5分で分かるアカウント・ベースド・マーケティング(ABM)|今トレンドの営業手法とは?

みなさまは「パレートの法則」という言葉を聞いたことがありますか?

パレートの法則とは、わずか2割の要素が、全体の8割を生み出すという、ばらつきに関する法則です。

今回は、このパレートの法則から派生した、アカウント・ベースド・マーケティング(ABM)という、最新のB2Bマーケティングの手法を紹介します。

アカウント・ベースド・マーケティング(ABM)とは

まずは、アカウント・ベースド・マーケティング(ABM)の概要から説明します。

ABMは、Account Based Marketing(アカウントベースドマーケティング)の略称です。

ABMとは、大口顧客等の特定企業を対象として、個別にアプローチするマーケティング手法です。

なお、ABMにおける”アカウント”とは、会計のことではなく、企業のことを指します。

例えば、大手自動車メーカーを担当する営業パーソンAさんがいたとすると、「トヨタ自動車、本田技研工業、日産自動車はAさんの担当アカウントです。」というような意味合いです。

コンセプト

ABMは、企業内の個人ではなく、企業単位のターゲティングを行います。

BtoCマーケティングでは、個人の趣向に合致するマーケティング施策を打ちますが、BtoBのビジネスでは、個人の意見が購買を左右する度合いが小さく、個人にフォーカスしたマーケティングが必ずしも効果的とはいえません。

そこで、ABMでは、特定企業にフォーカスして、その企業に最適な提案を行うことを目指します。

また、冒頭で紹介したパレートの法則の通り、8割の売上は、2割の顧客から生み出されるという想定のもと、少数の顧客に重点的にアプローチを行うことで、売上を最大化するというコンセプトです。

なぜ注目されているか?


ABMが注目されている背景には、テクノロジーの発達があります。

CRM(Customer Relationship Management)、SFA(Sales Force Automation)、MA(Marketing Automation)などのデジタルツールが高機能化したことにより、ターゲット企業の選別やマーケティング施策の実行等、手作業では手間がかかる工程が自動化できるようになったことが、ABMが注目されている一因となっています。

なお、CRMとは、顧客管理システム、SFAとは、営業支援システム、MAとは、マーケティング自動化ツールのことです。

従来の手法との違い

従来のB2Bマーケティング手法は、リードをターゲットとしていました。リードとは、見込顧客のことです。

広い範囲から、できる限り多数のリードを創出し、案件化、収益化することを目的としていました。

一方、ABMでは、少数の企業をターゲットとします。マーケティング活動の初期時点から、ターゲットとなる企業を絞り込み、ターゲット企業に最適化したマーケティング施策を講じ、収益を最大化することを目的にしています。

まとめると、従来の手法は多数の個人を、ABMは少数の企業をターゲットにしている点が最大の違いです。

メリット

ABMを実施することにより、以下のようなメリットが期待できます:

  • リソースの集中による効率化がはかれる
  • 顧客に最適化したアプローチができる
  • 効果測定が容易である
  • マーケティング部門との連携がしやすくなる

