2015年5月に「中国共産党の国家戦略計画と産業政策」として中国政府が掲げた、「中国製造2025」。
中国製造2025では、 5大重点事業・重点10分野・9つの戦略目標を提唱し、3つの段階を踏んだ実現を図っています。
中国製造2025によって、中国とアメリカ、日本との関わりはどう変化するのでしょうか。今回は中国製造2025について解説し、更に中国と他国とのかかわりについて説明します。
まず「中国製造2025」について説明し、次に「中国製造2025」にて提唱されている5大重点事業・重点10分野・9つの戦略目標について解説します。
中国製造2025とは、Made in China 2025といわれるもので、2015年5月に中国政府より発行された「中国共産党の国家戦略計画と産業政策」です。
発行の目的は、中国における製造業を更に発展させる事です。
中国製造2025では、2015に「製造大国」の地位の確立を遂げた中国の更なる国家戦略として、中華人民共和国の建国100周年である2049年までに「製造強国」の上位に参入するという戦略を打ち立てています。
ものづくりの製造業において、製造大国としては質<量であった考え方を、これからは製造強国として質>量へと転換し、製造業を高度化するといった見方ができます。
上記のように中国が製造強国へ参入する為、中国製造2025は、2025年までに中国が世界の製造強国に参入することを目指すために、中国がどのような分野に重点を置いて成長していくかを提唱している、バイブルのようなものになっています。
それでは、中国製造2025はどのような内容が記載されているのでしょうか。
中国製造2025では、イノベーション駆動、品質優先、グリーン発展、構造最適化、人材本位という5つの基本方針の基、国家戦略のための5つの重点事業・10の重点分野・9つの戦略目標を掲げています。
中国製造2025では、提唱した国家戦略の目標を達成すべく取り組みとして、以下の5つの事業をプロジェクトとして掲げています。
2025までに、40か所の国家製造業イノベーションセンターの拠点を設立させることをはじめとして、国民経済や国防の安全の核心としてハイエンド設備をイノベーションすることを掲げています。現に、2018年に開催された国連気候変動会議の関連会議でもグリーン製造を積極的に実施することを報告しており、環境問題への積極的な動きが始まっています。
中国製造2025では、国家戦略を達成すべく、9つの重要となる戦略を掲げています。
環境問題を視野に入れつつ、あらゆる情報とものづくりを融合させた戦略を打ち出すことで製造業をより高度化させるべく、構造から見直すといった戦略が見受けられます。
先述の9つの戦略目標、7個目に記載の「10大重点分野」について、中国は製造業を強化させるべく、重点となる産業を以下の10項目に分類しています。
加えて、以下の10分野の産業をさらに細分化したものが、重点23分野といわれるもので、10産業それぞれに更に詳細な分野を提唱しています。
例えば次世代情報通信技術では、IC・専用設備、情報通信設備、OS・産業用ソフト、スマート製造のコアとなる情報設備を分野としています。
次に、中国製造2025に関連する中国と他国との関わりについて説明します。
中国製造2025では、重大10分野のそれぞれの産業業界において、世界シェアを70%以上にすることを目指します。
そこで中国対アメリカと対日本に視点を置き、双方の国における影響や連携について、以下に説明します。
米中の貿易摩擦により、現在の米中関係は減速している傾向にあると言えます。結果として、中国製造2025で中国が提唱した国家戦略と目標の実現にも影響があると言えます。
具体的には、重大10分野にもある、半導体の世界市場規模の拡大に苦戦していると考えられます。米国の半導体市場調査会社・IC Insightsによると、2016年の半導体売上TOP20社での上位10位に、中国企業はなく米国企業が4社を占めています。
半導体産業においては、ランキングの上位にいる米国や韓国などの主要各国に、中国企業が参入することを恐れていることがわかります。更に、米国が中国の通信機器大手メーカーであるHuawei社とZTE 社に、制裁措置をとったことも記憶に新しい方も多いのではないでしょうか。
日本企業と中国企業との今後の連携はどのように変化するでしょうか。
中国製造2025では、先述の通り、製造大国から製造強国へと変化すべく、環境問題への意識や情報化を行うことで質を高めるための国家戦略を掲げていました。
そこで、日本企業と中国企業との連携として、中国の企業が保有していない先端技術や材料、発明などを共有することになります。
9つの戦略目標にもあったように、中国は、新たなアイディアや技術により、製造業のイノベーション力を向上させることや品質・ブランド力を上げることが今後の製造業の中で重要となってきます。そのため、先進国として技術やスキルのもつ日本の企業は、大企業だけでなく中小企業や新興国も中国と連携を持つ機会は可能性としては十分にあると言えます。
最後に、中国製造2025の3つの段階を解説し、中国の製造業の今後の展望について解説します。
中国製造2025には、以下の3つの段階が提唱されています。
第1段階 2025年まで:世界の製造強国の初等へ参入。
第2段階 2035年まで:世界の製造強国の中等へ到達。
第3段階 2049年まで:世界の製造強国の高等へ到達。世界の製造強国を牽引する存在へとなる。
まずは世界の製造強国に参入し、最終的には製造強国のトップの地位になる事を目標として掲げています。まずは、近い目標である2025年の目標である世界の製造強国の初等へ参入ことに向けて、どのような動きがあるでしょうか。
先述の通り、量より質に注力するという目標を視野に入れると、現在の中国企業にはないような技術を取り入れてビジネスの視野を広げ、製造業をデジタル化していく可能性が高いと言えます。更にはM&A(企業の合併買収)なども今後進んでいくでしょう。
中国製造2025の実現には、5大重点事業・重点10分野・9つの戦略目標が大本にあることが分かりました。
今後は、中国製造2025を実現するための3つの段階の各段階においての中国の動き、まずは第1段階である2025年に注目です。
10つの重点分野に該当している日本企業は、中国での市場開拓を候補として視野に入れてみてはいかがでしょうか?