「プロセスマイニング」という言葉、耳にする機会は多いけれど詳細は知らない、導入する必要性が分からないという方もいるのではないでしょうか?
プロセスマイニングとは、RPAに続き、企業の業務効率化をサポートする重要な技術といわれています。今後、日本の企業にとって非常に重要な存在となるでしょう。
この記事では、プロセスマイニングが今注目を集める理由や、導入するメリット、導入にあたって気を付けたいポイントを解説します。
プロセスマイニングとは、業務プロセスを可視化・分析する手法のこと。
具体的には、従業員が行った作業をイベントログデータとして蓄積。それによって各従業員の業務プロセスを解析し、経験や知識の違いから生じる業務効率のばらつきを可視化、例外プロセス・ボトルネックの抽出ができるというものです。最も効率が良い業務手順を標準化すれば、会社全体の生産性が向上します。
2010年頃から売上や利益率アップ、業務の効率化を目的に欧州で広がり始めました。
プロセスマイニングを行うことで、ロボットにデスクワークの一部を任せて自動化するRPA(Robotic Process Automation)を最大限に活かすこともできます。
今後日本は、少子高齢化にともない労働人口がますます減少していくといわれています。
総務省の2020年労働力調査の結果によると、労働力人口は前年比で18万人減少したにもかかわらず、非労働力人口は前年比で7万人増加(65歳以上は15万人増加)しています。
画像出典元:総務省統計局「労働力調査(基本集計)2020年(令和2年)平均」より
画像出典元:総務省統計局「労働力調査(基本集計)2020年(令和2年)平均」より
人口に対する労働人口が減少しても、国としての経済生産力を落とすわけにはいきません。
そこで重要な考え方となっているのが、労働人口一人ひとりの生産性向上です。
労働者不足に対抗するには既存従業員の生産性向上が不可欠であり、その手段の一つとして業務の自動化を促進できるプロセスマイニングへの取り組みが非常に有効なのです。
プロセスマイニングの主な活用方法は、ボトルネックの発見とRPAの効果を最大化することです。
プロセスマイニングは、生産性が低い業務や価値を生まない無駄な業務を洗い出します。会社にとって不要な部分を発見・除去できれば、業務の効率化が進み、生産性が向上するでしょう。
また前述の通り、RPAの効果を最大化するのにもプロセスマイニングは非常に有効です。RPAは働き方改革や顧客ニーズの変化に対応するべく多くの企業が導入し始めています。ぜひ合わせて検討してみてください。
では、2つの活用方法を紹介します。
プロセスマイニングは、業務プロセスの生産性や収益性を妨げる要因やボトルネックを洗い出したいときにおすすめの手法です。
例えば業務負担バランスに課題があったとして、通常であれば一人ひとりへのヒアリングや専門的な分析が必要になるため時間や費用のコスト負担が多く、定量的に全貌を把握することは困難だと言われています。
しかしプロセスマイニングのツールを使用することにより、製品の受注から出荷までの従業員の行動を「イベントログデータ」として自動で収集し、全データを記録します。
全ての業務がデータ化され、ツールによって全パターンが可視化されるため容易にボトルネックを発見できます。
ボトルネックとなっている業務を除去または改善することで、業務効率化が実現可能です。
近年、生産性を高めるRPA導入が活発化しています。労働人口が減少していくなかで、従来の成果を生むためには、「ノンコア業務」というその業務自体で利益が生まれない業務を自動化し、従業員の負担を軽くするためにRPAを活用する企業もあります。
人手不足の企業にとってRPA導入は非常に有効です。
一方で、RPAを導入したものの十分に効果を発揮できず、業務プロセスの部分的な自動化で終わってしまった企業も多いのではないでしょうか。
プロセスマイニングを活用して自動化すべき業務を可視化することで、より有効にRPAを活用することができます。
プロセスマイニングを導入する主な利点は以下です。
では、2つの利点を解説します。
プロセスマイニング導入のメリットとして「生産性の向上」が挙げられます。
生産性向上とは、少ない投資資源で大きな成果を生むこと。プロセスマイニングを活用し無駄な業務や非効率な業務フローを可視化し、排除できれば、利益のアップやコスト削減が期待できます。
生産性を向上すれば、既存の従業員数・労働時間で従来以上の作業ができ、多くの成果を出すことが可能。取引する規模の拡大や契約数の増加にもつながるでしょう。激化する競争社会において、企業が競合に勝つには生産性向上への取り組みが非常に重要なのです。
またプロセスマイニングは、業務コンサルタントに依頼するよりも安価に生産性向上に取り組めるというメリットもあります。
業務コンサルタントに業務の可視化や分析、要件定義を依頼すると月100万円以上のコストがかかります。一方プロセスマイニングであれば数万~数十万円程度。大幅にコストを削減でき、人的ミスによる漏れのない業務の可視化ができます。
プロセスマイニング導入のメリットの二つ目に「働き方改革への貢献」が挙げられます。
生産年齢人口の減少を受け、先進国に比べて低い生産性の改善を目的として、取り組まれている働き方改革。プロセスマイニングの活用によって、働き方改革の促進が見込まれます。
具体的には、多くの企業では時間外労働の削減が叫ばれるほか、人生100年時代ともいわれる通り高齢者雇用の促進も課題となっています。
プロセスマイニングを活用すれば、これまでに説明してきたとおり業務フローやボトルネックの可視化をすることが可能です。
無駄を排除し、効率化に向けた施策を打つことで時間外労働の削減を実現。
また、切り出せる業務を見つけることで業務委託契約など、高齢者のジョブ型雇用を促進することができます。
RPAなどの業務自動化ツールの導入相場は決して安くなく、業務の可視化を自動で行うプロセスマイニングも例外ではありません。
そのため、投資対効果を高める必要があります。
プロセスマイニング導入の際に気をつける点は大きく分けて以下の2つです。
では、2つのポイントを紹介します。
プロセスマイニングは中長期的に計画することが重要です。何年もかけて継承してきた会社の業務システムを見直すのは簡単なことではありません。
短期的な目標を設定すると、プロセスマイニングにかかるコストが高く感じるだけでなく、改善できる業務も限られ、期待する効果が得られない可能性があります。
プロセスマイニングの導入や業務改善において、長期的な計画と目標を設定することは、プロジェクトを成功へと導く大きなポイントといえます。
もし期待通りの効果が出るか不安な場合は、専門家に目的設定を依頼することも1つの対策です。
「始めるからには会社の業務をすべて可視化したい」と思うかもしれませんが、小さく始めることをおすすめします。
いきなりすべてを可視化しようとすると、多大なコストがかかり、経営を圧迫するおそれがあります。
とくに中小企業など予算が限られている場合は、身近な業務から少しずつ可視化していき、効果を実感したら会社全体に広げていくのが良いでしょう。
失敗するリスクを軽減することができます。
この記事では、プロセスマイニングが注目を集める理由や導入するメリット、導入にあたって気を付けたいポイントを解説しました。
労働人口が減少し働き方改革が叫ばれる今、企業にとって業務の効率化・自動化は重要性を増しています。
まずは、現状の業務フローを把握するところから。業務を可視化し、ボトルネックの発見が可能なプロセスマイニングを導入してみてはいかがでしょうか。