大容量のファイルをメールでやりとりしようとすると、送受信に時間がかかったり、容量制限に抵触して送信ができないことがあります。
また、近年はスマートフォンでメールチェックをするケースも多く、大きなサイズのファイルをメールに添付すること自体が迷惑になってしまうこともあるので注意が必要です。
今回は、大容量のファイルを授受するときに便利な、ファイル転送サービスについて紹介します。
まず、ファイル転送サービスとはなにか、について説明します。
メールに添付するには大きなサイズのファイルをやりとりする際に必要です。また、メール添付ではやりとりしたくない、機密情報などを授受する際にも使われています。
ファイル転送サービスのメリットは以下のようなものがあります。
大容量のファイルをメールで送信する場合、容量制限への抵触を回避するために、ファイルを分割して送信する方法があります。しかし、受信者が結合作業を行わなければならない、データサイズによっては、メールの件数が数十通にも及んでしまう、という懸念点もあります。
ファイル転送サービスを利用すれば、ギガバイト単位の大きなファイルでも、分割することなく、そのまま送受信することができます。
大容量データをDVDやUSBメモリに書き込んで、物理メディアとして授受するという方法もあります。ただし、メディアの購入費用や郵送費用が都度発生する上に、物理メディア紛失のリスクもあります。
ファイル転送サービスを利用すれば、追加のコストなく、メディア紛失の心配なく、大容量データの授受ができます。
ファイル転送サービスでは、データの授受がSSL暗号化され通信されているため、安全にファイルのやりとりができます。SSL(Secure Sockets Layer)とは、インターネット上の通信を暗号化する技術のことです。第三者のデータ傍受や改ざんなどを防ぐために用いられています。
また、「メールでダウンロード用のアドレスのみ通知する機能」や「ダウンロードが完了したらファイルを削除する機能」などもあり、セキュリティに配慮された作りになっています。
続いて、ファイル転送サービスのデメリットについて説明します。主に無料のファイル転送サービスを利用した場合のデメリットについて、言及しています。
無料のファイル転送サービスの場合、サーバーが海外にあったり、運営会社の身元がはっきりしないケースもあり、セキュリティに不安が残ります。
続いて、ファイル転送サービスのセキュリティについて説明します。ファイル転送サービスを選択する際には、以下のようなポイントに留意しましょう。
通信の暗号化やコンピュータウイルスチェック機能について、万全な対策がとられているサービスを選択しましょう。
ダウンロードページがHTTPSページで保護されている、など対策方法はサービスごとに異なります。
特に法人用として売り出しているファイル転送サービスであればより高度なセキュリティ対策が設けられている傾向です。
ちなみに暗号化とは、万が一不正アクセスがあったとしても、転送された添付ファイルの中身を解読することができないような機能です。
大抵は自動で付属する機能となっているため、ユーザーが手続きを取らなくても暗号化されます。
また不正にアップロードされたウイルスソフトを誤ってダウンロードすることがないよう、予めウイルススキャン機能がついたファイル転送サービスもあります。
以下のようなアクセス制限の機能を確認して、自社に必要な要件を満たしているか判断しましょう。
アクセス制限の種類は各ファイル転送サービスごとに異なります。
サービス導入の前には入念な下調べをするといいでしょう。
ディザスタリカバリ(DR)は、災害などの被害を受けたときの復旧するためのバックアップ機能です。
データセンターの24時間監視、データセンターの複数拠点化(関東・関西・海外等)など、万が一の際のバックアップ体制を確認しておきましょう。
また、アクセスログは、セキュリティ事故の発生時に原因特定のために必要です。バックアップが安全に保管されているサービスを選択しましょう。
ファイル転送サービスの中には、人為的ミスへの対策を施しているものがあります。
例えば、宛先を予め指定したドメインやメールアドレスに限定する、上長の承認を得ないと送信できない仕組みにするといった制御ができます。
人為的ミスはどんなに気を付けていても発生してしまう可能性はゼロではありません。
