ビジネスにおいて、問題解決や決断を迫られるケースは数えられません。
しかし、思考法を変えてみることで、瞬時に適正な判断を下すことができるようになります。
本記事ではそんな思考法として挙げられる、クリティカルシンキングとロジカルシンキングについてご紹介します。それぞれの特徴、具体例、両者の共通点や相違点について説明しているので、実践で身につけてみてはいかがでしょうか。
クリティカルシンキングとは当然と思われる前提条件、自身の思考の偏りや癖に疑いを持ったうえで、感情や主観に流されずに物事を判断する思考プロセスのことを言います。
日本語では”批判的思考”と訳されます。疑いを持つことがクリティカルシンキングの基本です。正しいと思い込んでいる無意識の思考を、論理的・構造的な思考方法により客観的に振り返ることで、より適正な意思決定・答えを導き出せるようになるのです。
上述した通り、クリティカルシンキングでは疑いを持つことが基本です。そのため、正しいと思われていることや、自身の思い込みを無くすことにつながり、客観的な考えや見方を持てるようになります。結果的に物事の本質を掴むことができ、適正な判断を下すことができるようになるのです。
資料作成やプレゼンにおいて、自分で作成はしたものの「今ひとつ物足りない…」といった経験のある方もいらっしゃるのではないでしょうか?このような事態もクリティカルシンキングで防ぐことができます。クリティカルシンキングでは目次項目、データなど全てのことに対して疑いをもって取り掛かります。
「このデータは必要なのか?」「このデータを挿入することによって伝えたいことは何か?」「この項目は何のために挿入しているのか?」など、「これで良いと思う」という主観的な視野ではなく、多角的視野を持つことにつながるのです。
以下の課題と仮説を基にした会議が行われています。この例を基にクリティカルシンキングの思考例を見てみましょう。
「課題」売上が低迷しているため、会社の利益が減少している。
「仮説」取り扱い製品ラインナップを充実させて、売上を増加させる必要がある。
クリティカルシンキングによる疑問とアクション
・そもそも利益減少の直接の原因は売上の低迷だろうか?コスト増加等、他にも利益減少の原因があるのではないだろうか?
→利益減少の原因を特定する
・仮に、売上低迷が利益減少の直接の原因であったとして、取り扱い製品ラインナップの充実が、売上増加につながるだろうか?逆に、製品ラインナップを絞り、価格を下げた方が売上増加につながるのではないか?
→製品ラインナップの充実と価格設定の変更によるインパクトを検証
・仮に、取り扱い製品ラインナップの充実が売上増加につながっても、売り上げの増加が会社の利益増加に貢献するだろうか?製品ラインナップの充実により、コストが増加し、利益を圧迫するのではないか?
→製品ラインナップの充実によるコストと利益の関係を把握する
ロジカルシンキングは物事を論理的に考える思考法のことを言います。
営業や商談、資料作成、プレゼン、上司からの質疑応答など、ビジネスシーンにおいては「相手が納得するか」どうかが鍵です。
ロジカルシンキングを身にけると、筋道をつけながら物事を考える/提示することになるため、相手を納得させやすくなります。また自身の思考がスッキリと整理できることはもちろん、問題の原因を特定して解決する際にも役立ちます。
ロジカルシンキングでは「〇〇がこのようになり、だからこちらは〇〇になった。よって〇〇。」のように、物事を筋道立てて、因果関係を踏まえて考えるようになるため、解決までのプロセスが早くなります。
論理的で、説得力のある主張ができるため、相手の行動を容易に促すことができます。また、話を聞くときにも、相手の意図を整理し、把握しやすくなるため、コミュニケーションが円滑化します。
質疑応答の際にて、「この答えだと結局、何が言いたいのかわからない」と「頭の中で言わなければいけないことなどがバラバラになっているため思いついたまま発言してしまう…」ということもありますよね。
田中角栄前首相の言葉に『まず結論だ。理由は3つに限定しろ。世の中、3つほどの理由を挙げれば、大方の説明はつく。』という言葉があります。田中角栄といえば、人の悩みや相談事を解決に導くプロでした。毎日50人を超える官僚や政治家から、ひっきりなしに相談事を受け、決断/助言をしていた彼の名言(相談は1人あたり10分程度だったそうです)は、物事をスピーディに、分かりやすく把握するためにも役立てることができます。
このように、最初に結論を言い、次に「どんなものか、何故そうなったのか」などの説明を加える形で話すことを意識すると論理的に分かりやすく説明することができるようになります。
ロジカルシンキングを身につけたい場合、いきなり頭の中で整理するのではなく、実際に文字や簡単な絵に落としてみると分かりやすくなります。
そこで用いるのがロジックツリーです。ロジカルシンキングは事象を整理して、筋道を立てる考え方です。今起きている物事を並べ、「なぜ?」「だから?」「結果的にどうなった?」と因果関係を文字や絵に落とし込むことでロジカルシンキングが身に付きやすくなります。
クリティカルシンキングは批判的思考、そしてロジカルシンキングは論理的思考です。
クリティカルシンキングでは、前述した前提条件の正しさ、無意識に正しいと思い込んでいる制約条件、見落としているポイントなどを、徹底的に疑い、批判的・客観的な視点で検証します。
一方、ロジカルシンキングでは、課題や問題を細分化あるいは積み上げて、情報を整理したり、主張の内容を論理的に組み立てます。
ロジカルシンキングでは物事を論理的に順序立てて物事を考えますが、その物事自体の正確性は問いません。逆にその物事自体の正しさを疑い、批判的に検証していくのがクリティカルシンキングと言えます。
ビジネスシーンにおいてクリティカルシンキング、ロジカルシンキングはどちらか一方が大事というわけでありません。どちらも大切な考え方であり、両者を身につけることによってその真価が発揮されます。
クリティカルシンキング、ロジカルシンキングは日本だけでなく、世界中のビジネスシーンで用いられている思考法です。身につけることによって、作業効率はもちろんのこと、営業能力や提案力を上げることにつながります。
またクリティカルシンキングやロジカルシンキングは資料作成、プレゼン、上司からの質疑応答など、どのようなシーンにおいても意識して鍛えることができます。実際に皆さんも”たった今”からこれらの思考法を試してみてはいかがでしょうか?