営業部長などの管理者であれば、理解しておきたい財務諸表の1つがキャッシュフローです。
日常的な業務の中では目にすることのないキャッシュフローですが、経営状態を把握するための非常に重要な諸表と考えられています。
今回はそんなキャッシュフローの概念や作成する目的、損益計算書や貸借対照表との関係性を解説します。
キャッシュフローの具体的な使い方を紹介する前に、その概念と作成する目的を解説します。
部署を管理する営業部長などの役職者は、基本的な考え方から理解していきましょう。
名称からイメージできる方も多いと思いますが、キャッシュフローとはお金の流れを記載した財務諸表の1つです。
上場企業には作成する義務があり、会計期間ごとにキャッシュの流れを記載します。
また、実際の諸表は複雑になりますが、次のようなシンプルな式で表すことができます。
キャッシュフロー = キャッシュイン(入ってきた現金) – キャッシュアウト(出ていった現金)
小さな商店に置き換えると、商品の販売によって得た売上がキャッシュイン、商品の仕入れにかかった支出がキャッシュアウト、手元に残っている利益そのものがキャッシュフローに該当します。
詳細は後ほど解説しますが、一般的な企業では営業活動・投資活動・財務活動という3つのカテゴリーごとにキャッシュフローの作成を行います。
キャッシュフローを作成する目的は次の3つです。
「経営に携わっている人間であれば、お金の流れを把握しているのでは?」という声も聞こえてきそうですが、日常的な業務の中で確認できるのは売上や支出といった大まかな数字のみです。
そして、業績が好調であるにも関わらず、現金を保有していない状態を指す黒字倒産といった自体を防ぐために、会計期間ごとにお金の流れを確認するキャッシュフローが作成されるのです。
ここからは、キャッシュフロー計算書に記載される項目を解説します。
「キャッシュフロー = キャッシュイン(入ってきた現金) – キャッシュアウト(出ていった現金)」というシンプルな式で表すことも可能ですが、企業では営業活動・投資活動・財務活動の3つのカテゴリーごとにお金の流れを書き出します。
企業で作成される1つ目の諸表が、営業活動によるキャッシュフローです。
会社が生業としている本業で生じた利益を指し、住宅会社であれば住まいを販売したことで得た利益が営業活動によるキャッシュフローに該当します。
少し細かくなりますが、営業活動によるキャッシュフローは、さらに次の5つに分類されます。
本業に関わる投資活動は例外となりますが、現金収入から項目ごとに分けられた支出を差し引くことで算出可能です。
キャッシュフローを構成する2つ目のカテゴリーが、投資活動によるキャッシュフローです。
投資活動によるキャッシュフローは、主にどのくらいの予算を設備投資に充てているかを表す諸表として用いられます。
また、営業活動によるキャッシュフローと同様に次の8つに分類されます。
規模の小さな個人事業に置き換えると、株として保有している資産の購入や売買や、事業用のオフィスの購入や売買によって生じた利益が、投資活動によるキャッシュフローに該当します。
企業で作成される1つ目の諸表が、財務活動によるキャッシュフローです。
財務活動という言葉からも分かる通り、資金調達の状態を表す諸表として用いられます。
また、財務活動によるキャッシュ・フローも、次の6つに分類されます。
一部該当しないものもありますが、個人事業における借入や返済の状態を表す諸表が財務活動によるキャッシュフローに該当します。
お金をの流れを表すわけではありませんが、財務諸表上では自由に使えるお金をフリーキャッシュフローと言います。
営業活動によるキャッシュフローと投資活動によるキャッシュフローを差し引くことで、算出することができます。
営業活動によるキャッシュフロー − 投資活動によるキャッシュフロー = フリーキャッシュフロー
営業部長などの役職者は、キャッシュフローそのものの定義だけでなく、損益計算書や貸借対照表との関係も理解しておきましょう。
キャッシュフローと損益計算書、貸借対照表が財務三表と呼ばれることからも分かる通り、経営状態を理解するためにはすべてを連動させることが重要です。
まず、損益計算書の当期純利益は、貸借対照表の繰越利益剰余金にストックされ、投資や財務基盤を強化するため予算として確保されます。
そして、貸借対照表現金預金は、キャッシュフローの現金および現金同等物の期末残高に一致し、損益計算書の税引前当期純利益は本業による資金増加を意味するため営業活動によるキャッシュフローに計上されます。
このように、損益計算書・貸借対照表・キャッシュフローの3つの財務諸表が連動し、会社の経営状態を表しているのです。
ここからは、具体的なキャッシュフローの作成方法を解説していきます。
今回は直接法と間接法の違いにも触れますが、実際に作成する場合には中小企業庁のキャッシュフロー作成ツールを活用しましょう。
直接法とは、主要な取引ごとに総額を記載するキャッシュフロー作成方法です。
間接法よりもお金の流れを細かく算出できるため、財務諸表を作成する時間を確保できる方におすすめです。
ただし、損益計算書や貸借対照表以外の書類を準備する手間がかかるため、まずは間接法を使ったキャッシュフローの作成に取り掛かりましょう。
間接法は、現金の動きだけに着目したキャッシュフローの作り方です。
具体的には損益計算書の税金等調整前当期純利益に対する、非資金損益項目、投資活動や財務活動の損益項目、営業活動に関する資産・負債の増減を把握していれば作成可能です。
貸借対照表・損益計算書の2つの諸表で作成できるため、その他の諸表を準備する手間もかかりません。
直接法と間接法の違いにも触れましたが、中小企業庁が公開しているツールに数値を打ち込むだけでキャッシュフローを作成することもできます。
ダウンロードしたツールの数式を消さないようにするという注意点がありますが、手間と時間を短縮することができます。
具体的な手順は次の9つです。
最後に、営業活動によるキャッシュフロー、投資活動によるキャッシュフロー、財務活動によるキャッシュフローの増減が意味することを紹介します。
生業としている事業の収益を指し、増えていればうまくいっている、減っていれば事業が停滞していると考えらる。
設備や証券による収益を指し、増えていれば設備や証券をお金に換えた、減っていればお金を設備や証券に充てたと考えらる。
借入などによる資金を指し、増えていれば借入を行った、減っていれば返済を行ったと考えられる。
このようにそれぞれのキャッシュフローから、大まかな経営状況を予測することができます。
本業がうまくいっていない場合には、投資活動や財務活動が活発になるといった具合に、自社および他社の状態を推し量るのです。
キャッシュフローはお金の流れを把握し、経営状態を確認するための諸表です。
キャッシュフローに損益計算書、貸借対照表を加えた財務三表を利用すれば、どのくらいの体力があるのか、またどういった利益で事業を拡大しているのかを推測できます。
また、営業部長などの役職者は、キャッシュフローを作成することも視野に入れておきましょう。
中小企業庁が公開しているツールを利用することで、時間と手間を短縮しながら、自社の経営状態を確認することができます。