事業ポートフォリオとは?作り方や活用方法を説明!

経済資源の最適分配を行うことが目的の事業ポートフォリオ。

事業ポートフォリオを作成することにより、広い視野で自社の市場価値や強みを把握することができます。

今回は、事業ポートフォリオの概要や目的を始めとして、PPM、事業ドメイン、コアコンピタンスの3つに焦点を当てた事業ポートフォリオの作り方や分析方法を説明します。

事業ポートフォリオとは


まずは、事業ポートフォリオの概要と活用場面について説明します。

事業ポートフォリオの意味、作成の目的

「ポートフォリオ」とは、戦力となる情報(自身の実績や秀でたスキルなど)を記載した作品集という意味を持ちます。

ポートフォリオの前に”事業”をつけた「事業ポートフォリオ」とは、一言でいえば自社の展開する事業や製品を一覧化したものです。

事業ポートフォリオを作成する目的の1つは、経済資源の最適分配を行うことです。

企業において、人員や環境設備などのリソースがどのように配分されているかを正確に把握する必要があります。その配分された状態を事業ポートフォリオの分析によって明確化します。

事業ポートフォリオを作成するにあたり、自社の事業や製品がどのような市場価値を持つか、自社の強みとなる技術をどのような場面で活かせているかなどを分析、把握し、今後の事業展開方針やビジネス戦略を打ち立てていきます。

事業ポートフォリオの活用場面

事業ポートフォリオの活用場面例として、M&A(合併と買収の頭文字で、企業の合併買収の事)があります。

事業強化などの理由で企業が組織再編などを行うとき、事業ポートフォリオによって自社や競合他社などを分析することができるため、自社の環境を把握することができます。

事業ポートフォリオの作り方


次に事業ポートフォリオの作り方について、PPM、事業ドメイン、コアコンピタンスの3つの考え方に分けて、それぞれの概要と作成方法を説明します。

PPMとは

PPMとは、プロダクト・ポートフォリオ・マネジメントのそれぞれの英単語の頭文字をとった、事業の経営戦略フレームワークです。

企業内で展開されている製品や「事業の位置づけ」を分析し、広い視野で企業を捉えます。PPMは、それぞれの製品や事業の、市場におけるシェア率や成長率を明らかにし、最適な経営資源配分を判断するために用いられます。

PPMでは、先述の「事業の位置づけ」を大きく4分類に分けます。その分類は以下の通りです。

  1. 問題児:多くの事業のスタート地点。市場シェアは低いが、成長率が高く将来の成長を見据えて育成すべき段階。
  2. 花形:収益化ができていて、将来性もあるため継続すべき段階。
  3. 金のなる木:収益化はできているが、将来性がなく事業や製品自体に限界が見えてきているため、対策が必要な段階。
  4. 負け犬:収益も低く将来性もないため、市場から撤退すべき段階。

PPMの作り方

まずは、PPMにおける2本の軸の1つである市場成長率を以下の式で求めます。

市場成長率 = 今年度の市場規模 ÷ 前年度の市場規模

財務省の研究所である財務総合政策研究所や、経済産業省の工業統計調査、矢野経済研究所などから市場規模のデータを入手して、市場規模を求めます。
次に、もう一つのPPMの軸である相対的な市場シェアを以下の式で求めます。

市場シェア = 自社の事業や製品のシェア ÷ 他社のトップのシェア

上記2つを求めた後は、先述の4つの分類の表に、求めたいそれぞれの事業や製品をプロットして、円を描き分析をします。

事業ドメインとは


事業ドメインとは企業が主に活動している事業領域や、自社特有の活動領域を指す言葉です。自社がどの領域(事業ドメイン)で活動すべきかを設定することで、事業や製品の領域を明らかにし、市場のターゲットを明確化して投資対象を定めやすくします。

今回は、事業ドメインを設定する際に使用するCFTフレームワークによる分析を説明します。

CFT分析とは

CFT分析とは、事業ドメインを設定するために用いるフレームワークであり、「顧客」「技術」「機能」の3つの軸を基にした分析手法です。それぞれの軸について、以下に説明します。

「顧客軸」:自社の事業や製品のターゲットとなる市場、顧客の対象を明確化します。
「技術軸」:自社の事業や製品の強みとなる技術に視点をおいて、事業展開を明確にします。
「機能軸」:自社の事業および製品が顧客に提供している、価値やパフォーマンスを明確にします。

これらの3つの軸により、自社の事業や製品の市場における位置を確認して展開方針を明確化していきます。

コアコンピタンスとは(400)

コアコンピタンスとは、他社にはまねできないような、自社が持つ「企業の中核(コア)」となる強みを指します。

自社の強みを明確化して他社との差別化するという点においては、先ほどの事業ドメインと通ずるところがある用語になります。

コアコンピタンスを見極めるには、まず自社の強みを洗い出し、強みを多様な視点から評価していきます。コアコンピタンスを明確化することにより、事業の新たな切り口となる事業の展開方法などを検討します。

コアコンピタンスを見極める5つのポイント

一般的にコアコンピタンスを見極めるためには、以下の5つの視点を基にします。

模倣可能性(Imitability):自社の事業や製品が他社に真似できないものであるか。
移動可能性(Transferability):自社の事業や製品に汎用性はないか。特定の分野のみで展開が可能な事業や製品になっておらず、様々な分野で展開ができるかどうか。
代替可能性(Substitutability):自社の事業や製品は唯一無二か。他の事業や製品で担保できるものではないかどうか。
希少性(Scarcity):技術や特性の観点で自社の事業や製品が高い市場価値を持つか。(希少価値)
耐久性(Durability):自社の事業や製品が市場において長く優位を維持できるか。

上記5つの視点を基に、コアコンピタンスを見極めていきます。

事業ポートフォリオを用いた戦略・マネジメント


次に、事業ポートフォリオを用いた、ビジネス戦略の基になる分析方法の例を説明します。

作成した事業ポートフォリオの分析

事業ポートフォリオの戦略やマネジメントについて、「事業ポートフォリオの作り方」で説明したPPM、事業ドメイン、コアコンピタンスに分けて説明します。

CFTの分析方法例

CFT分析では、「CFT分析とは」にて説明したように3つの軸に沿って自社の強みを明確化して、他社との差別化を図ります。

CFT分析により、3つの軸の中で事業範囲を掛け合わせて、自社特有の事業ドメインを設定することで、自社独自の強みを見つけるための分析ができます。

分析により、事業展開方針を確立して競争力を高めることにつなげていきます。

コアコンピタンスの分析方法例

見極めたコアコンピタンスの分析には、SWOT分析が有効です。SWOT分析とは、自社の強み(Strong)と弱み(Weakness)について、市場の機会(Opportunity)と脅威(Threat)の観点から整理をして、事業や製品の戦略を立てるための分析方法です。

コアコンピタンスを意識してSWOT分析をすることで、自社のSWOTを適切に整理および分析し、市場の再認識や新たな市場価値を見出せる可能性があります。

まとめ


企業においては、人員や環境設備などのリソースを適切に配分する必要があるため、「経済資源の最適分配」を把握する必要があります。その「経済資源の最適分配」は、事業ポートフォリオを作成することによって明確化できるのです。

ただし、市場環境や競争優位は常に変化するため、事業ポートフォリオを定期的に見直すことが必要になります。

事業ポートフォリオを活用して自社の市場価値や市場範囲などを把握し、マーケティング戦略に役立てましょう。

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