近年では国内市場の縮小・経済のグローバル化・新技術の登場などさまざまな要因により、製造業を取り巻く環境は急激な変化を見せています。
このような状況下で製造業系の企業が成長・存続するためには、新規事業に積極的に取り組んでいく姿勢が重要です。
当記事では、製造業の新規事業立ち上げが重要である理由、新規事業の事例、事例研究を行うメリット、新規事業立ち上げのステップについてご紹介しています。
新規事業立ち上げを検討している製造業の方や、参考になる事例や情報をお探しの方は、ぜひ参考にしてみて下さい。
製造業系の企業は新規事業に取り組むことが重要であると冒頭でご紹介しました。
ここでは、一歩踏み込んで、新規事業立ち上げが必要となる具体的な理由を解説します。
現代は市場縮小・労働人口減少といった要因により、既存事業だけに頼っていてはいずれ衰退・撤退してしまう可能性があります。
新たな収益源の確保・リスク分散を行い、企業が成長・発展していくためにも、新規事業を立ち上げることが重要とされています。
現代社会は変化の激しい時代です。
社会・産業の構造の変化に伴い、製造業に求められるニーズも時代と共に変化しています。
既存のニーズだけでなく、新たなニーズを掴み取るためにも、新規事業の立ち上げてビジネスチャンスを発掘する必要があります。
新規事業立ち上げは、集めるべき情報や検討すべき事項が多く、非常に煩雑な作業です。
ここでは、的確かつスムーズに新規事業立ち上げを進めるための推奨ステップをご紹介します。
製造業においては、どのようなアイデアでもカタチにできるわけではありません。
そのため、新規事業のアイデア出しを行う前に、自社の既存事業・リソース・対応可能な事業・強み・弱みなどを洗い出し、また新規事業を立ち上げる目的・ゴールを明確化する作業を行っておきます。
アイデア出しを行う準備が整ったら、その内容に基づき新規事業のアイデア出しを行います。まずはできるだけたくさんのアイデアを集めることが重要であるため、ある程度アバウトに数を集めることを意識してアイデア出しを行います。
集めたアイデアについてディスカッションを行い、採用するアイデアを決定して詳細を突き詰めていきます。
アイデア出しに適したビジネスフレームワークを活用すると、アイデアの収集・育成・管理をスムーズに行うことができるためおすすめです。
新規事業のアイデアが固まったら、事業化するためにビジネスモデルの設計・戦略の立案を行います。
目的・ゴール・事業領域・コンセプト・提供価値・対象顧客・販売方法・必要な経営資源などを突き詰めて行きます。
ビジネスモデル・事業戦略が固まったら、実際に事業立ち上げを行うための事業計画の作成を行います。
事業を実行する人員・割り振り・実行する内容・スケジュール・期限・進捗管理の方法など、新規事業を着実に推進できるように詳細な計画を作成するのがポイントです。
ビジネスモデル・事業計画が仕上がったら、社内の体制を整えて事業立ち上げを実行に移します。
計画に従い、着実に新規事業立ち上げを遂行していきます。
立ち上げた新規事業がある程度の段階まで進んだら、当初の目的に近付いているか検証を行い、必要に応じて改善を加えながら推進していきます。
新規事業の立ち上げを検討している製造業の方は、他社の新規事業の事例を研究することがおすすめです。
ここでは、新規事業研究により得られる主なメリットについて解説します。
事例研究を行う最大のメリットは、自社の新規事業にアイデアやヒントを発見できることです。
新規事業立ち上げにおいて最も重要となるのは、事業の種となるアイデアです。
アイデアは何もないところから生み出すイメージがありますが、実際には既存の情報の組み合わせから生まれるケースが大多数です。
新規事業の事例には、アイデア創出に繋がる情報が多く含まれており、事例研究をたくさん行うことで、上質なアイデアを創出できる可能性を高めることができます。
新規事業の事例には、取り組みを行った企業のさまざまなナレッジ・ノウハウが盛り込まれています。
たくさんの事例を研究することで、これらのエッセンスを吸収して自社の新規事業の立ち上げ・推進に役立てることができます。
新規事業の立ち上げは難易度が高くリスクが伴います。製造業においても立ち上げを試みる企業は多くありますが、全ての企業が成功しているわけではありません。
新規事例の成功させた企業の事例には、製品の特徴・販売手法・競合との差別化・ニーズの見いだし方など、成功に繋がったさまざまなポイントやコツが詰まっています。
これらを数多く研究して自社の新規事業に取り入れることで、立ち上げの成功確度を高めることができるのがメリットです。
