会社の事業において、必ずしもすべての業務を内製で済ませる必要はありません。外注するという選択肢もあります。
しかし外注をすれば、事業を進める体制が変わる上に、かかるコストも安くはない。内製にするか外注にするか、その判断は非常に難しいものです。
本記事では、内製と外注のメリット・デメリットを提示しつつ、どんな基準で比較し、決断すべきかを解説していきます。
自社で業務を遂行することで、その業務に関わる技術やノウハウが自社に蓄積していきます。発生した問題点や失敗は業務改善に活かしていくことができますし、その業務に取り組むこと自体が社員のスキルを伸ばすことにつながります。
内製の場合、関わる社員が既に自社の目指す姿や事業の内容について理解している場合が多く、事前のすり合わせに時間を要しない傾向があります。よって、スピード感をもって業務を開始できるのがメリットといえます。
もし外注を選択すれば、業務内容のすり合わせや契約などに一定の期間を使うことになります。業務開始までのスピード感を重視したい場合は内製をおすすめします。
情報の持ち出しや共有が多くなればなるほど、漏洩のリスクは高まります。社内で業務を完結させる内製では、自社の情報を社外に共有することが少なく、流出のリスクが低いといえます。
事業によってはスキルや専門知識が必要になる場合があります。しかし自社にスキルを持った人材がいるとは限りませんし、育成するのも簡単なことではありません。
特に、専門性の高い内容を一から学んでもらう場合は膨大な時間を要することもあります。もし時間の猶予がない場合には外注を選択したほうがよいでしょう。
内製の場合、担当の社員が十分な経験を有していないことも多く、業務が軌道に乗るまで時間がかかる可能性があります。
スピード感をもって業務を進めたいのなら、その分野のノウハウと経験を潤沢に保有する外注先を探すのが無難でしょう。
自社にないスキルやノウハウをすぐに活用できることが、外注を選択する最大のメリットといえます。
自社社員が十分に業務遂行できるようになるまで待つ必要がなく、外注先の豊富なノウハウをすぐに活用できるのは大きな魅力です。
自社社員が単純作業に追われていて、「コア業務」と呼ばれる企業経営の根幹をなす業務に着手できていない、という企業は少なくありません。
単純作業を外注することで、自社社員がより重要な会社のコアとなる業務に集中できるようになります。
内製するために自社社員を増やしていくと、人件費はもちろん、オフィスの賃料や経費などさまざまな費用がかさんでいきます。外注であればこれらのコストの発生を抑えられることもあります。
社員を雇うとその後継続的にコストが発生しますが、外注なら業務に必要な期間・人員を選択してコストを調整できるのも魅力です。
外注した業務に関しては、人材育成をする必要がありません。
あらゆる分野で専門家を育てるのは困難で、コストも多くかかります。
そのため、特定の分野を外注で補い、自社で人材を育成すべき分野を絞ることは結果的に自社での専門家の育成に良い影響を与えます。
自社に業務ノウハウが蓄積されないのは、外注する最大のデメリットといえるでしょう。外注を依頼する際は、業務範囲をよく考える必要があります。
外注する際には、当然ながらコストがかかります。内製にかかる人件費や設備費と比較して、コストに見合うメリットが得られるか考えることが重要です。
自社の戦略やビジョンが共有されていることは、事業の成功において必要不可欠です。
自社社員に比べて自社のビジョンが浸透しづらいのは外注を選択する際のデメリットです。外注を依頼したうえで自社の求める成果を出してもらうには、依頼前はもちろんのこと、業務開始後も最新の情報を共有し続ける必要があります。
内製に比べて品質管理に手間がかかるのも外注する際のデメリットです。外注先の品質については未知数であるため、自社で品質管理体制を整える必要があります。
品質管理体制を整備するのに必要なコストも加味しておくことが必要です。
自社の求める業務を求める条件でこなしてくれる外注先がすぐに見つかるとは限りません。この場合、外注のメリットである即効性が失われるため注意が必要です。
ここまで内製と外注のメリット・デメリットを解説しました。ここからは、内製か外注か判断するうえで意識すべきポイントを解説していきます。
内製か外注か決める際に、コストは重要な比較項目となるでしょう。コストで比較する場合には人件費以外にも環境整備や教育、コミュニケーションにかかる費用など総合的に考える必要があります。
