管理職になると、部下の勤怠管理や人事考課、目標設定のみならず、多種多様な付随業務への対処が要求される場面が増えます。
雑務に忙殺されて、本来マネジメント業務に専念できないという悩みをお持ちではありませんか?
今回は、そもそも雑務とは何かということから、雑務への対処方法や効率化するツールまで、幅広く紹介します。
まず、雑務の効率化とはなにか、ということについて説明します。
そもそも雑務とは、どのようなものでしょうか。weblio辞書によると、「こまごましたいろいろの用務。」のことです。つまり、一つひとつは大したことがない仕事ですが、数や種類が多いという特徴があります。
次に、なぜ雑務を効率化する必要があるか、について説明します。すでに述べた通り、雑務はそれ自体は大した仕事ではありません。言い換えれば、誰がやってもよい仕事です。
雑務に時間を奪われているということは、すなわち、本来集中すべき業務へ費やす時間が減少していることです。主要な業務に割く時間が減少することで、生産性の低下を招きます。
例えば、プログラマーであれば、コードを書くために費やす時間、営業であれば、顧客と相対する営業活動に費やす時間、管理職であれば、部下育成や制度設計などのマネジメントに費やす時間が、主要な業務の時間であるとえます。
雑務に時間が奪われることにより、主要な業務のアプトプットが低下し、全体の生産性が損なわれます。
よって、雑務を効率化することが、生産性向上の観点から必要であるといえます。
出典元:中小企業庁 令和2年3月
社内の人的リソースが乏しい中、雑務を効率化し、主要な業務により多くの時間を費やすための工夫が重要です。
雑務を効率化することのメリットは、すでに述べたように、主要な業務に割けるリソースが増加するため、生産性の向上が期待できるということです。
また、自分の抱えている雑務と同種の雑務を、社内の複数の人々が抱えている場合、効率化の仕組みを水平展開できる可能性があります。この場合、効率化がもたらすメリットは、個人にとどまりません。
組織単位の業務効率化による、生産性向上が期待できます。
続いて、雑務への対応方法について、パターンごとに紹介していきます。
まず、雑務を自分自身でこなすという選択があります。たいした仕事ではないが、自分にしかできない雑務は、例えば、管理職による勤怠承認などが挙げられます。
人数が少なければ、大した手間ではありませんが、人数が多いと、承認ボタンや修正内容の確認などを行うのも一苦労です。
自分でこなすほかない雑務が一定数残るのは、いたしかたないことです。割り切って粛々とこなすか、後ほど説明する、自動化やツールの活用を検討しましょう。
いっそのこと、やらないと決めてしまう、というのも一つの方法です。例えば、慣習的に毎月作成しているが、ほとんど誰も見ていないであろうレポート作成は、思い切ってやめてしまいましょう。
もちろん、事前に関係者の合意形成は必要ですが、いったんやめてみたら、特に影響がない(=実は無駄な仕事であった)というケースも少なくありません。
「やらない」という積極的な意思決定が、業務効率化につながります。
自分以外の誰かに任せるという判断も、特に管理職の場合には重要です。
管理職として部下を持つ人にとっては、自身の部下が、雑務を任せる対象となります。自分でなくてもできる仕事は、積極的に部下に任せるようにしましょう。
これは、「デリゲーション」と呼ばれ、組織を束ねるリーダーにとって、重要なスキルの一つです。雑務を処理する手段は部下に任せて、結果責任にコミットしてもらう方法が好ましいといわれています。
他部署のリソースが利用可能な場合、他部署のスペシャリストに依頼することも選択肢として考慮しましょう。
例えば、営業部門の月次レポートの作成に会計データが必要な場合には、自分で準備するよりも、経理やオペレーション部門からデータを抽出してもらうほうが、早く、正確であることが多いです。
自社内にリソースがない場合には、社外へのアウトソーシングも選択肢の一つとなります。
例えば、営業のアポイント取得のために外注業者に依頼する、来客対応やスケジュール調整のため、派遣社員を雇用するなどがあります。
人間による手作業ではなく、コンピューターによる自動処理方式にすることです。後述するいくつかの手法があり、近年注目されている手法です。
雑務を効率化するために、目的ごとにパッケージとして提供されているツールを活用しましょう。自動化よりも敷居が低く、すぐに使い始めることができます。雑務を効率化するツールについては、後ほど詳しく説明します。
続いて、雑務を自動化する手法について説明します。
自動化とは、ソフトウェアやシステムを利用して、手動での IT 作業を自動的に行えるようにすることです。
自動化の必要性が高まっている背景には、IT人材不足の問題があります。
IPA 独立行政法人情報処理推進機構の調査によれば、IT人材の不足傾向は年々高まっており、この傾向は今後も継続することが予想されています。ITの専門知識を持たないユーザー一人ひとりが、ツール等を用いた業務自動化を行うスキルを身に着けることにより、IT人材不足への対抗策になることが期待されています。
続いて、自動化の手法について紹介します。
マクロとは、Excel等のアプリケーションを、所定の手順で動くように制御する機能です。VBA(Visual Basic for Applications)は、マクロのコードを記述するための言語です。いずれも、Excel等のMicrosoftアプリケーションを自動化するための手法です。
Excelは、業務で利用することが多く、雑務やルーティンワークも多く発生するため、自動化に適した分野です。例えば、毎週提出するレポートを自動で作成して、メールに添付して所定の日時に送信するといったことが実現できます。
書籍なども多数出版されており、Excelの標準機能として実装されているため、誰でもすぐに使い始めることができます。
GAS(Google Apps Script)は、Googleが開発・提供するプログラミング言語です。JavaScriptをベースに作成されています。