新規事業の事例を研究する際には、成功事例だけでなく失敗事例も研究することで、自社の新規事業立ち上げの失敗リスクを低減することもできます。
新規事業の立ち上げは難易度が高く、失敗する要因は一つでも多く取り除いておくことが得策です。
失敗事例は成功事例と比べて公開されている数が大幅に少ない傾向にありますが、リスクヘッジのためにも事例研究を行っておくことをおすすめします。
製造業の新規事例を参考にしたいけれども、どの事例を参考にすれば良いか分からない方もいるのではないでしょうか。ここでは、おすすめの成功事例を業界別にご紹介しています。
シーラック株式会社は、静岡県焼津市に拠点を構える水産加工メーカー。
同市で水揚げされる新鮮な鰹を使った鰹節を中心に、製造から販売までワンストップで対応しています。
同社は贈答品事業に重きを置いていましたが、近年の消費の低迷を課題に感じたことから、自社の強みをアピールした新商品「バリ勝男クン」を開発。
同商品は、スナック菓子としてもおつまみとしても食べられる鰹節を生姜醤油で味付けした鰹節チップスとなっており、幅広い年代をターゲットとしたことから順調に売上を伸ばすことに成功しました。
静岡県内でTVCMを放送したことをキッカケに知名度も一気に高まり、大ヒットを記録することとなりました。
KARENは、物件選びのミスマッチやインテリアコーディネートの失敗を回避するためのサービスとして、同名の3Dインテリアコーディネートサービス「KAREN」をリリース。
同サービスは、厳しい基準で選ばれたプロのインテリアコーディネーターが、依頼者が提供する写真や間取り図を活用して3D画像イメージによるインテリアコーディネートを提案するという画期的なサービスです。
依頼者は、自身で家具の配置を考える手間や労力を省き、3Dイメージによるシミュレーションを行うことで失敗を避けることができます。気に入った家具があれば、特別価格で購入を行うことも可能です。
現在は資本業務提携を受けサービス名・社名を「COSIC(コシック)」へと変更を行い、さらなるサービスの拡大に取り組んでいます。
高度成長期には革新性で有名であった大手電気機器製造業K社は、既存の方法・手法での新規商品開発に行き詰まりを感じていました。
そこで新たな新規事業開発方法として、自社の顧客との共創による新規事業開発を実施。
共創プロジェクトを立ち上げ、コミュニティの構築・運営・トレーニングの提供など徹底した支援を行い、約半年間に渡り新規商品の創出に取り組みました。
共創により創出された新規商品は実現性を評価され、事業化に向けた投資の獲得に成功。運営していたコミュニティによりさまざまな協力者・情報・提案も集まり、当初の目的である新たな新規事業の創出へと繋げることができました。
北陸テクノ株式会社は、産業用の溶解炉・熱処理炉・焼却炉といった炉製品の開発・製造を行う企業。射水市・JAいみず野・富山県立大学との産学官連携により新製品の開発・製品化を実現しました。
同社が開発したのは、産業廃棄物であるもみ殻を低コストで完全リサイクルできる「もみ殻焼却炉」。単にもみ殻を処理するだけでなく、高度な熱処理コントロールにより、有害物質を排出せずにもみ殻シリカ灰を製造できる画期的な製品です。
現在ではもみ殻焼却炉の製造・販売だけでなく、もみ殻シリカ灰を利用した肥料開発・コンクリート製品の開発にも取り組み、製品化に向けた取り組みを行っています。
高橋土建株式会社は、従来の工法で道路側溝改修工事を行うと、交通規制の期間が長引くことによるクレームの発生や資材の無駄が生じることに課題を感じ、独自の工法「ネプラス工法」を開発しました。
同工法は道路側溝を横方向に切断して、上部の痛んだ部分だけを取り換えるというもの。専門企業とも連携してカッティングマシンと資材の開発を行い、工期短縮・工数削減・廃材抑制を実現する工法を確立させました。
現在では、同社は自治体の支援機関の認定制度に賛同して認定事業を設立。ネプラス工法の普及・発展による社会貢献に取り組んでいます。
製造業の新規事業の事例や事例を参考にするメリット、新規立ち上げのステップをご紹介してきました。
現代は製造業を取り巻く環境はめまぐるしく変化しており、既存事業だけでは収益面・事業継続性において不安が残ります。このような時代であるからこそ、自社の将来の収益に繋がる新規事業を立ち上げることが重要となってきています。
たくさんの事例を研究することで、自社の新規事業立ち上げに役立つ多くの情報・エッセンスを獲得することができるため、ぜひこの機会に新規事業の事例研究に取り組んでみて下さい。