普段の業務ではエクセル(Excel)を使っているという方でも、Googleスプレッドシート(以下、「スプレッドシート」)の存在は知っているのではないでしょうか。
スプレッドシートは、Googleが開発した無料のWeb表計算アプリケーションです。
この記事では、「スプレッドシートはエクセルの代わりになるのか?」をテーマに、両者を比較検討していきます。
「表計算ソフト」という点では、両者に違いはありません。数値、文字、関数などを入力して、計算結果を表示させるといった機能は共通しています。
また、スプレッドシートはエクセルユーザーの乗り換えを想定して開発されているため、使用感や操作方法はエクセルのそれに極めて近いものとなっています。
そのため、表計算ソフトの基本的な機能だけを使う上では、スプレッドシートとエクセルの両者に違いはないといってよいでしょう。
一番大きな違いは、スプレッドシートがWebアプリケーションであるのに対して、エクセルはWindowsアプリケーションであることです。
おおまかには、オンラインorオフラインという前提の違いと言い換えることもできます。
厳密にいうと、スプレッドシートにはオフライン作業ができる設定が存在し、エクセルにはExcel Online(エクセルオンライン)というクラウド版がありますが、本記事では多くのユーザーが一般的な設定で利用していることを鑑みて区別しています。
続いて、スプレッドシートとエクセル、それぞれの優位性に着目してみましょう。
Googleスプレッドシートの初心者向けチュートリアルです。日本語字幕をオンにして観てみましょう!
スプレッドシートは無料で使うことができます。
エクセルの永続版ライセンスが約16,000円、Microsoft 365が約1,200円/月ですので、これは大きなアドバンテージです。
実際、コスト削減のために、全社的に乗り換える事例もあるようです。
エクセルからスプレッドシートへ移行する方法も公式サイトで解説がありますので、スムーズに移行できる準備が整っています。
スプレッドシートはアプリをインストールすれば、iOSやAndroidのスマートフォン・タブレット端末からもアクセスできです。
緊急で確認が必要な場合や、パソコンが手元にない場合でも他デバイスからアクセスして閲覧、編集を行うことができるのはエクセルにないメリットといえます。
また使用する環境によってはオフラインでの作業も可能です。
Wi-Fiのない場所や機内での作業など、通信環境が悪い状況でも普段と同じように作業することができるので、好きな時に好きなようにアクセスできます。
ただし編集した内容が共同編集者へ共有されるためには、オンライン環境での保存が必要になりますので注意が必要です。
スプレッドシートは、共同編集が可能です。
エクセルでは、原則、同じファイルを複数人が同時に開いて編集することはできません。
厳密に言えば、「ブックの共有機能」によって共同編集することはできますが、リアルタイムで変更が反映されない、ファイルが破損しやすいなど不安定なうえ、使い勝手がよくありません。また、ファイルのパスを知っている必要があるため、社外とのデータ共有には不向きです。
一方で、スプレッドシートは、URLを共有するだけで容易に複数名での共同編集が可能です。変更点がリアルタイムに確認できますので、重複して入力するなどのミスも防ぐことができます。また、編集・閲覧等の権限の設定も柔軟にできるため、社外との共有にも適しています。
もともと複数名が同時に編集することを前提として開発されており、Googleのサーバー上に保存されているため、データの保全性も折り紙つきです。
スプレッドシートには、自動保存機能があります。ユーザー側で保存操作をしなくとも、作業内容が随時保存されていきます。
そのため、エクセルでしばしば起こる「突然のクラッシュにより、保存前の作業が消失」といった悲劇が回避できます。
編集のたびに「Ctrl+S」を押さなくても、自動で保存されますので安心して作業に集中できます。
スプレッドシートには、編集履歴の保存機能があります。ユーザは、編集内容の一覧と詳細を確認することが可能です。だれが、いつ、どのような編集をしたのか、経緯と内容を確認できるため、複数名での共同作業にとても便利です。
さらに各履歴のポイントの状態に復元することができますので、誤ってデータを消去してしまった際にも、任意のポイントまで容易に遡ることができます。
スプレッドシートは、Googleの他サービスとの連携機能が豊富です。
たとえば、スプレッドシートをメール添付したい場合、「PDF化したデータをGmailで送信する」という一連の流れをスプレッドシートの画面上でワンストップで行うことができます。
また、スプレッドシートで作ったグラフをプレゼンテーション(Microsoft Officeのパワーポイントに相当)のファイルに挿入して、スプレッドシート上の数字と簡単に連動させることもできます。
次に、エクセルが優れている点について説明します。
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エクセルは、スプレッドシートに比べて動作が軽快です。
スプレッドシートが、オンライン環境での利用を前提として設計されているのに対して、エクセルはオフライン環境での利用を前提として作られています。
というのも、スプレッドシートはGoogleのサーバー上で動いているため通信が必要ですが、エクセルはインストールしたPC上で動いているため通信は必要ありません。
そのため、スプレッドシートは通信環境によってパフォーマンスが左右されますが、エクセルは通信環境にかかわらず、安定したパフォーマンスを発揮できます。
ごく簡単な作業であれば、エクセルでも、スプレッドシートでも大差ありませんが、高速に大量のインプットをする場合や、大規模なデータを分析するような場合には、エクセルのほうが処理速度が早い傾向があります。
Google も、500万個を超えるセルを含む処理はスプレッドシートではなく、エクセルを使うことを推奨しています。
エクセルは、グラフ機能が充実しています。
スプレッドシートでも一般的な折れ線、縦棒、円など、よく使われる種類のグラフは作成できますが、エクセルの種類には及びません。
そのため、3Dグラフなどの多要素で複雑なグラフを作る機会が多いユーザーは、エクセルを選ぶべきでしょう。
エクセルはショートカットキーが充実しています。
スプレッドシートも、アドオンによってエクセルの代表的なショートカットキーが利用可能ですが、エクセルで利用可能なすべてのショートカット・キーが使えるわけではありません。
例えば、エクセルでは「Ctrl+1」でセルの書式設定ができますが、スプレッドシートではそれができません。
またスプレッドシートには独自のショートカットキーもいくつか存在します。
Teamsは、ビデオ会議やグループチャットなどの機能があるMicrosoftのコラボレーションプラットフォームです。
Teams上でエクセルファイルを共有すると、Teamsのメンバー間でエクセルを共同編集することができます。
Teamsを使っている方は、ぜひお試しください。
今回の記事を通して、「スプレッドシートはエクセルの代わりになるのか?」という問いに対する私の答えは、「条件付きでYES」となるでしょう。
すでに述べたように、共同編集、自動保存、履歴管理はスプレッドシートが優れており、処理性能、操作性、グラフ機能はエクセルが優れてるなど、一長一短があります。
しかし、基本的な機能は共通しており、実はこれが8割がたのユーザーのニーズをカバーしていると考えられます。そこで、決定的なポイントは、「オンラインか?オフラインか?」という点です。
常時オンライン環境で作業できる、という条件付きであれば、多くのユーザーにとって「スプレッドシートはエクセルの代わりになる」といってよいでしょう。
一方で、オフライン環境で作業するユーザーや、特殊なニーズのあるユーザーにとっては、「スプレッドシートはエクセルの代わりに」なりえません。
私個人は、もともとエクセルのヘビーユーザーであったのですが、最近スプレッドシートの便利さに気が付き、用途によって使い分けをしています。
ご自身の使用環境や目的に合わせて、スプレッドシートとエクセルを上手く活用してみてください。