ファイル転送サービスに付帯したサービスで人為的ミスを防ぐとことができることで、第三者への情報漏洩の危険性を回避することができるようになります。
続いて、ファイル転送サービスを選択する際のポイントについて説明します。
暗号化やアクセス制限に加え、万全なバックアップ体制や人為的ミスの防止策などもカバーしたサービスが好ましいでしょう。
使いやすく、分かりやすく、間違いが起こりにくい、という点を重視して、サービスを選択してください。
ファイル転送サービスを使って送信するファイルの容量を、事前に自社内でヒアリングして確認し、適切なサービスやプランを選択しましょう。
また、無料版では、送信できるファイルの容量が小さく設定されている傾向があり、一定以上のサイズのファイルを送ることができません。
法人利用を検討しているのであれば、セキュリティが強化されており、容量の制限も柔軟に対応できる有料版のサービスを選択すべきでしょう。
最後に、法人向けファイル転送サービス7選を紹介します。
NRIセキュアテクノロジーズ株式会社が提供する、ファイル転送・ファイル共有サービスです。
金融機関の監査にも対応できる水準の厳格なセキュリティレベルが特徴です。設定ミスや誤送信による情報漏洩を防ぐために、宛先を限定する「グループ」機能が実装されています。
日本ワムネット株式会社の大容量ファイル転送/送信サービスです。
高画質映像・ゲームコンテンツ・AIデータなど、大容量のコンテンツを高速でやりとりすることができます。アクションログはすべて取得可能で、通信やデータの暗号化にも対応しています。宛先ごとに帯域制限を設定できる点も特徴です。
Bizストレージファイルシェアは、エヌ・ティ・ティ・コミュニケーションズ株式会社が提供する、法人向けファイル転送・オンラインストレージサービスです。
Webブラウザだけで、大容量のファイルをやりとりすることができます。豊富なセキュリティ機能と高い年間稼働率を誇っており、安心して安定的にサービスを利用することができます。
富士フイルム株式会社が提供するSECURE DELIVERは、法人向けクラウド型ファイル送受信サービスです。大容量ファイルや重要データを、取引先や国内外の拠点と安全にやりとりすることができます。
ファイルは富士フイルムが運用するクラウドサーバーに厳重に管理・保管されているため、セキュリティ面も万全です。誤送信を防止する機能も搭載されており、安心してファイルの受け渡しができます。
HULFT-WebConnectは、株式会社セゾン情報システムズのファイル連携サービスです。専用機器や開通工事が不要で簡単に始めることができ、取引先や事業拠点との連携や、クラウドとの連携に活用できます。
ブラウザアプリケーションも準備されており、インターネット環境があれば、簡易的なファイル転送ができます。
eTransporterは、株式会社NSDNSDによる大容量ファイル・機密データ向けファイル転送システムです。
自社のセキュリティポリシーに合致するきめ細かいセキュリティ設定が可能で、分かりやすく使いやすいユーザーインターフェイスが特徴です。いつ、だれが、誰に、どのようなファイルを送信したのか、ログが残るため、内部統制にも対応したサービスになっています。
日本ワムネットが提供するGigaCCは、純国産の企業向けファイル送受信・共有サービスです。10年以上の実績があり、国内や海外の企業間で、大容量ファイルを安全にやりとりするために採用されてきました。
きめ細かいセキュリティ機能をユーザー企業のポリシーごとに設定することができます。また、専用アプリによるスマートフォンデバイスでの利用にも対応しています。日本語・英語・中国語の多言語対応しており、グローバル規模での導入実績もあります。
ファイル転送サービスには、大容量のデータを分割せずに扱える、低コストである、セキュリティに配慮されているなどのメリットがありますが、特に無料のサービスでは、セキュリティに不安が残る、利用履歴を自社で管理できないなどという注意点もあります。
ファイル転送サービスを選択する際には、セキュリティ対策、ユーザー利便性、容量や料金などを比較検討して、自社に最適なサービスを見つけましょう。無料のトライアルを用意しているサービスもあるので、試しに使ってみてはいかがでしょうか。