製造業の海外進出についての現状・メリット・デメリット・今後の展望まで幅広く解説!

製造業の海外進出は1990年頃から増加し続けており、日本国内の経済の発展を支えてきました。

現在においても海外進出を意図する企業が多い傾向は続いていますが、その目的は旧来とは異なってきています。製造業の海外進出について、詳しく情報を集めたい方もいるのではないでしょうか。

当記事では、製造業の海外進出について、目的・必要性・現状から、メリット・デメリット、海外進出に伴う課題までを解説しています。

製造業の海外進出に興味のある方や、海外進出を検討している方は、ぜひ参考にしてみて下さい。

なぜ、今製造業が海外進出を検討すべきなのか?


近年では日本の製造業は海外進出の必要性・重要性が高まっていると言われており、多くの企業が海外進出を検討したり実際に実行に移したりしています。なぜ、国内ではなくわざわざ遠く離れた海外で事業を行うのか、その理由について解説します。

国内マーケットの縮小

日本国内の人口は減少傾向にあり、消費人口の減少から製造業の市場も縮小傾向にあります。今後も人口減少の流れはますます進行していくことが明らかです。

国内市場のみに留まっていては企業の成長・発展も期待できないことから、現状を打破する手段として海外進出による成長市場への参入が必要とされています。

少子高齢化による労働人口の減少


日本国内では少子高齢化の影響により労働人口は減少し続けており、多くの人員を必要とする製造業にも打撃を与えています。

製造業を行う企業が存続するためには労働力の確保が急務であり、そのための手段として安価に多くの人材を確保できる途上国・新興国を中心とした海外進出が検討されています。

新興国の成長

成長著しい新興国は、人口・経済規模の拡大や新たな産業の登場など、ビジネスチャンスに溢れており、近年では大企業だけでなく中小企業やベンチャー企業が次々に海外進出を果たしています。

海外でのシェア獲得

海外市場では、国内市場とは製品に対するニーズも大きく異なります。

これまでに無かった新たなシェアを獲得できる可能性があることから、製造業を行っている企業は事業を成長させるためにも海外進出を検討すべきと言われています。

製造業の海外進出の現状


海外進出について検討している製造業の方は、国内企業の海外進出・海外展開の現状を把握しておくことも重要です。

ここでは、拠点数・対象国・売上高という3つの視点から、製造業の海外進出の現状を解説します。

現地法人数

経済産業省が実施した海外事業調査によると、2019年度末時点での現地法人数は25,693社、うち製造業は11,199社と半数近くを占めている結果となっています。(出典:経済産業省「第50回海外事業活動基本調査」)多くの製造業が海外進出を行っているという実情が伺えます。

対象国


続いて同資料より現地法人の分布について見て行きます。製造業・非製造業を合算した2019年度末時点での地域別現地法人の分布は次の通りです。

■地域別現地法人分布

  • 北米:3,273社
  • 中国:7,639社
  • ASEAN10:7,312社
  • その他アジア:2,421社
  • 欧州:2,803社
  • その他:2,245社

現地法人全体における製造業の構成比は43.6%となっており、地域による偏りが生じる感は否めませんが、日本企業の海外進出の多くは中国をはじめとしたアジア・東南アジア諸国が対象となっていることがわかります。

売上高

同じく同資料によると、2019年度末時点での製造業の現地法人の売上高は121.6兆円、業種別の内訳は次の通りです。

■業種別売上高(製造業)

  • 輸送機械:62.7兆円
  • 情報通信機械:11.4兆円
  • 化学:9.1兆円
  • 電気機械:5.2兆円
  • 食料品:4.8兆円

近年では情報通信機械の比率も高まりつつありますが、輸送機械の比率が多くを占めています。

製造業が海外進出する際の進出形態


製造業が海外進出する際の進出形態には、次にご紹介する4つの方法があります。

自社の事情や対象国の状況に合わせて選択することが重要となるため、海外進出を検討している方はぜひ確認しておいて下さい。

駐在員事務所

駐在員事務所とは、現地での営業活動を行なわず、市場調査・情報収集・連絡業務等の機能を持つ拠点のことです。

手軽に設置できるのがメリットですが、営業活動は禁止されているため、主に現地視察や海外進出の準備として利用されます。

現地支店


日本国内と同一の法人にて、現地に支店を出す方法です。資本金が不要である点や本社からの送金をスムーズに行える点がメリットですが、本社への送金や決算が複雑になることがデメリットです。

国によっては現地支店が認められていない場合や営業活動に制限がかかる場合もあります。

現地法人(自社資本)

自社出資のみで完全子会社として現地法人を設立する方法です。

自由度の高い事業展開ができることや利益分配の必要がないことがメリットですが、投資額の大きさや対象国の事情に合わせた調整が必要となる点がデメリットとなります。
また、展開する事業内容や対象国の事情によっては100%外資の現地法人が認められないケースもあります。

現地法人(合併・共同出資)

