営業商談前の下準備!財務諸表を活用して顧客のニーズに合った提案を

営業部長に昇進したものの、財務諸表の見方や、どう活用すればいいかわからないという方は多いのではないでしょうか。

特に財務関係は専門用語が多く、どのようなものか理解するのに時間がかかってしまいます。

そこで本記事では、営業時に役立つ財務諸表の見方について解説します。

財務諸表の見方を把握し、営業の成約率を高めましょう。

営業のために財務諸表を理解することが大切

目的も理解せずに営業をかけても、企業が顧客になる可能性は低く、時間の無駄になってしまうことが多いです。

事前に財務諸表をチェックしておけば、どういった営業をすればいいかが鮮明になります。

財務分析能力は営業に必須


財務は、企業の資金繰りや予算管理・資金調達に注目した分野です。

企業が資金を調達し、その資金を効率的に活用し、企業価値を高めていくことが財務の目的です。

財務を分析する能力があれば、その企業がどこから資金を調達し、どこに投資するのか、どのようなサービス・商品に比重を置いているのかなどの、企業戦略の分析ができます。

顧客企業が今どんな分野に興味を持っているかがわかれば、営業時に相手の興味を惹く分野での提案や話題を持っていけます。

営業では、相手に利益がある提案をしなければ、成約につながりません。

そのため、相手の利益になる情報をあらかじめ用意する必要があります。

事前に顧客企業の財務を確認し、今どのような状況で、今後どのような方向に進もうとしているかを理解することは、営業に必要な力です。

財務諸表とは?

