「スモールステップ」という言葉を聞いたことはあるものの、具体的な内容や仕事の中での活用方法がわからない、そんな悩みをお持ちではありませんか?
スモールステップは、より確実に目標を達成するための有効な手段であることはもちろん、うまく活用することでモチベーションを向上できるという心理的に良い影響を社員へもたらすテクニックです。
本記事では、スモールステップのメリットや実践方法を具体的に解説していきます。
スモールステップとは、大きすぎる目標を細分化して簡単に達成できる目標を設定し、設定した目標をクリアしていくことにより、最終目標の達成を目指す考え方です。
アメリカの心理学者、バラス・スキナーが提唱した「プログラム学習の5原理」の中の1つです。幼児期や思春期といった年代の教育現場で使われることも多いテクニックですが、現在ではビジネスシーンでも幅広く使われています。
スモールステップは達成することが難しく、長期にわたって取り組まなければいけない目標や数値と向き合う上では、特に有効なテクニックです。
ここからは、ビジネス上でスモールステップを活用するメリットを解説していきます。
スモールステップを活用することで、やるべきことが明確になり、課題に取り組みやすくなります。
終わりの見えない課題に取り組むよりも、小さくても明確な目標を設定した方がスタートしやすいためです。
必然的に段階を踏んでクリアしていくことになるので、一つ終わらせたら次の課題に進むというように、目標・進捗管理がしやすくなるという魅力もあります。
スモールステップを活用すると小さな成功体験を積み重ねることができるため、社員のモチベーションにつながります。
言い換えると、何度も達成感を感じることができるため、努力が結果に結びつかずに仕事への熱意を失ってしまうという事態を避けることができます。
業務のどこで問題が発生して行き詰ったかを容易に特定できるのはスモールステップを活用するメリットです。
大きく漠然とした目標に向かって課題をこなすのは、どこで問題が発生したかを確認するのも一苦労です。
業務内容を細かく分けることで、簡単に改善点を特定することができるようになります。
上司が部下への教育をしやすくなることもスモールステップを活用するメリットです。
業務を具体的、かつ細かいステップに分けることで、ポイントを絞った的確な教育が可能になります。
関連して、業務に対する部下の理解度をチェックしやすくなります。
スモールステップを実践する際の大まかな流れは以下の通りです。
スモールステップを設定する前に、まずはその元になる最終目標を設定します。
このとき、できる限り具体的な目標を設定することが大切です。例えば、営業が売上目標を設定するなら「〇年〇月までに年間売上〇〇円」、人事であれば「〇年〇月までに〇〇人採用」といった具体的な期間と数字で目標を設定しましょう。
最終目標を曖昧なままで設定してしまうと、スモールステップの目標も曖昧になり、本来の効果を発揮できない恐れがあります。
次に目標達成に必要な課題を細分化してスモールステップを設定します。
ここでも、明確かつシンプルに期間と数値を定め、目標を設定しましょう。例えば最終目標が「年間売上1000万円到達」の場合、「毎月売上84万円」で区切り、月毎に細分化します。
目標を月毎に細分化できたら、到達させるために必要な課題・タスクを洗い出します。
ここでもスモールステップを活用して、毎日のタスクや目標を到達させるために必要な課題・行動目標を定めます。
例えば2の売上目標の場合は「毎日リスト50件へ営業メールを送付する」「毎月の問い合わせ件数を最低でも10件獲得する」など、月毎の目標を到達させるために必要な、毎日の行動目標などを定めます。
設定したスモールステップと行動目標は、メモやタスクリストに書いて記録しておくことが必要です。ステップをクリアするたび、チェックを入れたりチーム内で共有したりするために便利です。
上記で設定した課題や行動、タスクを丁寧にこなしていきます。
次に、スモールステップを実践する際の注意点を紹介します。
モチベーションアップに役立つスモールステップですが、あまりにも無理な目標は返ってやる気を削ぐことに繋がりかねません。
心理的な抵抗を生まないためにも、”やや難しい”くらいの目標を設定することが重要です。
また、繰り返しになりますが、最終目標は明確に立てるようにします。スモールステップの利点は、社員の気持ちを前向きにして自発的な行動を促進する点にあります。漠然とした目標を立ててしまうと、社員は何から始めていいかわからず行動しづらくなってしまいます。
設定したスモールステップをこなす途中で、最終目標を見失ってしまわないよう注意が必要です。ステップを分ければ分けるほど業務は具体化されますが、その分本来の目標を見失いやすくなります。スモールステップに取り組んでいる過程で、自分が何のためのステップをこなしているのかを忘れずに業務に取り組みましょう。
最後に、スモールステップの具体例を2つ紹介します。
仕事の質自体は問題ないものの、要領が悪く、いつも残業している社員がいます。このように要領が悪い場合、自分自身のタスクが把握しきれておらず、その場その場で仕事をしてしまっているケースが考えられます。そこで以下のように目標を到達させていきます。
今回のケースのような場合、「メールを送るのは1時間以内」など、最低限必要なタスクと、そのタスクにかける目標時間までを記載しておくとより効果的です。時間制限を設けることで意識が変わり、効率良く仕事を進めることにも繋がります。
入社して2年目、なかなか営業成績が上がらない営業社員がいました。仕事自体にやる気はありそうなものの、中々成果に結びつきません。早速スモールステップを活用してみましょう。
このようにしてタスクも細分化されることによって、指導する側も部下のどこが弱いのか、逆にどのような点が強みなのかを把握しやすくなります。
スモールステップを実践する上で大切な点は、社員が取り組みやすいと思えるような目標を設定することです。
漠然とした目標を設定してしまうと、取り組みづらい課題が余計に増えることとなり、社員のモチベーションが下がることにつながりかねません。
社員が気持ち良く業務を進め、改善点もスムーズに発見できるようになれば、スモールステップの理想的な姿といえます。
スモールステップを有効に活用して、社内の業務効率化、および、士気の向上を実現しましょう。