リソースの集中による効率化がはかれる
ターゲット企業が限定されているため、リソースを集中することができます。

例えば、マーケティングの予算や、営業活動へ費やす時間を、少数の企業に集中的に投下することが可能です。

リソースが分散しないことにより、確度が高く、効率的な営業・マーケティング施策を行えます。

顧客に最適化したアプローチができる
ABMでは、顧客企業が置かれている状況や抱えている課題などを加味し、その企業に最適化したアプローチを行うことができます。

特定企業に向けてカスタマイズしたメッセージを送ることにより、特別感を演出し、関心を引き出すことも期待できます。

効果測定が容易である
少数の顧客をターゲットにするため、効果測定が容易であり、キャンペーンなどのマーケティング施策の成否が明確になります。

そのため、PDCAサイクルを回す際にも、明確な結論に立脚することができます。

デメリット

  • ターゲット企業以外が手薄になる
  • 緊密な部門間連携が必要になる

ターゲット企業以外が手薄になる
特定企業にフォーカスするということは、それ以外が手薄になることを意味します。

ターゲット企業へのアプローチが成果につながらない可能性もあるため、リスクを事前に理解し、打ち手を考えておく必要があります。

緊密な部門間連携が必要になる
ABMでは、営業部門とマーケティング部門の密な連携が必要となります。

営業とマーケティングが完全に独立して、連携ができない場合には、ABM導入は困難です。

ABMの手順


続いて、ABMの実施ステップを紹介します。

  1. ターゲットアカウント選定
    まずは、ターゲットアカウントの選定です。取引金額が大きい既存顧客や、戦略的に新規獲得したい顧客など、ターゲットの条件から、データをもとに選定します。
  2. アカウントプラン策定
    次に、アカウントプランの策定です。顧客企業別に営業活動方針を計画します。

    顧客の置かれている状況を理解し、抱えている課題を想定して、自社が提供できる解決策を検討します。

  3. アプローチ手法の計画
    続いて、アプローチ手法を計画します。顧客企業に最適化したシナリオを構築して、メール配信、セミナー、キャンペーン、コンテンツ配信、製品デモンストレーションなどのアプローチを決定します。
  4. 実行・効果測定
    計画したアプローチを実行に移します。そして、顧客からの反応を確認・記録して、結果に応じて、今後のアプローチを修正します。

ターゲットアカウント選定における属性情報


ターゲットアカウント選定において、選定の基準となる属性情報には以下のようなものがあります。

業界や商材によって、選定の基準は異なります。

  • 過去の取引額
  • 会社規模
  • 広告出稿状況
  • Webサービスの利用状況
  • 競合サービスの導入状況
  • 事業所数・所在地

ABMツール5選

最後に、ABMツール5選を紹介します。

Marketo


Adobe Marketo Engageは、ABMに必要な機能が網羅された統合プラットフォームです。

アカウントの選定から、顧客企業にパーソナライズしたアプローチ、顧客ごとの収益分析まで、単一のプラットフォームで管理することができます。

MarketoがAdobeに買収されたことにより、現在はAdobe Experience Cloudにラインナップされています。

FORCAS


FORCASは、ABMを強力にサポートするB2Bマーケティングツールです。

データ分析に基づき成約確度の高い企業を特定する機能が実装されています。

ABMに不可欠なマーケティングと営業の連携を支援し、組織一丸となってターゲット企業にフォーカスする仕組みを提供しています。

uSonar


uSonar(ユーソナー)は、株式会社ランドスケイプ社が開発・販売を行う、クラウド型の顧客データ統合ツールです。

基幹システムやCRMと連携し、全国の事業拠点を網羅したマスターデータを提供、有望な未接触企業を特定したターゲットリスト作成を可能にします。

SPEEDA


SPEEDAは、株式会社ユーザベースによる、企業・業界分析の情報プラットフォームです。

時価総額トップ100社中7割で導入されており、10万以上の統計データ、国内上場企業3,600社のデータからワンクリックで資料を自動作成できます。

情報収集・分析に費やす時間を圧倒的に短縮することができます。

Datanyze


Datanyzeは、株式会社インターアローズが提供するABMツールです。

世界250ヵ国、3500万ドメイン、9,000ツール、300万アプリものデータが取得でき、競合テクノロジー導入、解約情報などをタイムリーに入手することができます。

まとめ

ABMとは、大口顧客や戦略的に獲得したい新規顧客など、特定企業を対象として、個別に最適なアプローチを試みる、マーケティング手法です。

ABMのメリットには、リソースの集中による効率化がはかれる、顧客に最適化したアプローチができる、効果測定が容易である、マーケティング部門との連携がしやすくなる、などがあります。

一方で、ターゲット企業以外が手薄になる、緊密な部門間連携が必要になる、という課題もあり、定期的な効果測定とアプローチの修正、ABMに順応した社内体制の構築が必要になります。

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