財務諸表とは、決算までの1年間の企業の財政状態や経営成績をまとめた計算書です。

利害関係のある人に向けて明らかにする書類です。

財務諸表を読み解くことで、企業の収益、費用、利益などの現状を知ることができます。

経営者が好調な経営を続けているか、もしくは低調な経営状態かを判断できます。

日本の会計基準では、「損益計算書」「貸借対照表」「キャッシュフロー計算書」「株主資本等変動計算書」が財務諸表を構成しています。

中でも重要なのが、

  • 貸借対照表
  • 損益計算書
  • キャッシュフロー計算書

で、これらを合わせて「財務三表」といわれています。

顧客の財務三表を理解できれば、財産の状況、収支の状況、お金の流れがわかるので、営業時の提案に役立ちます。
詳しくはこちらで解説しています。

どの財務指標を確認すべきか

財務三表の数値を組み合わせれば、企業の財政状態を評価できる財務指標を算出できます。

財務指標は5つのポイントを理解することが大事です。

①収益性分析

収益性分析とは、会社がどの程度稼げるかを分析する方法です。

収益性が高ければ高いほど、費用と比較して効果的に高い売り上げを実現しているということなので、投資家からお金を集めやすいというメリットもあります。

利益額ではなく、利益率から判断します。

  • 売上高営業利益率

    売上高営業利益率は、収益性分析でもよく使われる指標です。

    売上高総利益率が前年より落ちている場合には、仕入原価や製造原価が上がっている、販売単価自体が下落している、などの可能性があります。

    売上高営業利益率(%)=売上総利益÷売上高×100

  • 売上高総利益率

    粗利率や荒利率とも呼ばれる、売上高に対する売上総利益の比率を表す指標です。

    企業のだいたいの利益率を把握するための、基本的な指標であると言えます。

    この利益率が高ければ、収益性が高い魅力的な商品を多く持っていることを意味します。

    売上高総利益率(%)=売上高総利益÷売上高×100

②安全性分析

企業の体力や借金返済能力を分析します。

借金がある場合、返済能力があるかなど、資金繰りが上手くできているかを判断しましょう。

  • 流動比率

    流動負債に対する流動資産の割合を示すものです。
    流動負債は即時返済すべき負債で、流動資産はすぐに現金化できる資産です。

    流動比率が高ければ、急に返済が必要になった場合の対応能力が、高いということになります。

    流動比率(%)=流動資産÷流動負債×100

  • 当座比率

    流動比率と同様、会社の短期的な返済能力を示す指標です。

    ただし、流動資産のなかでも短期間で現金化できる当座資産を用いて求めるため、さらに正確な短期的返済能力を示した指標であるといえます。

    当座比率(%)=当座資産÷流動負債×100

③活動性分析

企業における資本やその運用である資産を、売上額を向上するために、一定期間においてどれだけ有効に運用しているかを判断します。

  • 総資本回転率

    1年間に総資産が売上として何回転しているか、つまり、総資産がどれだけ効率的に売上高を生み出しているかを確認するものです。

    この回転率が高ければ、少ない資本で大きい売上を上げているということになります。

    総資本回転率(%)=売上高÷総資本

  • 固定資産回転率

    企業が保有している固定資産で、どの程度の売上をあげられているかを知るための指標です。

    つまり、固定資産を効率よく活用できているということです。

    固定資産回転率が高いほど、より小さな固定資産で大きな売上をあげられているということです。

    固定資産回転率(%)=売上高÷固定資産

④生産性分析

生産性分析は、ヒト(雇用)・モノ(設備)・カネ(資金)を効率的に利用して企業の成長につなげているかを判断します。

例えば雇用関係の場合、1人でどのくらいの生産性があるかを数値で算出します

  • 労働分配率

    付加価値に対する人件費の比率を確認する指標です。

    端的に言えば「稼いだお金を社員にどれだけ分配しているか」を数字にしたものです。

    労働分配率が高いほど、社員へ賃金を還元しているということです。

    労働分配率(%)=人件費÷粗付加価値額×100

⑤成長性分析

成長性分析は、企業の売上高や総資産などの規模がどの程度変化しているかを分析することで、企業に将来性があるかどうかを判断します。

  • 売上高成長率

    売上高成長率とは、企業の前期の売上高に対して当期の売上高がどれほど伸びているかを表す財務指標です。

    売上高成長率が高ければ、企業の規模が大きくなっていると言えます。

    売上高伸び率(%)=(当期売上高-前期売上高)÷前期売上高×100

財務諸表の探し方

財務諸表は、企業が公開している決算書類、「有価証券報告書」か「決算短信」の中にあります。

これらは、顧客が上場企業であれば、企業のホームページ内にあるIR情報、または有価証券報告書などの開示書類を閲覧できる金融庁のサイト「EDIENT」からダウンロードが可能です。

基本的な財務情報であれば、中小企業でも、売上高・資本金・従業員数などはWebサイトに記載されていることは多いです。

財務諸表をもとに顧客へ提案

前述したように、財務諸表から、顧客企業の情報を把握できます。

把握した情報から、顧客の課題と会社の全体像を掴みましょう。

そこから提案内容を考えるのが大切です。

顧客の課題


顧客の収益構造を把握し、顧客の市場を分析できれば、その企業の課題が読み解けます。

まず、損益計算書から、利益率や原価率を算出しましょう。

その数値を、過去の自社の成績や競合他社と比較することで、企業の強みや弱みがわかります。

例えば、ある企業の売上高は安定して上昇傾向ではあるものの、営業利益は年を追うごとに低下しているとします。

損益計算書の精査することで、利益率が低下している原因の特定も可能です。

その課題を解決できる提案をすることで先方のニーズにマッチした提案をすることができるようになります。

こういった事前準備をした上で営業に臨むことは、相手の理解を深める役割があり非常に重要です。

企業の全体像を把握


財務諸表を総合的に読み解き、企業の資金繰りなどがわかれば、企業の全体像の把握が可能です。

その企業がどれくらいの規模感か、何を目的に資産を運用しているかがわかれば、営業時にどのような提案をすればいいかが明確になります。

例えば、財力と安定性のある顧客企業であれば、ビジネススケールが大きい提案ができます。

貸借対照表では、純資産の数値が見れるので、その企業の普段動かしている金額の規模感が知れます。

また、総資本における純資産の比率である、自己資本比率が高いほど、安定性のある企業です。

この純資産の額と自己資本比率が高い企業は、財力と安定性がある企業なので、大きい規模のプロジェクトの提案が可能です。

営業戦略を立てる上で自社の財務諸表を見る力が必要

営業戦略を立てる上で、自社の財務諸表を見る力は大切です。

自社が資金を何にどれくらいかけたか、またその結果どのように売り上げが向上したかがわかれば、自社での経験をもとに詳細に顧客に提案できます。

損益計算書で「経営成績」を、貸借対照表で「財政状態」を、キャッシュフロー計算書で「企業のこれからの戦略」を読み取れるので、ターゲットをはっきりさせることができ、ベクトルも明確になった営業ができます。

まとめ


財務の知識があれば、企業の資金の流れをつかめるので、経営者の視点から顧客の狙いを把握することができます。

顧客の狙いがつかめていれば、営業時に必要な情報や、提案が可能になるので、財務諸表を読み解き、営業活動に役立てましょう。

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