なかには「内製するほうが外注するよりもコストを削減できる」と考えている方がいるかもしれませんが、前述したように、内製を行う際には人件費だけでなく、社員一人ひとりに必要な備品やオフィスを用意する環境整備費、社員規模に応じたスタッフ部門の稼働費など、さまざまなコストがかかります。
内製にかかるさまざまなコストを総合し、外注費とどちらがコストパフォーマンスに優れるか判断をしましょう。
長期的に外注を依頼しようと考えている場合、その業務に関するノウハウも長期間蓄積されないことを加味して判断する必要があります。
内製して自社社員に担当させれば、その分野を自社の強みとして成長させることも可能です。
検討中の分野のノウハウを蓄積したいか否かは要検討の事項といえるでしょう。
外注を検討している業務をどれほどの期間外注したいか、また、その業務の緊急性はどれほどのものなのかも要検討の事柄です。
緊急で依頼しなければならない業務の場合、即効性に優れる外注を余儀なくされる場合もあるでしょう。
加えて、どれほどの期間外注を依頼するかも検討する必要が出てきます。期間によって外注先を変えることも考慮に入れましょう。
緊急かつ短期間の依頼を考えているなら、クラウドソーシングを使ってフリーランスに外注することも一考の余地ありです。
フリーランスに関しては別項で解説します。
内製もしくは外注をすることで、自社社員がコア業務に集中できる状態になるのかどうかも大きな判断基準となります。
たとえば内製を選択したほうが金銭的コストが低い場合でも、社員にかかる負担が増大してコア業務に手が回らなくなった結果、利益の減少やコストの増大が発生する場合があります。
まずは社員の業務量を把握し、内製を選択してもオーバーワークにならないか、コアとなる業務を遂行できるかを判断してください。もしそれが難しいようであれば外注を選択して、自社社員の負担を減らす方が結果的に自社の利益につながるでしょう。
外注の手段として、大きく分けて企業に依頼する場合とフリーランスに依頼する場合の2つがあります。近年、フリーランスは増加傾向にあり、外注先としてフリーランスを選択する企業も増えてきています。ここでは、双方のメリット・デメリットを紹介します。
企業に外注する場合、一定のスキルが担保されているのが大きなメリットだといえます。企業内での研修や教育があるためスキルの高いメンバーが多く、専門企業であれば豊富な業務経験も期待できます。
企業に依頼する場合長期契約となることも多く、その分金銭的なコストが高くなる傾向があります。自社の状況と照らし合わせて、企業に外注するだけのメリットがあるのかよく検討する必要があります。
企業と契約する場合、多数の関係者との確認を必要とするケースが多く、契約して業務を開始するまでの期間がフリーランスと比較して長くなる傾向にあります。
クラウドソーシングを利用した公募も可能なフリーランスと異なり、条件に適した企業を探し出す必要もでてきます。最速で業務委託をしたい場合にはフリーランスへの依頼も検討しましょう。
ワーカーのスキルは個々人によって大きく異なります。そのため、プロフィールや実績を参照して要望に合ったスキルを持っているか判断する必要があります。
企業に依頼するとき以上に品質管理体制に注意すべきといえるでしょう。
自社の求める条件に合わせて、コストを大きく抑える選択をすることも可能です。
たとえば専門技術者ではなくマンパワーを確保したい場合には、経験の浅い初心者フリーランスを採用し、コストを抑えるという手もあります。ただし、その分業務説明やディレクションが必要になるので注意が必要です。
自社の求める人材像や業務内容を明確にすることでコストを抑えることができます。
フリーランスに依頼する場合は契約に関する自由度の高さも大きなメリットです。企業に依頼する場合はある程度長期間の契約を覚悟する必要がありますが、フリーランスの場合は一件単位での契約も可能です。
短期契約を希望する場合には、希望条件に合ったフリーランスを探してみるとよいでしょう。
フリーランスを探す際に便利なのがクラウドソーシングと呼ばれるサービスです。
クラウドソーシングを使えば、求める人材や条件を提示し、それに応募したフリーランスの中から条件に合いそうな人材を採用できるため、契約にかかる手間が少なくなります。
フリーランスの採用を考える場合は、一度クラウドソーシングをチェックしてみるとよいでしょう。
本記事では、外注・内製のメリット・デメリットおよび、どちらを選択すべきかの判断基準を紹介しました。
外注を選ぶか内製を選ぶか、すべての業務に共通する正解はありません。どちらが自社に適しているか、徹底的に比較し、入念な検討のうえで外注・内製の判断を行いましょう。