上に繋げることが本来の目的であるため、経営企画は戦略立案の際にも進行管理を行う際にも、全社的な取り組みを意識することがポイントです。組織・文化・風土の変革に繋がるように、特定の部署や業務ではなく、企業全体を見渡してDXを推進するようにしましょう。
DXの推進は難易度が高く、スムーズに効果的な施策を打てるケースはそう多くはありません。そこで重要となるのが、DX推進の成功事例を研究することです。
事例を研究することにより、成功パターンはそのままトレースしたり参考にしたりできますし、失敗事例はリスクヘッジに役立てることができます。
経営企画としてDX推進の効果的な施策を打ち出し、成功確度を高めるためにも、できるだけ多くの事例を研究しておくことをおすすめします。
DXについて理解を深めたいならば、概念・手法だけでなく実際の成功事例を参考にすることがおすすめです。ここでは、これからDX推進に携わる経営企画が知っておくべきDXの成功事例をご紹介します。
今やオンラインコンテンツプラットフォームのトップ企業として知られるNetflixは、大胆な変革を繰り返して急成長を遂げた世界的にも有名なDX成功事例です。
同社は元々は赤字続きで事業存続も危ぶまれるほどのビデオレンタルショップでした。そこから次のような3つのDXを行い成功を収めます。
Netflixは、時代の流れに合わせてビジネスを大胆に変化させ、ユーザーへの利便性の提供・負担軽減を行うことでシェアを獲得しています。
成果に繋がらないものを思い切って捨てて新しいものを取り入れるというスタンスは、これからDX推進に携わる方には参考になるのではないでしょうか。
ソニー損害保険は、近年発展が目覚ましいAI技術の活用により、自動車保険に新たな価値を負荷したサービスを提供しています。
同社がリリースした「GOOD DRIVE」は、AIにより運転特性データを判定・スコアリング。運転スコアに応じて保険料のキャッシュバックを行うという画期的なサービスです。
インセンティブにより事故リスクを低減すると同時に、事故が少ない社会の実現に貢献することを目指しています。
同業他社には無いアドバンテージを提供できる可能性があることも、DX推進のメリット。今後DX推進を任される経営企画の方は、戦略立案の際にぜひ留意しておきたいポイントです。
近年では社会情勢の変化・テクノロジーの発展といった要因により、事業寿命が短命化しつつあります。そのため、これからの時代の経営企画は、短期間に有効な経営戦略をスピーディーに立案していくことが求められます。
常に社会・経済・IT技術の動向にアンテナを張り、企業の成長に貢献できる打ち手を打てるようにしておくことや、変化を柔軟に受け入れて新しいことにチャレンジしていくことが、これからの経営企画には重要となるでしょう。
経営企画はDX推進において、プロジェクトをリードする重要なポジションであることをご紹介してきました。
DX推進の成否や進捗は、経営企画が策定する戦略ならびに進行管理が鍵を握っています。企業に好ましい変革をもたらすためにも、経営企画がDXに関する十分な知見を得ておくことは必須と言えるでしょう。
これからDX推進に取り組む経営企画の方は、ぜひ当記事も参考にして、最適なDX推進ができるように準備をしておきましょう。