エクセルで音を見る

なんくるないさ〜 さんのブログ記事

外出自粛で楽器を始める人が増えたそうですね。私はやりませんけど。苦手なので(笑)。
例えば、友人の「吹奏楽部では少し高めの音を吹く。」という話にどうも納得いかない。ピアノの黒鍵が所々抜けている理由を聞いても納得いかない。そういう感じです。
楽器職人の調律も作曲者の意図も無視して高めの音で演奏するのはアリ?そもそもドレミの根拠って何?そんな解けない疑問に苦手意識がありましたが、世代も場所も違う時にやっていた吹奏楽部経験者が皆同じことを言うので、なにかあるんだとは思っていました。

音は会議室で起きてるんじゃない!弦で起きてるんだ!

ある日、興味本位で友人にバイオリンを触らせてもらう機会がありました。このとき
「ある音に対し、弦の長さが半分になる位置を押さえて弾くと1オクターブ上の同じ音になる」ということを知りました。

異なる音を出す事は、異なる周波数を作る事。
1オクターブ高くする = 弦の長さを半分にする =周波数を2倍にする
1オクターブ低くする = 弦の長さを2倍にする =周波数を1/2倍にする
ということは、ある音に対し周波数が2倍になるまで(弦の長さが半分の長さになるまで)の範囲に音階の要素が全てあるはず。押さえる位置は無限通りあるので、音階の要素も無限にある。あとはどういうルールでデジタル(数えられる形)にするか、かな。
それを考えた人がいたようです。ピタゴラスの定理で有名なピタゴラスさん。

ピ・タ・ゴ・ラ・ス・イ・ッ・チ♪

ピタゴラスは鍛冶場の音を聞いたとき、よく響く音があることに気づき1弦琴というもので実験した結果、単純な比率の音がよく響く法則を見つけたそうです。そして3倍音を集めて秩序を作りました。値を3倍し、1~2の範囲(1オクターブ)に納めるため1/2倍する。その値をまた3倍…。エクセルで計算するなら、こうです。

ときには1/2倍を2回繰り返し、とにかく1~2の間の数字に納める。

12回目で 1の近似値になり、その後は繰り返しになります。ここでとりやめて名前を付けると3倍音の秩序のできあがりです。ピタゴラス音律というそうです。

数式を値に貼り直して小さい順に並べ替えると、こうなります。ピアノの黒鍵と白鍵に相当する規則です。なんと。

累乗・乗算 乗乗と続くことから人はJOJOと呼ぶ

しかしこの周波数比の差が平均0.08なのに対し、実際には0.06から0.11まで2倍近い開きがあります。

こうなると「12個ありき」を前提にして平均的に12分割したくなります。これもやった人が既にいました。「平均律」というそうで、西洋クラシックの基本になっているようです。
注意すべきは、オクターブの秩序は2倍、4倍、8倍…という乗算の世界であること。
つまり12分割は「12回掛け算して2になるもの(=2の12乗根)」です。書き方は12√2(ルート)または21/12。エクセルでは ^ を使います。例えば2の12乗なら2^12と表し、2の12乗根なら2^(1/12)。
これで20/12から212/12まで計算することができます。

均等なんてただの飾りです 偉い人にはそれが分からんのです

平均律は比率が規則的な反面、ずらしたことにより正確な3倍音ではなくなっていて、厳密には響きが良くないそうです。そこでオーケストラなどでは「純正律」という、また違うものを使うこともあるそうです。
・3倍音をあつめて12個の音を作った(ピタゴラス音律)
→12個ありきで均等分割にずらしたら、便利だけど響きが悪くなった(平均律)
→ただずらすのではなく、近似する5倍音に置き換えることで”倍音と均等”を両立させた。(ただし転調が難しいという難点があるそうです)(純正律)
そんなところでしょうか。しかし「厳密には平均律の響きは良くない」と言われても分かりません。どのくらい響きが悪いのか。これもまた考えてみます。エクセルで。

俺はラジアン ガキ大将

波は円運動の延長なので、波を数式で表すには『ラジアン』と『sin』を使います。(ここでは詳細は割愛させていただきます。)

まず連続データで角度の数値を作ります。さしあたり0°から20000°くらい。

RADIANS関数を使って角度を度数法(°)から弧度法(ラジアン)に変換。

SIN関数を使って基本周波数のsin波の値を作る

これを散布図としてプロットするとグラフ化できます。


いきなり20000°までやらず360°までにしてみたら、分かりやすいSIN波です。

ぼくドレえもん

この要領で純正率のドとレを和音にしてみます。純正律の周波数比はWEBで調べました。レは1.125のようです。

値を加算したら和音の値になります。

グラフにすると、こう。周期(繰り返し)を赤い線で囲んでみました。

この要領で平均律のグラフも書いてよ~く見てみると、平均律は繰り返しの周期が違うことが分かります。純正律は平均律よりも短時間のうちに音が安定しており、それがよく響くといえるのかもしれません。

「吹奏楽部で少し高めの音を吹くのはあり?」なんだか分かる気がしてきました。多くの楽器や多くの人と和音を作るにあたっては、楽譜は平均律でありながらも、音色を少し変えることでよく響かせる技と言えそうです。なるほど合点。

知りたいことのおよそ半分はネットや本で調べればわかることだ でも…

ところで「ドレ」って、不協和音という組み合わせなんだそうです。不協和音って何なんでしょう?調べてみると、黒板をひっかくような忌み嫌う音…という事ではないようです。そればかりか、効果的な演出にうまく使われることもあるとか。さらにファとラも加えたDm7(レファラド)にすると、オシャレな洗練された響きになるという情報まであります。しかし感覚的な説明が多く、自分が納得いく説明は見つかりませんでした。考えてみることにしました。これまたエクセルで。

試しに不協和音「ドレ」と協和音「ドミ」のグラフを比べてみます。純正律ミの周波数比は1.25です。

「ドレ」の特徴は大きな空白があることです。

グラフの縦軸は音量なので、常に音量が大小して不安定に思えます。微小時間での出来事とはいえ。音量が不安定=不安定さ怖さを心理的に感じる…のかもしれません。あくまで仮説ですが。

最初は何だって仮説だろ?

その仮説を元に、今度はDm7(レファラド)をグラフにしてみます。不協和音であるドレを含んでいるにも関わらず美しい和音だそうです。ファ、ラの周波数比はそれぞれ1.50、1.667です。
黄色塗り部分が「ドミ」と同じくらいコンスタントに音を発してそうです。なるほどこれなら「ドレ」と違って不安定感は感じなさそう。あくまでも仮説ですが(笑)。

どこにものっていない「もう半分」を知るには…自分で考えだすか経験するしかない

以上を踏まえ、自分なりのまとめはこうです。
・ピアノの黒鍵に抜けがある事、吹奏楽部の”あるある話”は納得できた
・音階は無限にある音へのルール付けのこと。西洋のドレミが唯一無二な訳ではない
・ドレミも完璧ではなく、響きの良い音になるよう演奏する側で補いながら使っている
・不協和音はイメージするほど悪いものではない。表現に使えるし、なにより別の音が加われば協和音にもなり得る

…という話、本当にちょっと前には全く知らなかった事なんです。分からない分野の話を分かる領域に引き寄せて理解したものとして見てもらえたら幸いです。
つまり、間違いがあっても笑って許してください、と(笑)。

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