対象国の企業との共同出資により現地法人を設立する方法です。合併相手が持つ販路・設備・ノウハウ等の現地リソースを活用できることや、コスト・リスクを低減できる事がメリットです。しかし、合併相手とのトラブル・紛争のリスクが伴うことや、国や事業内容により出資比率の制限を受けることがあるというデメリットも存在します。

いかに信頼できる現地パートナーを見つけるかが重要なポイントとなります。

製造業が海外進出するメリット


製造業の海外進出が積極的に行われている理由は、事業を展開するうえでの多くのメリットがあるためです。ここでは、製造業が海外進出することで得られる主なメリットについて解説します。

販路を拡大することができる

海外の市場も対象とすることによって、販路を拡大したり新たな販路を開拓したりすることができるのが、製造業が海外進出を行う最大のメリットです。

日本国内の市場は縮小傾向にあるため、今後の成長戦略・生存戦略として海外進出を検討する企業は多くあります。

生産コストを削減できる


発展途上国を対象とした海外進出では、人件費コスト・資材や材料のコスト・輸送コストなど生産コストを大幅に削減できることがメリットです。

現在でこそ海外市場を目的とした海外進出が増えつつありますが、かつてはコスト削減を目的とした海外進出が多くを占めていました。

生産コスト削減のための海外進出は現代においても有効な打ち手であり、一定の割合の企業が実施に踏み切っています。

新たなニーズの発掘が期待できる

日本国内においては主力ではない製品やマイナーな製品も、発展途上国や成長国であれば高いニーズがあるケースは多くあります。

自社で埋もれていた商品を主力化したりシェアを獲得したりできることも、製造業が海外進出を行うメリットのひとつです。

製造業が海外進出するデメリット


製造業の海外進出はメリットが多く注目を集めていますが、デメリットもあります。リスクを見積もるためにも、デメリット面についても事前に把握しておきましょう。

準備にコスト・時間・労力を要する

製造業が海外進出を行うにあたっては、市場調査・現地事情の調査・拠点の設置・人材の確保など、準備に多大なコスト・時間・労力が必要です。

そのため、経営資源を大きく削られることは覚悟しておく必要があります。また、ある程度体力のある企業でないと実施できないこともデメリットとなります。

為替変動の影響を受ける


海外で事業展開を行う際には、良くも悪くも為替変動の影響を受けます。

レートの変動によっては利益を得たりコストを削減できたりする場合もありますが、反対に損失を被ってしまう場合もあるため注意が必要です。

相場変動に常に注意を払わなければならない点や、事業運営・資金計画に不確実性をもたらす点は、海外進出に伴う不可避なデメリットとなります。

事業が現地事情の影響を受ける

海外進出を行う際には、対象国の市場だけでなく文化・慣習・法律といったさまざまな影響を受けます。

日本とは大きく異なる環境で事業を行わなければならず、さまざまな困難や障壁が伴う事がデメリットです。

海外進出を推進するのであれば、現地事情を受け入れて適応する意外に方法はありません。

製造業が海外進出する際の課題


製造業が海外進出する際には、次にご紹介するような課題が伴います。

日本国内で事業を展開するのとは大きく事情が異なるため、海外進出を検討している方は留意しておきましょう。

人材の採用・育成・管理

製造業の海外進出においては、生産コストの採算を合わせるために現地での労働力確保を行うことが一般的です。

現地の人材は日本とは考え方や仕事に対する姿勢も大きく異なるため、人材の採用・育成・管理をスムーズに行う方法を模索する必要があります。

労働力の確保をクリアしなければ海外事業展開を成功させることはできないため、製造業が海外進出をする際には必ず乗り越えなければならない課題となります。

言語の壁


海外で事業を展開するには、商談・顧客対応・現地人材の採用・人材育成・その他調整など、現地の言葉を用いてのコミュニケーションが必要です。

しかも、日常会話レベルではなく専門的なやり取りを行うための高度な言語スキルが求められます。

コミュニケーションを円滑に行わないと海外事業展開の進捗にも影響が出るため、高度なコミュニケーションが取れる人材を確保するなど、言語の壁を乗り越えるための対策が必要となります。

法律・文化・慣習の違い

海外は商習慣・法律・文化・慣習などが日本とは大きく異なりますが、不要なリスクを避けて事業を推進するためには、対象国の情報を幅広く入手して現地事情に適応する必要があります。日本の成功事例をそのまま持ち込むのは、海外進出に躓く大きな要因となります。

情報収集・各方面の調整には多大なコスト・時間・労力を要しますが、海外進出を成功させるには乗り越えなければならない課題です。

まとめ


製造業の海外進出についてお伝えしてきました。製造業の事業展開において、国内だけでなく海外まで視野に入れると、販路開拓・販路拡大・コスト削減などさまざまな打ち手を見いだすことができます。

国内での事業展開に行き詰まりを感じている、新たなビジネスチャンスを探しているといった製造業の方は、この機会に海外進出も視野に入れてみてはいかがでしょうか。

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