GASを使うと、例えば、メールの自動返信やスプレッドシート上でオリジナルの関数を作成することができます。
また、Google Appsとの連携が可能なため、フォームに回答があったらメールで通知する、スプレッドシートに入力されている住所をGoogle MapのURLに変換するといったことも可能です。
RPA(Robotic Process Automation)は、PC等を用いて行う一連の業務を自動化するソフトウェアロボットのことです。
例えば、メールに添付されたExcelファイルの注文情報を目視確認して、基幹システムのデータベースに転記する、といった作業を自動化できます。
RPAは、判断を伴わない単純な作業を得意としますが、例外処理に弱く、予め命令された内容を実行することしかできないという制約もあります。
導入にあたって相応の金額が必要になるため、導入の際には稟議が必要になるかもしれません。
Axiomは、ノンコードの自動化ツールです。Google Chromeの拡張機能とデスクトップアプリケーションで構成されています。
例えば、Webページのデータを繰り返しスプレッドシートに貼り付ける、といった作業が自動化できます。
ステップ・バイ・ステップで簡単に作業指示ができるため、初心者でも気軽に導入することができます。有料プランもありますが、1か月30分までの処理は、無料アカウントで対応可能です。
プログラミング言語を記述して、自動化を実現することもできます。ツールや言語の制約がなければ、実現可能な自動化の幅も広がります。
プログラミング言語を習得するには、一定以上の時間が必要であり、外注する場合には、費用がかかるという点がデメリットです。
ソフトウェアの標準機能として、自動化の仕組みを提供していることがあります。
例えば、クラウド型営業支援ツールのSalesforceには、所定の形式のレポートを定期的に、指定した宛先に自動送信するという機能があります。
自動化を試みる際には、まずはソフトウェア・サービスの標準機能で実現可能かどうかを確認してみましょう。
最後に、ツールを活用して雑務を効率化する方法を紹介します。パッケージソフトウェアをツールとして活用することで、雑務を効率化することができます。
タスク管理とは、プロジェクトの遂行のためにチームメンバーに割り当てた担当業務を管理することです。タスク管理ツールを導入すると、情報や進捗状況を全体で共有できるため、メールによる周知などの雑務が軽減できます。
また、個々のタスクや全体の進捗状況がわかりやすく可視化されるため、社内外向けのレポート作成も容易になります。
国内シェアトップのタスク・プロジェクト管理システムです。シンプルで直感的に操作できるUIが特徴で、プロジェクトの進捗が一目で把握できます。
必須項目が少なく、業務やプロジェクトに合わせて柔軟に使用できるJootoは分かりやすくオススメです。
詳しくはこちらも記事もチェックしてみてください。
音声認識カスタマイズとは、Amazon AlexaやGoogle Assistantなどの音声認識デバイス向けにカスタマイズした音声アプリケーションを作ることです。音声認識により対応できる幅が広がることで、雑務の効率化が期待できます。
例えば、会議の出欠を音声で回答したり、メール返信を音声で読み上げ、回答する、などといった応用が考えられます。
Voiceflowとは、Amazon AlexaとGoogle Assistant用の音声アプリをノンコーディングで作成できるサービスです。月に5,000発話まで、無料で使うことができます。
Alexaが話す言葉や、それに対してユーザーが話す言葉のパターン、それに対するAlexaの返答などを設定することができます。外部のAPIとも連携が可能で、Googleスプレッドシートからデータを取得することなども可能です。
Web会議ツールは、自宅からのリモートワークや遠隔地との会議で便利な仕組みです。
いくつかのWeb会議ツールには、レコーディングと文字起こし機能が実装されており、例えば、議事録作成を自動化することが可能です。
文字認識の精度は完璧ではないので、手直しは必要になりますが、アウトラインとしては十分な精度で、議事録作成の工数が大幅に削減できます。
Microsoft Teamsは、会議、チャット、通話、共同作業をワンストップで行える、コラボレーションプラットフォームです。
レコーディングや文字起こしの機能が実装されており、議事録作成などの雑務効率化に役立ちます。
人事・会計ツールにも、雑務の効率化に役立つ機能があります。
例えば、人事関連の手続きを、印鑑や書類提出をすることなく完結できる人事関連
サービスがあります。何かと紙のやりとりが多い手続きが簡略化され、雑務を減らすことができます。
SmartHRは、「人事・労務をラクラクにする」クラウド型の人事関連サービスです。ペーパレス化を実現し、紙や印鑑が不要になります。
給与明細のプリントアウトも不要で、住所変更や扶養家族の変更も一回の手続きで完了することができます。
SlackやChatworkなどのチャットツールでも、雑務を効率化することができます。テンプレートやAPIを使って、定型的なフローを自動化することが可能です。
Slackには、ワークフロービルダーという機能があり、定型的なアクションやコミュニケーションを自動化することができます。
フォローアップやメッセージの量を削減できるため、必要な時に必要な情報をスピーディに発見することができます。
例えば、入社後の手続き、会社・チームの目標管理、定期ミーティングなどに活用できます。
雑務に時間を奪われているということは、本来集中すべき業務へ費やす時間が減少していることを意味します。主要な業務に割く時間が減少すると、おのずと生産性の低下を招きます。
雑務への対応方法は、自分でこなす、他人に任せる、自動化する、ツールを使うなど様々ですが、特に管理職の方は、自分でこなさなくて良い仕事は、(自動化・ツールを含む)他人に任せるという決断が重要です。
雑務に忙殺されることなく、重要な業務に集中できるよう、創意工夫して環境を整えましょう。