職場で経験を積んで実績を上げられるようになってくると、やがてプロジェクトなりチーム牽引を任される時がやってきます。自分に任されたタスクは完ぺきにこなせたとしても、他のメンバーを動かして成果を挙げることは勝手も違うため、思うように進められないことも少なくありません。そんな時、近くにお手本となる存在がいてくれればいいのですが、上司や先輩にはどうも聞きづらい。
さて、どうしたものでしょうか?
そこでこの記事では、名作マンガに登場する「リーダー」たちが、どのようにチームを牽引してきたかを見ていこうと思います。
読者のみなさんのチーム牽引のヒントになれば幸いです!
「おれは“海賊王”になるんだよ!!! 偉くなりてェわけじゃねェ!!!」
「お前がいねェと…!!」「おれは海賊王になれねェ!!!!」
(漫画「ONE PIECE」第800話、第844話より)
はい、言わずと知れた日本を代表する活劇マンガ「ONE PIECE」の主人公ですね!
「海賊王になる」ことを目指すルフィが、さまざまなスキルを持つ仲間とともに、世界を股にかけた大冒険に挑んでいくという、まさに少年マンガの王道。
彼は、世界中が注目する大海賊「麦わら海賊団」の「船長」なのですが、トップめいた命令はほとんど出しません。ただただ自分の目標(海賊王になるために“ひとつなぎの秘宝”を見つけ出す)と、それに基づいたミッション(それを阻む敵を排除する)を示すだけ。そして一味のメンバーも、彼にいちいち細かい指示を求めたりしないのです。こういうやり方は、ゴールが見えにくいと「丸投げ」になって、一味がバラバラになってしまいそうですが、ルフィの「目標」は魅力的かつ明快な言葉になっているので、メンバーたちは自ら進んで、得意なやり方で、目標達成に取り組んでいけるのです。
そしてルフィにとって「王になる」とは「世界№1の人間になること」ではなく「仲間の輪を大きくするためにその輪の中心となる」こと。このことがルフィの「仲間を助けることを何より優先する」という姿勢と、それが一味のさらなる結束に繋がるという好循環を生んでいるのです。
本人の自覚は薄そうですが、リーダーシップのひとつの理想形と言えますよね。
「あぁ憎んでくれていいよ。ガンダムの整備をしておけ。」
(TVアニメ「機動戦士ガンダム」第2話より)
「すまんが、みんなの命をくれ!」
(映画「機動戦士ガンダム 逆襲のシャア」より)
「機動戦士ガンダム」シリーズに登場する名キャプテン。こちらは不可抗力で「船長」になってしまった人です。敵軍の奇襲で上官が全員リタイアしてしまったため、訓練生だった彼がやむを得ず戦艦の指揮を執ることに。いずれは士官になるつもりではいたのでしょうが、心の準備が整わないまま重責を担うことになってしまった彼のプレッシャーは大変なものだったでしょう。そのため最初は経験不足と気負いから乗組員との衝突も多く、主人公である民間人パイロットにも横暴な態度をとったりします。が、そこからブライトは「生きて自軍本部まで辿り着く」という目標のために死に物狂いで奮闘し、精神的にも指揮能力も大きな進化を遂げていくのです。「やらざるをえない」状況は人を成長させる糧ともなるのですね。
そして彼には、サポートしてくれる女房役の存在があったことも大きいでしょう。牽引する役と後ろからメンバーを押し上げてくれる役がいるとき、チームは目覚ましい成果を挙げることができるのです。
「まだ、考えがまとまってない…けど…」「やってやる…喋りながらでも考えろ」
「何も捨てることができない人には」「何も変えることができないだろう」
(漫画「進撃の巨人」第11話、第27話より)
近年大きな話題になっているダークファンタジー「進撃の巨人」のメインキャラクター。物語を通じてもっとも変貌を遂げた一人です。
目的も来歴もまったく分からない敵に絶望的な抵抗を続ける人類。アルミンは主人公とともに、志願兵として戦いに参加しますが、身体能力や体術に劣るため、当初は劣等感に苛まれます。ですが、次々と起こる危機的な状況の中で、卓越した状況分析や判断を発揮し始めます。時には冷酷と思える判断を下すことも。そして、自分の能力を自覚した彼は、主人公を含めたチーム全体の指揮を執るようになり、最終的に一軍の長を任せられるところまで登り詰めるのです。
「敵の情報がほとんど無い」状況の中だからこそ、アルミンの「僅かな手掛かりを切っ掛けに状況分析を行い、大胆な仮説を立て、チームを動かす」という“OODAループ”を地でいく資質が、不可欠の力となったのですね。
また、彼の凄いところは、自分の弱点の補強までを計画に織り込めるところ。読みが外れて自身がパニックに陥った際には、潔く同僚に指揮役を託しつつ自分は敵の弱点探しに集中、見事に逆転します。その才覚は指揮官よりも参謀向きと言えるのかも知れません。
ここまで、物語の中のリーダーが、どのように自分のチームを引っ張っていったかを見てきました。まとめてみると以下の共通点に気づきます。
これらは、個人では解決できない大きな問題があるとき、「仲間をどう巻き込み、どう動かすか」に必要な行動であるといえます。
自分ひとりのスキルや行動でカバーしようとするのではなく、問題を俯瞰し、解決するにはどう行動すべきかを明快なメッセージとして仲間に伝えることが、リーダーの一番大事な役割なのです。
そしてもうひとつ大事なポイントが。
それは、
自分がリーダーとなることを覚悟している
ことです。
ルフィもブライトもアルミンも、今の状況の中で自分ができる最善のことを考えた結果、「“リーダー“としてふるまうこと」を選んでいます。やり方にはそれぞれの違いがありますが、「自分がこの役割をやらないと!」という強い覚悟が彼らの思考や行動を支えているのです。覚悟を持つのは大変勇気が要る事ですが、「思考を変えること」は誰にでもできて、かつ、誰にとっても効果の高い、成長への近道です。
人は経験から多くを学ぶ生き物です。そして「他の人が変化していく過程」を辿るのは、自分に変化を促すにも有効な手段と言えます。身近な上司や先輩の苦労話を聞くのもいいですが、我々には簡単に手に入る多くの「物語」があります!
ぜひ古今の名作からも、変化のためのヒントを得てください。
最後に私の大好きな、某ギャング団のリーダーの名言を!
「『任務は遂行する』『部下も守る』」「『両方』やらなくちゃあならないってのが『幹部』の辛いところだな。覚悟はいいか?俺はできてる」
(漫画「ジョジョの奇妙な冒険」第53巻より)